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フンムス日本では「フムス」ともHummus レシピ

حمص بطحينةフンムス・ビ・タヒーナ

地域
中東・ペルシャ(レヴァント地方(地中海東岸))
分量
6人分
公開
縁に絵付けのある皿に広げたフンムス。くぼみにオリーブオイルが注がれ、ひよこ豆がのって、パプリカとイタリアンパセリが散っている。奥にホブズ

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フンムスは、ゆでたひよこ豆をすりつぶし、タヒーナ(白ごまのペースト)とレモン汁、にんにくで和えた、レヴァント地方の前菜です。レバノンやシリア、パレスチナ、ヨルダン、イスラエルなど地中海東岸の国々では、平皿に薄く広げてオリーブオイルを注ぎ、平たいパンですくって食べます。

味の決め手は、なめらかさです。乾燥ひよこ豆を少しの重曹で、指で崩れるほど柔らかく煮ます。タヒーナは先にレモンと氷水でのばして白いクリーム状にしてから、豆のペーストと合わせます。

フンムスとは

アラビア語で略さずに言うと「フンムス・ビ・タヒーナ」(حمص بطحينة)です。フンムスはひよこ豆、ビは「〜と」、タヒーナはごまのペーストで、「タヒーナで和えたひよこ豆」という意味になります。英語などでは略して hummus と呼ばれ、日本では「フムス」の名前でも知られています。英語版ウィキペディアは、フンムスという言葉はアラム語・シリア語のひよこ豆を指す言葉から来たとする説を紹介しています。

中世の料理書に残る、ひよこ豆のペースト

英語版ウィキペディアは、フンムスがいつどこで生まれたかを特定する証拠は足りない、としています。そのうえで、似た料理の古い記録として、次のものを挙げています。

  • 13世紀のシリアの料理書で、イブン・アル=アディームの作とされる『ウスラ・イラー・アル=ハビーブ』に、ひよこ豆にレモン、ごま、オリーブオイルを合わせる料理がある。にんにくは入らない
  • 14世紀のカイロの料理書に、酢とレモンの塩漬けで味をつけた冷たいひよこ豆のペーストがある。タヒーナもにんにくも入らない
  • 同じころの料理書に「ヒンマス・カッサ」という料理があり、タヒーナと酢、香辛料、ハーブ、ナッツを使う

出版社エクイノックス(Equinox Publishing)のサイトの記事も、ヒンマス・カッサを、記録に残るもっとも古いフンムスのレシピのひとつとして紹介しています。英語版ウィキペディアが紹介する食物史家ナワール・ナスラッラーの説では、14世紀のあとは1885年のレバノンの料理書までフンムスのレシピの記録がなく、そのころにはにんにくが定番になっていたとされています。

「どこの料理か」をめぐる主張

フンムスがどこの料理かについては、国や立場によって主張が分かれています。

レバノンでは、2008年にレバノン産業家協会が、フンムスをレバノンの産品として欧州委員会に保護を申請するよう、レバノンの経済貿易省に求めました(英語版ウィキペディアによる)。

同じページによれば、レバノンとイスラエルの料理人は、世界一大きなフンムスの記録を競い合ってきました。記録は2008年にイスラエル、2009年にレバノン、2010年1月にイスラエルのアブー・ゴーシュ、同じ年の5月にレバノンと、交互に塗り替えられています。2010年5月の記録について、AP通信は、約300人のレバノンの料理人がベイルートの東のファナールで10,452kgのフンムスを作り、ギネス世界記録に認められたと伝えています。その前の記録は、同じ年の1月にエルサレム近くのアラブ系の町で作られた約4トンでした。AP通信は、レバノン側が、イスラエルはフンムスなどのアラブの伝統料理を自国のものとして世界に売り出していると非難している、とも伝えています。カタールのアル・ジャジーラのサイトに載ったベイルート発の記事は、この記録への挑戦を、フンムスは自分たちの料理だと主張するイスラエルの人々との競い合いとして紹介し、フンムスの起源が確かめられたことはないとしています。

イスラエルでは、フンムスは非公式の国民食とも呼ばれています(英語版ウィキペディアによる)。同じページは、フンムスがアラビア語圏に暮らしてきたミズラヒム(中東・北アフリカ系のユダヤ人)の料理に昔からあったことも紹介しています。一方で、フンムスをイスラエルの国民食とすることを、レバノンやパレスチナ、アラブの文化を自分のものにする行為だと批判する声があることも、同じページは紹介しています。

アラビア語のニュースサイト「アラビー21」は、イスラエルの新聞ハアレツの記事をもとに、イスラエル・オープン大学の研究者ダフナ・ヒルシュの本を紹介しています。それによれば、ヒルシュは、1948年まではヨーロッパから来たユダヤ人入植者の多くはフンムスを食べておらず、フンムスはアラブの食べ物だったと論じています。フンムスをイスラエルの国民食とうたったのは、工場で作ったフンムスが売り出された1958年の、イスラエルの食品会社テルマの新聞広告が最初だとされています。なお、アラビー21は見出しで、この本をイスラエルによるフンムスの盗用を認めたものとして扱っていますが、記事によれば、ヒルシュ自身は、ほかの文化の料理を取り込むことは食の歴史につきものだとして、盗用かどうかという問いには関心がないと話しています。

サウジアラビアの新聞ウカーズのカイロ発の記事は、フンムスの起源をめぐってレバノン、エジプト、シリア、トルコが名乗りを上げており、起源は今も議論が続いている、と紹介しています。この記事では、どの主張が正しいかは決めず、レヴァント地方の家庭の作り方にならって作ります。

この記事の配合

読み比べたのは3件です。レバノン国際大学で学ぶ学生がアラビア語で書いたブログ、アラビア語のレシピサイト、アル・ジャジーラのベイルート発の記事で紹介された家庭の作り方です。どれも、ひと晩浸した豆を柔らかく煮て、タヒーナとレモン汁、にんにくで和える点は同じです。重曹を使うのは、読んだ3件のうち2件です。

ブログの作り方では、タヒーナを先に煮汁とにんにく、レモン汁、塩で溶いて白いソースにしてから、豆のペーストと合わせます。この記事ではこの順序にならい、タヒーナをのばす水を、煮汁の代わりに氷水にしています。理由は「作り方の要点」の節で説明します。

フンムスのレシピ:材料(6人分)

下ごしらえ 12時間10分(浸水を含む) 加熱 1時間45分

スパイスの配合 6人分で計1.5g
  • クミン1g
  • パプリカ0.5g

ひよこ豆を浸す

  • 乾燥ひよこ豆(大粒の白いもの)(Amazon|楽天)250g
  • 水1L

ひよこ豆を煮る

  • 水1.5L
  • 重曹1g(小さじ1/4)

タヒーナのソース

  • にんにく2片(10g)
  • 塩7g(小さじ1と1/4)
  • レモン汁45ml(大さじ3)
  • タヒーナ(中東の白ごまペースト)(Amazon|楽天)120g(大さじ7と1/2)
  • 氷水80ml
  • クミン(パウダー)(Amazon|楽天)1g(小さじ1/2)

仕上げ

  • エクストラバージン・オリーブオイル13g(大さじ1)
  • パプリカ(パウダー)(Amazon|楽天)0.5g(小さじ1/4)
  • イタリアンパセリ(みじん切り)3g(大さじ1)

道具

  • フードプロセッサー(量が少ないとミキサーは刃が空回りしやすい)
  • すり鉢(にんにくをつぶす。おろし金でもよい)
  • 大きめの鍋(容量3L以上)

作り方

  1. ひよこ豆を浸す

    ひよこ豆を洗い、ボウルに入れて水1Lに浸す。豆は2倍以上にふくらむので、深めのボウルを使う。室温で12時間(一晩)おく。

  2. 重曹を入れて煮る

    浸した水を捨て、豆を軽く洗う。鍋に豆と水1.5L、重曹1gを入れて強火にかける。沸騰すると泡が一気に上がるので、ふきこぼれに注意して火を弱め、浮いてきた泡と皮をおたまですくう。ふたをずらしてのせ、弱めの中火で60〜90分煮る。煮汁が減って豆が水面から出ないよう、ごく弱い沸騰を保つ。

  3. 煮え具合を確かめる

    豆を1粒取り出し、指でつまむ。力を入れずに芯まで崩れれば煮上がり。芯が残るなら、10分ずつ煮て確かめる。ざるにあげて煮汁を捨て、飾り用に形のきれいな豆を20g取り分ける。

  4. にんにくとレモンを合わせる

    にんにくを薄切りにしてすり鉢に入れ、塩7gを加えてすりこ木でなめらかなペーストになるまでつぶす。レモン汁45mlを加えて混ぜる。

  5. タヒーナをのばす

    ボウルにタヒーナ120gを入れ、4のにんにくとレモンを加えて泡立て器で混ぜる。いったんもったりと固くなるので、氷水80mlのうち40mlを大さじ1杯ずつ加えて、そのつど混ぜる。白っぽく、なめらかなクリーム状になればよい。

  6. 豆をペーストにする

    豆が温かいうちに、取り分けた分を除いてフードプロセッサーに入れ、クミン1gを加える。2〜3分回し、途中で側面についた豆をゴムべらで落とす。

  7. ソースと合わせて仕上げる

    5のタヒーナのソースを加えて3〜4分回す。残りの氷水40mlを大さじ1杯ずつ加えながら、ゆるめのマヨネーズくらいのなめらかさになるまでさらに1〜2分回す。味を見て、レモンの酸味と塩加減を確かめる。

  8. 盛りつける

    平皿に広げ、スプーンの背で皿を回しながら縁を高く、中央を低くくぼませる。くぼみにオリーブオイル13gを注ぎ、取り分けた豆をのせ、パプリカ0.5gとイタリアンパセリ3gを散らす。

平たいパン(ホブズ)でぬぐうようにすくって、ほかの前菜と一緒に食べます。

料理科学:重曹を入れて煮る理由

重曹で豆が早く柔らかくなる

読んだアラビア語のレシピのうち2件は、豆を浸す水か煮る水に重曹を少し入れています。アラビア語のレシピサイトは、重曹は豆の皮をくずれやすくするために入れる、としています。中東でよく食べられる豆の煮え方を調べた1988年の論文(シンほか)でも、重曹の水に浸したひよこ豆は、煮る時間が短くなりました。はがれた皮は、煮ているうちに浮いてきます。手順2で泡と一緒に皮をすくうのはそのためで、皮が少ないほどペーストがなめらかになります。

フンムスの豆は、サラダに使う豆よりずっと柔らかく煮ます。指で崩れないくらいの硬さが残っていると、フードプロセッサーを長く回してもざらつきが残ります。手順3で、力を入れずに芯まで崩れるかを確かめるのはそのためです。

重曹は少しだけ、煮る水に入れる

同じ1988年の論文では、重曹の水に浸したひよこ豆で作ったフンムスは、評価が下がりました。

そこでこの記事では、浸す水には重曹を入れず、煮る水1.5Lに1g(小さじ1/4)だけ入れます。煮上がったら煮汁は捨てます。レモン汁は、豆が煮上がってから合わせます。

作り方の要点:タヒーナを先に氷水でのばす理由

タヒーナは、油の多いごまのペースト

タヒーナは、白ごまをすりつぶしたペーストで、重さのおよそ半分が油です(英語版ウィキペディアによれば、脂質約53%、たんぱく質約17%)。

タヒーナにレモン汁と水を少し加えると、いったんもったりと固くなります。そこで止めずに水を少しずつ足していくと、ゆるんで白っぽく、なめらかなクリームになります。手順5で、固くなっても水を少しずつ足し続けるのはそのためです。ブログの作り方でも、タヒーナを煮汁とにんにく、レモン汁、塩で溶いて、白いソースにしています。

冷たい水を使う理由

ブログの作り方では、タヒーナを煮汁で溶きます。この記事では、重曹を入れた煮汁を使わないので、煮汁の代わりに水でのばします。フードプロセッサーを何分も回すと、刃のこすれる熱で中身が温まります。氷水にしたのは、温かい豆と合わせて長く回しても、全体が温まりすぎないようにするための、この記事の判断です。

豆は温かいうちにペーストにします。アル・ジャジーラのベイルート発の記事で紹介された家庭の作り方でも、豆は熱いうちに挽いています。

家庭による違い

読み比べたレシピの間でも、細かな作り方は違います。

  • クミン:豆と一緒に混ぜ込む作り方と、仕上げに振る作り方があります。この記事では少量を混ぜ込みました。
  • 混ぜる順序:すべての材料を一度にミキサーに入れる作り方もあります。この記事では、ブログの作り方にならってタヒーナを先にのばしています。
  • 仕上げ:パプリカの代わりにスマック(赤い酸味のあるスパイス)を振ったり、イタリアンパセリの代わりにミントの葉をのせたりします。アル・ジャジーラの記事で紹介された作り方では、辛い赤唐辛子を少し散らしています。

手に入りにくい材料の代用

  • タヒーナ:日本の白練りごまで代用できます。同じ量を使います。タヒーナより焙煎の香りが強いものが多く、手順5で固すぎるときは氷水を大さじ1ずつ足します。手順7の味見で、レモン汁を大さじ1まで足して香ばしさを和らげます。
  • 乾燥ひよこ豆:水煮缶2缶(固形量 合計約480g)で代用できます。汁を捨てて洗い、鍋に水500mlと一緒に入れて10分煮てから、手順3から作ります。食塩不使用の缶なら塩は6g(小さじ1)、食塩入りの缶なら塩4g(小さじ2/3)から始めて味を見ます。
  • 圧力鍋で煮るとき:手順2で、豆と水1L、重曹1gを圧力鍋に入れます。ふたをせずに沸騰させ、泡と皮をすくってから、ふたをして高圧で15分加圧し、火を止めて圧が自然に下がるまでおきます。煮え具合は手順3と同じように確かめます。豆は泡が出やすく、蒸気の出口をふさぐことがあるので、豆と水(合わせて約1.5L)が鍋の容量の3分の1を超えないよう、容量4.5L以上の圧力鍋を使います。取扱説明書に豆の量の決まりがあれば、それに従ってください。
  • イタリアンパセリ:パクチー(コリアンダーの葉)や、ミントの葉で代用できます。

保存

  • 冷蔵:表面にオリーブオイルを薄く流し、保存容器に入れて3日
  • 冷凍:手順7まで終えた状態で1か月。冷蔵庫で解凍し、よく混ぜてから盛りつけます
  • ゆでたひよこ豆だけを保存するときは、冷ましてから保存袋に入れて冷凍で1か月

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出典

本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。