マチブース・サマクMachboos Samak レシピ
مجبوس سمكマチブース・サマク

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マチブース・サマクは、スパイスで下味をつけた魚を、魚のだしで炊いたバースマティー米の上にのせて出す、湾岸の国々の米料理です。米にはトマトとシナモン、クローブ、ドライライム(ルーミー)の香りが移り、仕上げに、シナモンとクミンを振った揚げ玉ねぎを散らします。
魚は最初に表面だけ焼いて取り出し、米が炊き上がる前に米の上へ戻します。この記事で読んだクウェート風のアラビア語のレシピ3件は、どれも魚を米とは別に焼いたり揚げたりしてから、米と合わせていました。
マチブース・サマクとは
アラビア語では「マチブース・サマク」(مجبوس سمك)と書きます。サマクは魚のことです。英語版ウィキペディアのカブサの項目は、湾岸アラビア語での呼び名として「マクブース」と「マチブース」の二つの形を挙げています。英語版ウィキペディアのクウェート料理の項目は、この綴りを machboos とローマ字で書いています。この記事で読んだアラビア語のレシピ3件と、マチブースを紹介する記事2件は、マチブースの部分をどれも上と同じ綴りで書いていました。サマクは、アラビア語の標準的な読み方です。
カブサとの関係
サウジアラビアの百科事典サイト「サウディペディア」(著作権はサウジアラビアのメディア省)は、サウジアラビアの米料理カブサの名前は、「押すこと」を意味する「カブス」という言葉から来たとしています。そして、カブサは湾岸協力会議のほかの国々では「マクブース」として知られている、と書いています。英語版ウィキペディアのカブサの項目も、名前は「押す、しぼる」を意味する語根から来たとしていますが、この部分には出典が示されていません。
どこの料理か
マチブースがどこで生まれたかについては、書き手によって説明が違います。
- アラビア語の医療・健康サイト「ウェブティブ」は、魚のマチブースをクウェートが発祥の料理で、湾岸で有名だとしています
- アラビア語のニュースサイト「アラビー・ポスト」の記事は、マチブースの起源はアラブのベドウィン(遊牧民)の料理にあるとし、別の段落では湾岸の料理に起源がある伝統料理として、クウェート、バーレーン、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦で有名だとしています
- アラビア語のニュースサイト「ヌーン・ポスト」が英国のニュースサイト「ミドル・イースト・アイ」の記事を訳して載せた記事は、マチブースをカタールの国民食とし、バーレーン、クウェート、アラブ首長国連邦でも知られているとしています
- 英語版ウィキペディアのカブサの項目は、カブサは湾岸協力会議のすべての国で国民食とされている、としています
英語版ウィキペディアのクウェート料理の項目は、マチブースをクウェート料理の代表的な料理の一つとして、羊肉や鶏肉、魚で作るとしています。この記事では、どこが発祥かは決めず、クウェート風と明記されたレシピにならって作ります。
ムタッバク・サマクとの関係
英語版ウィキペディアのクウェート料理の項目は、マチブースとは別に、「ムタッバク・サマク」という魚と米の料理を挙げています。ムタッバク・サマクをクウェートの国民食とし、よくスパイスをきかせた魚のだしで炊いた米に、魚をのせた料理と説明しています(国民食とする文には出典が示されていません)。
同じウィキペディアのムタッバク・サマクの項目は、イラクとクウェートの国民食とし、スパイスをつけて揚げた魚(ふつうはマナガツオの仲間)と炒めた玉ねぎを、魚のだしで炊いた米にのせる料理としています。ムタッバクは「重ねた」という意味で、昔は魚と米とパンを鍋に重ねて炊き、ひっくり返して出したことから来た名前だ、と紹介しています。いまはもっと簡単に作ることが多く、揚げた魚を米にのせたものもムタッバク・サマクと呼ばれる、とも書いています。同じ項目は、口語での呼び方として「イムタッバグ・スィマチ」という形も挙げています。
ウィキペディアのこの説明に従えば、この記事の料理は、いまの簡単な作り方のムタッバク・サマクとも近いものです。この記事では、読んだクウェート風のレシピ3件の料理名にならって、マチブース・サマクと呼びます。
この記事の配合
読み比べたのは、クウェート風と明記されたアラビア語のレシピ3件です。アラビア語の女性誌「サイイダティー」の料理サイトのレシピ、アラビア語のサイト「ラヤーリーナ」の料理のページのレシピ、ウェブティブのレシピで、どれも4人分で魚は500gです。米は、3件のうち2件がバースマティー米、1件は長粒米としています。
配合の土台は、ラヤーリーナのレシピです。魚にターメリック、クミン、コリアンダー、黒こしょう、レモン汁で下味をつけ、米はシナモン、クローブ、ドライライム、トマトペースト、唐辛子と一緒に、魚のだしで炊きます。唐辛子の色は書かれていないので、この記事では青唐辛子を使います。ラヤーリーナの米は2カップ(約380g)なので、米300gのこの記事では、トマトペーストとにんにくを少し減らしました。魚に粉をまぶすのはサイイダティーのレシピ、揚げ玉ねぎにシナモンとクミンを合わせるのと、焼いた魚を米の鍋に入れて仕上げるのはウェブティブのレシピにならったものです。
魚の焼き方は、この記事で変えています。ラヤーリーナは魚を熱い油で片面5分ずつ焼き、サイイダティーは粉をまぶしてたっぷりの油で揚げ、ウェブティブは少ない油で3〜5分焼きます。この記事では、粉を薄くはたいて少ない油で表面だけを焼き、残りは米の上で蒸らして火を通します。
サイイダティーとラヤーリーナは「魚のだし」を使うと書いていますが、作り方は書いていません。切り身からはだしがとれないので、この記事では白身魚のアラを水で20分煮てだしをとります。
マチブース・サマクのレシピ:材料(4人分)
下ごしらえ 45分(米を浸す時間とだしをとる時間を含む) 加熱 1時間(蒸らす時間を含む)
- ドライライム8g
- コリアンダー6g
- クミン1.5g
- シナモン1.5g
- ターメリック0.7g
- 黒こしょう0.6g
- クローブ0.2g
魚のだし
- 白身魚のアラ(頭と中骨。タイ・スズキなど)400g
- 水1L
- 水(だしが700mlに足りないときに足す)100mlまで
魚と下味
魚を焼く
- 薄力粉15g(大さじ2弱)
- 植物油(香りのないもの。揚げ玉ねぎもこの油で炒める)45ml(大さじ3)
油とホールスパイス
香味野菜とトマト
- 玉ねぎ(みじん切り)150g(中3/4個)
- にんにく(みじん切り)15g(3片)
- 青唐辛子(縦に切り込みを入れる)1本(5g)
- トマトペースト(食塩不使用)25g(大さじ1と1/2)
炊く
- 魚のだし(上でとったもの)700ml
- 塩8g(小さじ1と1/3)
仕上げ
- パクチー(コリアンダーの葉)(刻む)5g(大さじ2)
作り方
米を洗って浸す
ボウルにバースマティー米300gを入れ、水500mlを注いで指先で軽く混ぜ、水を捨てる。これを3回くり返す(計1.5L)。水1Lに30分浸す。米は折れやすいので、こすり合わせない。
魚のだしをとる
白身魚のアラ400gを流水で洗い、血のかたまりを指で落とす。鍋にアラと水1Lを入れて強火にかけ、沸いたらアクをすくう。ふたをずらしてのせ、ごく静かに沸く火加減で20分煮る。キッチンペーパーを敷いたざるでこし、700mlを量る。足りないときは、水100mlまでを足して700mlにする。アラは使わない。
魚に下味をつける
だしを煮ているあいだに、魚の切り身500gの水気をキッチンペーパーでふく。バットに並べ、塩4g、ターメリック0.7g、クミン1g、コリアンダー6g、黒こしょう0.6g、レモン汁15mlを混ぜたものを両面に塗る。冷蔵庫で15分おく。生の魚をさわった手と包丁、まな板は、すぐに洗剤で洗う。
野菜とドライライムを用意する
揚げ玉ねぎ用の玉ねぎ100gは縦に薄切り、炊く用の玉ねぎ150gはみじん切りにする。にんにく15gはみじん切りにし、青唐辛子1本は縦に切り込みを入れる。ドライライム2個は、竹串か包丁の先で2〜3か所ずつ穴をあける。
魚の表面を焼く
換気扇を回す。魚の両面に薄力粉15gを薄くまぶし、余分な粉をはたく。フライパンに植物油45mlを入れて強めの中火で熱し、魚を皮を下にして並べる。魚は水分が多く油がはねるので、顔を近づけない。片面2分ずつ、表面がこんがり色づくまで焼いてバットに取り出す。中はまだ半透明でよい(米の上で蒸らして仕上げる)。
揚げ玉ねぎを作る
同じフライパンに残った油を中火にかけ、薄切りの玉ねぎ100gを入れる。ときどき混ぜながら8〜10分、濃いきつね色になるまで炒める。火を止めてシナモン(パウダー)0.5gとクミン(パウダー)0.5gを振り、10秒混ぜて、キッチンペーパーを敷いた皿に取り出す。
ホールスパイスと玉ねぎを炒める
厚手の鍋に植物油30mlを入れて中火で温め、シナモン(ホール)1本とクローブ2粒を入れて、香りが立つまで30秒混ぜる。みじん切りの玉ねぎ150gを加え、6〜8分、薄く色づくまで炒める。
にんにくとトマトペーストを炒める
にんにく15gと青唐辛子1本を加えて1分炒める。ドライライム2個とトマトペースト25gを加え、焦がさないように混ぜながら1分炒める。
米を加える
浸しておいた米をざるにあげ、5分おいて水気を切る。鍋に加え、へらで底から大きく返すように1分混ぜて、米に油とトマトをからめる。米が折れるので、かき回しすぎない。
だしと塩を加えて煮立てる
魚のだし700mlと塩8gを加えて強火にする。蒸気が勢いよく上がるので、顔を近づけない。沸騰したら一度だけ底から大きく混ぜ、中火にして、ふたをせずに4〜6分煮る。水面が米の表面まで下がり、表面にぷつぷつと小さな穴があいてきたら次へ進む。
ふたをして弱火で炊く
ふたをして、ごく弱火で8分加熱する。途中でふたを開けない。
魚を米の上に戻す
ふたを開け、焼いた魚をバットにたまった汁ごと、皮を上にして米の上に並べる。すぐにふたをして、ごく弱火で6分加熱する。
蒸らして確かめる
火を止め、ふたをしたまま10分おく。いちばん厚い1切れの横から、中心まで温度計を刺し、63℃以上になっていれば火が通っている。温度計がないときは、いちばん厚い1切れを半分に切り、中心まで白く不透明で、身が層に沿ってほぐれればよい。中心が半透明なら、ふたをしてごく弱火で3分加熱し、火を止めてもう一度確かめる。米を1粒つぶして芯が残っていたら、ふたをしてさらに5分おく。
盛りつける
魚をバットに取り出す。へらを鍋の縁から底まで差し入れ、米を下から持ち上げるようにしてほぐし、大皿に広げる。魚を米の上に戻し、揚げ玉ねぎとパクチー5gを散らす。ホールスパイスとドライライムは、食べるときによける。
温かいうちに食べます。サイイダティーのレシピは、トマトのソースを別の器に添えています。ラヤーリーナは、辛いダックース(トマトのソース)と一緒に出すとしていて、マチブースを、客を招いた食事や特別な日によく作る料理としています。
料理科学:魚を先に焼き、米の上で仕上げる理由
魚は、米よりずっと早く火が通る
この記事の米は、だしを加えてから蒸らし終わるまで、およそ30分かかります。魚の身は、それよりずっと短い時間で火が通り、煮続けると身が縮んでぱさつきやすくなります。
魚を最初から米と一緒に炊くと、米が炊けるまでの30分、魚を煮続けることになります。手順5で表面だけを焼いて取り出し、手順12で炊き上がる前に米の上へ戻すのはそのためです。最後は米の上にのせるだけなので、身がくずれにくく、米を混ぜて折ることもありません。ふたをした鍋の湯気と、火を止めてからの10分の余熱で、魚の中心まで火を通します。
先に焼くのは、焼いた香りをつけるため
焼き色と香ばしい香りは、メイラード反応という反応で生まれます。だしを入れた鍋の中は、水がある限り100℃前後までしか上がらず、焼いたときのような焼き色はつきません。米と一緒に炊くだけでは焼いた香りがつかないので、炊く前に、フライパンで表面を焼いておきます。
アメリカ政府の食品安全の情報サイト「FoodSafety.gov」は、魚は中心が63℃(145°F)になるまで加熱するか、身が半透明でなくなり、フォークで簡単にほぐれるまで加熱する、としています。この記事でも、中心が63℃以上になっていることを目安にしています。魚にはターメリックとスパイスを塗っているので、表面の色では火の通りを見分けられません。手順13で、いちばん厚い1切れの中心を確かめます。
作り方の要点:米の扱いと、だしの量
米は洗ってから30分浸し、炊くときに湯を捨てません。この記事では、米300gに魚のだし700mlを使います。
ラヤーリーナのレシピは、米2カップにだし2と1/2カップで、この記事より水分が少なめです。サイイダティーのレシピは、米1と1/2カップにだし4カップと多めです。カップは国や家庭で容量が違い、米の浸し方や鍋でも必要な水分が変わります。この記事では、ふたをせずに煮て、水面が下がってからふたをする炊き方に合わせて、米は重さで、だしは量って加えます。
だしに塩を入れないのは、塩をすべて手順10で加えて、量をはっきりさせるためです。湯を捨てずに炊くので、入れた塩はすべて米に残ります。
地域や家庭による違い
- 干しぶどうとサフランを入れる:サイイダティーのレシピは、ドライライムを使わず、トマトと玉ねぎ、しょうがを炒めた中に、米と干しぶどう、サフラン、刻んだパクチーを加えて炊きます。魚は粉をまぶして揚げ、トマトと玉ねぎ、にんにく、パクチーを魚のだしで煮てなめらかにしたソースを別に添えます。英語版ウィキペディアのクウェート料理の項目は、米料理に添えるトマトのソースとして「ダックース」を挙げています。
- ターメリックで黄色く炊く:ウェブティブのレシピは、トマトもドライライムも使わず、米を油で炒めてから、ターメリックと水で炊きます。魚の下味には、シナモンとカレー粉も使います。
- 魚と米を重ねて炊く:アラビア語の情報サイト「マウドゥー」のムタッバク・ズバイディー(ズバイディーはマナガツオの仲間の魚)のレシピは、炒めた玉ねぎに米の一部、揚げた魚、残りの米を重ね、魚のだしを注いで弱火で30〜40分炊きます。ドライライムの粉と干しぶどうを使い、仕上げにサフランを溶かしたローズウォーターを回しかけます。
魚の選び方
クウェート風のレシピでは、サイイダティーがズバイディー、ラヤーリーナがカンアドを使っています。クウェートの新聞アル・ジャリーダに載ったスライマーン・アル=マタルのコラムは、ズバイディーの学名を Pampus argenteus(マナガツオの仲間)とし、味のよい海の魚の一つで、クウェートや湾岸で求める人が多いと書いています。英語版ウィキペディアのクウェート料理の項目は、ハムール(ハタの仲間)を、焼くか揚げるか、ビリヤーニーの米と一緒に出すことが多い魚として挙げています。
カンアドは、日本ではヨコシマサワラと呼ばれる、サワラの仲間の魚です。日本では、同じ仲間のサワラの切り身が手に入りやすく、この記事の分量と時間はサワラで作るときのものです。
手に入りにくい材料の代用
- ドライライム(ルーミー):ライムを丸ごと干した、黒っぽい茶色の実です。なければ入れずに炊き、盛りつけたあとにレモン汁15ml(大さじ1)を米に回しかけます。酸味はつきますが、ドライライムの香りはつきません。
- カンアド・サワラ:マナガツオ、タイ、スズキの切り身(皮つき・厚さ2cm前後)でも作れます。厚さが3cmを超える切り身は、手順12で米にのせてからの加熱を8分にし、手順13で必ず中心を確かめます。
- 白身魚のアラ:手に入らないときは、手順2を省き、手順10で魚のだしの代わりに水700mlを加えます。ウェブティブのレシピも、米を水で炊いています。
- バースマティー米:日本の米は粘りが強く、炒めて炊くと粒がくっつきます。タイのジャスミンライスでも作れますが、バースマティー米ほど長く伸びず、やわらかく炊き上がります。浸水を15分にし、手順10のだしを600mlに減らします。
- 青唐辛子:生のものがなければ、冷凍の青唐辛子を使います。辛くしたくなければ、入れなくても作れます。ししとうでは辛みがつきません。
保存
- 冷蔵:粗熱が取れたらすぐ保存容器に入れて2日。米には加熱しても死なない細菌の芽胞が残ることがあり、室温に長く置くと増えるためです。1人分に水15mlを振り、ラップをして電子レンジで温めます。魚は温めすぎると身がぱさつくので、温まったところで止めます
- 冷凍:魚は身がぱさつきやすいので、冷凍するなら米だけを1人分ずつラップで包んで1か月。凍ったまま、同じように水を振って電子レンジで温めます
中東・ペルシャのほかのレシピ
もっと知りたい人へ
出典
- مطبخ سيدتي「مجبوس السمك الكويتي」(アラビア語)
- يمي ليالينا「طريقة عمل مجبوس سمك بالطريقة الكويتية」(アラビア語)
- ويب طب「طريقة عمل مجبوس سمك」(アラビア語)
- موضوع「طريقة مطبق الزبيدي」(アラビア語)
- عربي بوست「من الأكلات التاريخية التراثية لدول الخليج.. طريقة إعداد المجبوس من المطبخ السعودي للمطبخ الكويتي」(アラビア語)
- سعوديبيديا「الكبسة السعودية」(アラビア語)
- نون بوست「كأس العالم قطر 2022: سبعة أطعمة قطرية مميزة عليك تجربتها」(アラビア語)
- الجريدة「الزبيدي ملك الأسماك」(アラビア語)
- Wikipedia「Kabsa」(英語)
- Wikipedia「Kuwaiti cuisine」(英語)
- Wikipedia「Mutabbaq samak」(英語)
- FoodSafety.gov「Cook to a Safe Minimum Internal Temperature」(英語)
本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。