マチェル・ジョルMacher Jhol レシピ
মাছের ঝোলマチェル・ジョル

この記事はAmazonアソシエイト・楽天アフィリエイトのリンクを含みます。
マチェル・ジョルは、ベンガルの家庭の食卓によく上る魚の汁です。魚とじゃがいもをマスタードオイルで焼き、香りの種を油ではじかせて、クミンとしょうがの汁で煮ます。カレーと呼ぶには汁が薄く、色は明るい黄色です。
この記事では、玉ねぎもにんにくも使わない、軽い家庭の作り方を紹介します。本場では、ルイという鯉の仲間の淡水魚がよく使われます。日本では、同じコイ科の鯉の筒切りで作れます。
マチェル・ジョルとは
ベンガル語では「マチェル・ジョル」(মাছের ঝোল)と書きます。マチは魚、マチェルで「魚の」、ジョルは汁気の多い煮ものという意味です。ベンガル語版ウィキペディアは、ベンガル地方で生まれた伝統的な魚料理とし、バングラデシュと西ベンガル州のほか、インド東部のオディシャ州でも似た料理が作られるとしています。
家庭の食卓の汁
バングラデシュの新聞デイリー・スターのベンガル語版に、書き手のシャハナ・フダ・ランジャナが、ジョルについての随筆を書いています。ランジャナは、ジョルという言葉は「したたる」という意味の語根から来ていると説明しています。そして、魚のジョルは家庭で最もよく作られ、好まれる料理の一つで、大人数の家庭でも取り分けやすいと書いています。村の宴席では、ジョルとじゃがいもだけでご飯が一皿食べられる、とも書いています。
同じ随筆でランジャナは、ベンガル語で語り直された叙事詩『ラーマーヤナ』(クリッティバース版)で、シーターがジョルを給仕したと言われている、と紹介しています。聖者チャイタニヤの伝記『チャイタニヤ・チャリタームリタ』などの古い文献にもジョルが出てくると言われている、とも書いています。
料理ブログを書いているマウミタ・ポールは、マチェル・ジョルを、屋台から高級店まで作られる、ベンガルを代表する料理として紹介しています。作り方は家庭ごとに違っても、揚げた魚を汁で煮るという基本は同じだとしています。
薄い汁のジョル
ジョルの汁の濃さは、作り方によって違います。バングラデシュのニュースサイト bdnews24.com に料理人アイリン・スルタナが載せたジョルは、水をたっぷり加えて薄い汁にします。マウミタ・ポールのジョルは、汁が少しとろりとするまで煮ます。ベンガル語の「パトラ」は「薄い」という意味で、マウミタ・ポールのクミンで香りをつけたジョルは「パトラ・ジョル」(patla jhol)という名前です。コルカタで料理ブログを書いているデブジャニ・チャタジー・アラムは、ルイとじゃがいもとジンゲ(ヘチマの仲間)のジョルを、夏の暑い日に向く軽い魚料理として紹介しています。
この記事の配合
コルカタの料理チャンネル「Bong Eats」のルイのジョルは、玉ねぎもにんにくも使いません。魚をマスタードオイルで焼き、カロジラ(কালোজিরা。ニゲラという黒い種)をはじかせた油でじゃがいもなどの野菜を炒めて、たっぷりのクミンとしょうがで煮ます。デイリー・スターのベンガル語版にラフヌマ・シャルミが載せたルイのジョルも、玉ねぎを使わず、揚げた魚を、水で溶いたクミンとターメリックの汁で煮るものです。
西ベンガル州メディニプルのマドゥミタ・チャクラボルティが料理投稿サイトのCookpadに載せたベンガル語のジョルは、マスタードオイルでパンチ・フォロンをはじかせ、クミン、しょうが、乾燥唐辛子のペーストで煮ます。デブジャニのジョルも、マスタードオイルとパンチ・フォロンで作ります。
この記事では、Bong Eats の作り方を骨組みにして、香りの種をパンチ・フォロンにしました。クミンの量は、Bong Eats より控えめにしています。辛みは青唐辛子で、色づけにカシュミーリー・チリパウダーを1.2g加えます。仕上げに加熱しないマスタードオイルをたらすのは、アイリン・スルタナのレシピにならいました。
マチェル・ジョルのレシピ:材料(4人分)
下ごしらえ 25分(魚の下味を含む) 加熱 35分
- クミン6g
- ターメリック3g
- パンチ・フォロン1.5g
- カシュミーリー・チリ1.2g
ジョル(汁)
道具
- 厚手のフライパン(直径26cm前後で深さのあるもの。ベンガルの両手鍋コライ(ヒンディー語でカラーイー)でもよい)
- ふた
作り方
魚に下味をつける
ルイの水気をキッチンペーパーで拭き、塩4gとターメリック1.5gを全体にまぶして15分おく。
じゃがいもとスパイスを用意する
じゃがいもの皮をむき、縦に8つに切ってくし形にする。小さなボウルにクミン6g、ターメリック1.5g、カシュミーリー・チリパウダー1.2g、水30mlを入れ、混ぜてゆるいペーストにする。
魚を揚げ焼きにする
換気扇を回す。フライパンにマスタードオイル40gを入れて強めの中火にかけ、1〜2分、うっすら煙が出て油の色が淡くなるまで熱したら中火にする。ルイの表面ににじんだ水気をもう一度拭き、油がはねるので離れて、半量ずつ入れる。片面2分ずつ、両面が薄い金色になるまで焼いて取り出す。中まで火が通っていなくてよい(あとで煮て仕上げる)。
じゃがいもを炒める
同じ油にじゃがいもを入れ、中火で4〜5分、ときどき返しながら、表面がところどころ薄く色づくまで炒めて取り出す。
パンチ・フォロンをはじかせる
中火のまま、残った油にパンチ・フォロン1.5gと青唐辛子2本を入れる。マスタードシードがぱちぱちとはじけ、フェヌグリークが赤茶色になったら(10〜20秒)、焦がさないようにすぐ次に進む。
スパイスとしょうがを炒める
弱めの中火にし、溶いたスパイスを加える。はねるので気をつける。鍋底をこそげるように混ぜながら2分、水分が飛んで縁に油がにじんでくるまで炒める。しょうが10gを加えて1分炒める。
じゃがいもを煮る
じゃがいもを戻してスパイスをからめ、湯450mlと塩6gを加える。煮立ったらふたをして、弱めの中火で8〜10分、じゃがいもに竹串を刺すと、中心にかすかな抵抗が残るくらいまで煮る。
魚を煮る
ルイを1段に並べ入れ、残りの青唐辛子2本を加える。ふたをせず、表面がふつふつする弱めの中火で5〜6分煮る。身が崩れるので混ぜず、鍋をゆすったり、汁をスプーンで魚にかけたりする。骨のまわりの身が白く不透明になり、じゃがいもに竹串がすっと通れば煮えている。
仕上げる
火を止め、パクチー10gを刻んで散らし、マスタードオイル2gを回しかける。
白いご飯に汁をかけ、魚の身をほぐしながら食べます。
料理科学:魚を先に揚げ焼きする理由
揚げた魚を汁で煮るのが基本
この記事で読んだレシピのうち、プロトム・アロのもの以外は、どれも魚を先に油で揚げるか焼いてから、汁で煮ています。マウミタ・ポールも、作り方は家庭ごとに違っても、揚げた魚を汁で煮るという基本は同じだとしています。手順3で両面を焼いてから、手順8で汁に戻して短く煮るのは、この基本にならったものです。手順8で混ぜずに鍋をゆするのは、煮ている魚の身を崩さないためです。
焼いた香りを汁に移す
魚の表面がこんがり色づくのは、メイラード反応によるものです。汁の中では、水がある限り100℃前後までしか上がらず、焼き色はつきません。煮る前に油で焼いておくと、汁だけでは出せない焼いた香りが加わります。
手順3で焼く直前に水気を拭くのは、表面に水分が残っていると焼き色がつきにくく、熱い油に触れてはねる原因にもなるからです。
料理科学:パンチ・フォロンを油ではじかせる理由
パンチ・フォロンとは
パンチ・フォロンは、フェヌグリーク、フェンネル、ニゲラ(カロジラ)、クミン、マスタードシードの5種類の種を混ぜたものです。ベンガル語版ウィキペディアは、基本は同じ量ずつで、インドではマスタードシードの代わりにラドゥニというセリ科の種を使うこともある、としています。
香りの種を油ではじかせる
手順5で、汁を入れる前に熱い油で種を加熱するのは、香りを油に移すためです。香りの成分には、水より油に溶けやすいものが多くあります。香りが移った油は、汁の表面に広がり、じゃがいもや魚にからみます。
ベンガル語版ウィキペディアは、フェヌグリークを少なめに使う料理人もいると書いています。フェヌグリークは焦げると苦くなるので、手順5では赤茶色になったらすぐに次に進みます。
粉のスパイスは水で溶いてから炒める
クミンやターメリックの粉は、熱い油に直接入れるとすぐに焦げます。アイリン・スルタナも、粉のスパイスを水で溶いておくと焦げにくいとしています。Bong Eats もラフヌマ・シャルミも、粉のスパイスを水で溶いてから加えます。
水があるあいだは、鍋の中は100℃前後にとどまります。手順6では、そのあと水分が飛んで縁に油がにじんでくるまで炒めます。
マスタードオイルを煙が出るまで熱する
魚を焼く前に、Bong Eats はマスタードオイルを煙が出て淡い黄色になるまで、デブジャニは油の色が変わるまで熱しています。煙が出るので、換気扇を回して熱してください。
仕上げにたらすマスタードオイルは、加熱しないので、生の油のツンとした香りが残ります。アイリン・スルタナのレシピは、この生の油を仕上げに加えています。
地域と家庭による違い
- カロジラではじかせる:Bong Eats とラフヌマ・シャルミのレシピは、パンチ・フォロンではなくカロジラをはじかせます(ラフヌマはベイリーフも加えます)。
- 玉ねぎやトマトを入れる:デブジャニのジョルは、玉ねぎとトマトも入れます。アイリン・スルタナのジョルは、揚げた玉ねぎと玉ねぎのペーストを使い、ヨーグルトも加えます。バングラデシュの新聞プロトム・アロに、トファッザル・リトンが母アーイシャ・カトゥンの作り方として紹介したジョルは、玉ねぎとにんにくのペーストを使います。
- クミンを主役にする:マウミタ・ポールのパトラ・ジョルは、水に浸したクミンを青唐辛子とすりつぶしたペーストで香りをつけ、トマトのピューレも加えます。
- 季節の野菜:Bong Eats は、ポトル(小さなうりの仲間)やジンゲを加え、夏の野菜なら煮崩れしないものを何でも加えてよいとしています。ランジャナは、魚のジョルに野菜を入れるのはバングラデシュでよく見られると書いています。
- ボリ:Bong Eats は、豆をすりつぶして小さく丸め、天日で干した「ボリ」を揚げて加えます。
- 軽いとろみ:Bong Eats は、仕上げに全粒粉(アタ)を小さじ1/4振り入れて、ごく軽いとろみをつけます。
日本で選ぶ魚
- ルイ:ベンガルでジョルによく使われるルイ(英語でローフ)は、コイ科の淡水魚です。Bong Eats は、カトラ、ムリゲル、バタ、ティラピアなどの淡水魚で代用できるとしています。インドやバングラデシュの食材を扱う店で、冷凍のルイの筒切りが売られていることもあります。
- 鯉:ルイと同じコイ科の魚です。この記事では、ルイの代わりに最初に勧めます。うろこを取った骨つきの筒切りを使います。煮る時間はレシピと同じです。
- ティラピア:日本では「チカダイ」や「イズミダイ」の名前で売られています。皮つきの切り身を使い、手順8で煮る時間を4〜5分にします。
- スズキやマダイ:身の締まった白身の魚なら、皮つきの切り身で作れます。これはこの記事の提案です。煮る時間はティラピアと同じです。
手に入りにくい材料の代用
- パンチ・フォロン:フェヌグリーク、フェンネル、ニゲラ、クミン、マスタードシード(すべてホール)を同じ量ずつ混ぜて作れます。そのうち1.5g(小さじ1/2)を使います。カロジラ(ニゲラ)だけを0.7g(小さじ1/4)使っても、Bong Eats のようなジョルになります。
- マスタードオイル:サラダ油で代用できます。マスタードオイル特有のツンとした香りはなくなります。代用するときは、手順3で煙が出るまで熱する必要はありません。仕上げのマスタードオイルは入れません。
- カシュミーリー・チリパウダー:色が濃く、辛さは穏やかな唐辛子の粉です。パプリカパウダーを同じ量使います。
- 青唐辛子:ししとう4本で代用できます。辛みはほとんどなくなります。
- ルイ:「日本で選ぶ魚」を参照してください。
保存
- 冷蔵:保存容器に入れて2日。温め直すときは、魚が崩れないように鍋をゆすりながら温めます
- 冷凍:じゃがいもは冷凍すると食感が変わるので、冷凍には向きません
東インドのほかのレシピ
もっと知りたい人へ
出典
- The Daily Star Bangla「রাঁধুনী রান্না」(ベンガル語)
- Cookpad「মৌরলা মাছের ঝোল (Mourala macher jhol recipe in Bengali)」(ベンガル語)
- bdnews24.com「রেসিপি: আলু কাতলা ঝোল ঝোল」(ベンガル語)
- Prothom Alo「শিমবিচি」(ベンガル語)
- The Daily Star Bangla「ঝোল」(ベンガル語)
- Wikipedia「মাছের ঝোল」(ベンガル語)
- Wikipedia「পাঁচ ফোড়ন」(ベンガル語)
- Bong Eats「Rui Machher Jhol」(英語)
- Kitchen of Debjani「Bengali Rui Macher Jhol Jhinge, Aloo diye」(英語)
- Experiences of a Gastronomad「Maacher Patla Jhol (Cumin Flavoured Fish Curry)」(英語)
本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。