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ルンダン・ダギン日本では「ルンダン」ともRendang Daging レシピ

Randang Dagiangランダン・ダギアン

地域
東南アジア(西スマトラ州)
分量
6人分
公開
両手の鉄鍋に盛ったルンダン・ダギン。黒に近い焦げ茶色に煮詰まった牛肉に、結んだレモングラスと葉がのっている。奥に葉にのせたご飯

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ルンダン・ダギンは、牛肉をココナッツミルクとスパイスペーストで何時間も煮詰めた、インドネシア・西スマトラの料理です。汁けがほとんど残らず、肉は黒に近い濃い茶色になります。唐辛子の辛さとココナッツのコク、こぶみかんの葉やレモングラスの香りが、肉の奥までしみ込みます。

作り方は、インドネシアのニュースサイト Tirto のレシピや、ミナンのレノ・アンダム・スリの説明にならいます。ペーストは油で炒めず、ココナッツミルクに入れて煮立てます。そのまま煮詰めていくと、やがてココナッツの油が分かれ、最後はその油で肉を揚げ煮にします。砂糖は使いません。

ルンダン・ダギンとは

インドネシア語の「ダギン」は肉のことです。インドネシア語版ウィキペディアは、牛、水牛、ヤギ、羊の肉のルンダンをまとめてルンダン・ダギンと呼び、最もよく見られるルンダンだとしています。この記事では牛肉で作ります。西スマトラの人々の言葉であるミナンカバウ語では「Randang Dagiang(ランダン・ダギアン)」と言います。

ルンダンの名前は、ミナンカバウ語の「マランダン」から来たとされます。Tirto は、この言葉を「ゆっくりと」の意味と説明する論文を紹介しています。ミナン料理について本を書き、ルンダンの製造・販売も手がけるレノ・アンダム・スリは、ルンダンは料理の名前というより、水分を飛ばしていく調理法のことだと説明しています。実際、西スマトラには、牛肉のほかに鶏、卵、貝、葉野菜などのルンダンもあります。

ミナンカバウの祝いの料理

ルンダンは、西スマトラの高地を故郷とするミナンカバウの人々の料理です。インドネシア語版ウィキペディアは、ミナンの人々が慣習の儀礼を始めたころから作られてきたと考えられている、としています。Tirto によると、レノ・アンダム・スリの著書(2012年)は、ルンダンがミナンカバウの伝統で「クパロ・サンバ」と呼ばれ、料理のおおもとと見なされることが多いとしています。

ミナンカバウでは、ルンダンの4つの材料が社会のしくみを表すとも言われます。牛肉は慣習の長、ココナッツは知識人、唐辛子は宗教の指導者、スパイスはミナンの人々全体を表し、話し合いで物事を決める価値観を示している、とされています。

旅の保存食として広まったという説

ミナンカバウの人々は、故郷を離れて各地で働く「ムランタウ(出稼ぎ・移住)」の習慣で知られています。乾くまで煮詰めたルンダンは日持ちがするため、その旅の糧になったと伝えられています。

西スマトラのアンダラス大学の歴史学者グスティ・アスナンは、16世紀の初めにミナンの人々がマレー半島のマラッカへ交易に出るようになって、ルンダンが広まったとみています。16世紀のマレー語の物語『ヒカヤット・アミール・ハムザ』にルンダンという言葉が出てくることから、インドネシア語版ウィキペディアは、1550年代にはマレーの料理として知られていたとしています。

インドの料理との関係を指摘する声もあります。インドネシアのニュースサイト GNFI の寄稿記事は、14世紀に西スマトラの西海岸へアラブやインドの人々が来てスパイスを伝え、インドのカレーがルンダンの元になったと推測しています。同じ記事は、パガルユン王家の継承者たちの見方として、ルンダンはカレーをさらに煮詰めた段階の料理かもしれない、という考えも紹介しています。

グライ、カリオ、ルンダン

西スマトラでは、ココナッツミルクで肉を煮る料理を、煮詰め方の段階で呼び分けます。

  • グライ:汁けがたっぷりある段階。色はまだ濃くありません。
  • カリオ:煮汁が少なくなってとろみがつき、油がにじみ出た段階。色は明るい茶色です。
  • ルンダン:水分がなくなるまで煮詰め、濃い茶色から黒に近い色になった段階。

インドネシア語版ウィキペディアは、乾いたものが本来のルンダンとされ、汁けの残るものは実際にはカリオだとしています。かかる時間は情報源によって幅があり、インドネシア語版ウィキペディアは約4時間、レノ・アンダム・スリは最長7時間、Tirto は完全に乾かすには8時間に及ぶとしています。この記事では、家庭の鍋で4時間ほどかけて仕上げます。

ルンダン・ダギンのレシピ:材料(6人分)

下ごしらえ 30分 加熱 4時間15分(目安)

スパイスの配合 6人分で計5.5g
  • コリアンダー4g
  • ナツメグ1.2g
  • クローブ0.3g

スパイスペースト

  • 赤唐辛子(生)(細長い赤唐辛子)150g
  • エシャロット(インドネシアのバワン・メラ(赤い小玉のエシャロット)と同じ仲間)(Amazon)120g
  • にんにく30g(6片)
  • しょうが20g
  • ガランガル(Amazon|楽天)20g
  • 生のターメリック(ウコンの根)(Amazon)10g

スパイス

  • コリアンダー(パウダー)(Amazon|楽天)4g(小さじ2)
  • ナツメグ(パウダー)(Amazon|楽天)1.2g(小さじ1/2)
  • クローブ(ホール)(Amazon|楽天)3本(0.25g)

香りの葉

  • レモングラス(Amazon|楽天)2本
  • こぶみかんの葉(乾燥品でもよい)(Amazon|楽天)6枚
  • ウコンの葉1枚
  • サラムの葉(インドネシアのダウン・サラム)3枚

煮込み

  • 牛もも肉(かたまり)1kg
  • ココナッツミルク(Amazon|楽天)1600ml(400ml缶4缶)
  • 水400ml
  • 塩9g(小さじ1と1/2)

道具

  • 厚手の大きな鍋(直径26cm以上・容量5L以上。中華鍋でもよい)
  • ハンドブレンダー(ミキサーでもよい)(Amazon|楽天)
  • 木べら(柄が長く、先が平らで鍋底をこそげられるもの)

作り方

  1. 肉を切る

    牛もも肉1kgを、繊維を断つ向きに、6×5cm・厚さ2.5cmほどに切る。長く煮ると縮むので、大きめに切る。

  2. スパイスペーストを作る

    赤唐辛子150gはヘタを取ってざく切りにする。エシャロット120gとにんにく30gは皮をむく。しょうが20g、ガランガル20g、生のターメリック10gは皮をこそげて薄切りにする。これらを背の高い容器に入れ、ココナッツミルク1600mlのうち100mlを加えて、ハンドブレンダーでなめらかなペーストにする。ターメリックは手やまな板を黄色く染めるので、すぐに洗う。

  3. 香りの葉の下ごしらえ

    レモングラス2本は根元を切り落とし、すりこぎでたたいて繊維をつぶし、ひと結びする。こぶみかんの葉6枚は、中央の硬い筋を取り除く。ウコンの葉1枚はひと結びする。

  4. ペーストとココナッツミルクを煮立てる(グライの段階)

    鍋にペースト、残りのココナッツミルク1500ml、水400ml、コリアンダー4g、ナツメグ1.2g、クローブ3本、レモングラス、こぶみかんの葉、ウコンの葉、サラムの葉3枚を入れて中火にかける。煮立つまでの10〜15分は、木べらで鍋底から絶えず混ぜる。

  5. 肉を入れて煮る

    煮立ったら牛肉を加え、再び煮立ったら弱めの中火にする。ふたはしない。10分おきに鍋底をこそげるように混ぜながら、1時間30分〜2時間煮る。煮汁が半分ほどに減り、肉に竹串が通るようになれば次に進む。

  6. 油が出るまで煮詰める(カリオの段階)

    弱めの中火のまま、5分おきに混ぜながら、さらに45〜60分煮る。煮汁がもったりとして、表面に油がにじみ出し、色が明るい茶色になったら、塩9gを加えて混ぜる。肉を1切れ取り出して切り、中まで色が変わり、繊維がほぐれるほど柔らかいことを確かめる。硬いときは、この段階のまま15〜30分煮続ける。

  7. 油で揚げ煮にする(ルンダンの段階)

    換気扇を回し、弱火にする。木べらで鍋底をこそげながら、1〜2分おきに全体を上下に返し続ける。水分がなくなると、分かれたココナッツの油で肉とペーストを揚げ焼きにする状態になり、油がはねるので、柄の長い木べらを使い、鍋に顔を近づけない。ペーストがぽろぽろとして、肉が黒に近い濃い茶色になり、汁けがなくなるまで60〜90分続ける。焦げたにおいや煙が出たら、いったん火から下ろして混ぜ、火を弱めて続ける。

  8. 休ませる

    火を止め、レモングラスとウコンの葉、サラムの葉を取り除く。30分ほどおいて味を落ち着かせる。

白いご飯に添えて、少しずつ食べます。

料理科学:ココナッツミルクが揚げ煮に変わるまで

水があるうちは「煮る」、なくなると「揚げる」

ココナッツミルクは、すりおろしたココナッツの果肉を水と一緒に絞った液体で、ココナッツの油を多く含んでいます。

煮始めのグライの段階では、鍋の中は水が主役です。水がある限り、温度は100℃前後までしか上がりません。肉はこの温度でゆっくり煮えていきます。

煮詰めて水分が減ると、透明な油が分かれてきます。これがカリオの段階で表面ににじむ油です。英語版ウィキペディアも、ルンダンの作り方を、煮る段階、油が分かれて揚げ煮になる段階、揚げる段階の3つに分けて説明しています。

さらに水分がなくなると、鍋の中は「ココナッツの油の中で、肉とペーストを揚げている」状態に変わります。温度は100℃を超えて上がっていき、焼き色と香ばしい香りを生む反応(メイラード反応)が進んで、ルンダンは黒に近い茶色になります。手順7で弱火にして混ぜ続けるのは、この段階では温度が上がりやすく、鍋底に沈んだペーストが色づく前に焦げてしまいやすいからです。

カリオの段階で油が少なく見えても、そのまま煮詰めていけばかまいません。

ペーストを炒めずに煮立てる理由

多くのカレーは、先にペーストを油で炒めます。この記事が参考にしたミナンの作り方(Tirto のレシピ、レノ・アンダム・スリの説明、アガム県の研究)では、ペーストを油で炒める手順がなく、ココナッツミルクに入れて煮立てるところから始めます。最後に油で揚げる段階があるので、香ばしさはそこで加わります。一方で、CNN Indonesia のレシピや、アガム県スンガイ・タナンの一部の地区のように、先にペーストを炒める作り方もあります。

ただし煮立つまでは、ペーストやココナッツの固形分が鍋底に沈んで焦げつきやすくなります。手順4で煮立つまで絶えず混ぜるのはそのためです。

塩を後から入れる理由

ルンダンは、煮ている間に量が大きく減ります。西スマトラ・アガム県の儀礼用のルンダンを調べた卒業論文は、塩辛くなりすぎないよう、塩は最初ではなく仕上がり近くに入れるとしています。ただし、水分がすっかりなくなってからでは塩が全体に行き渡りにくいので、この記事では、まだ煮汁が残るカリオの段階で加えます。

肉の部位:牛もも肉を使う理由と、すね肉・肩肉で作るとき

赤身のもも肉を、大きめに切る

西スマトラ・パヤクンブの家庭のルンダンを紹介した報告は、脂の少ないそともも肉を使うとしています。アガム県のレシピを調べた研究も、内もも肉を挙げています。アガム県スンガイ・タナンの儀礼用のルンダンを比べた卒業論文では、肉をおよそ6.5×6cm、厚さ2.5cmに切っています。

西スマトラの家庭の作り方では、このもも肉を弱火で数時間かけて柔らかく煮ます。長く煮ると肉は縮むので、手順1では厚さ2.5cmと大きめに切ります。最後の段階で1〜2分おきに返し続けても、肉らしい厚みが残る大きさです。

すね肉・肩肉で作るとき

牛すね肉や肩肉は、煮込むとほぐれるほど柔らかくなりやすい部位です。ルンダンにしてもおいしく作れますが、最後に混ぜ続けるうちにほぐれやすくなります。使うときは6cm角ほどとさらに大きめに切り、手順7では鍋底をこそげるようにして、肉をつぶさないように返します。

地域による違い

西スマトラの中でも違う

ミナンカバウの人々は、故郷の高地を「ダレッ」と呼び、海沿いの土地(インドネシア語でプシシル)と区別します。西スマトラのロカン(貝)のルンダンを調べた論文によると、ダレッのルンダンは肉や鶏、卵、うなぎを使い、海沿いでは魚やロカン、シダやキャッサバの葉も使います。GNFI の記事は、ダレッのルンダンがもともとの形だと伝えられているとしています。

スパイスの使い方も土地によって違います。アガム県スンガイ・タナンの儀礼用のルンダンを比べた卒業論文では、乾燥スパイスを使わない地区と、使って先に炒める地区がありました。この記事では、Tirto と CNN Indonesia のレシピにならい、コリアンダー、ナツメグ、クローブを少し加えています。

カリオとの違い

カリオは、ルンダンの途中で火を止めたものです。汁けがあって色が明るく、日持ちは短くなります。この記事の手順6で火を止めれば、カリオとして食べられます。

マレーシアのルンダン

ルンダンはマレーシアやシンガポールでも食べられています。Tirto やインドネシア語版ウィキペディアは、マレーシアのルンダンをミナンのものとは違うものとして説明しています。Tirto は、インドネシアの料理書の著者リリー・T・エルウィンの本(2013年)を引いて、マレーシアのルンダンはカリオに近いと紹介しています。クランタン州やヌグリ・スンビラン州のルンダンは加熱の時間が短く、長く煮詰める代わりに「クリシッ」(煎ったココナッツをすりつぶしたもの)でとろみをつける、としています。同じ記事によると、歴史学者グスティ・アスナンは、カリオの段階がマレーシアやシンガポールのスタイルになったとみています。

一方で、マレーシアにも乾くまで煮詰めるルンダンがあります。マレーシアの新聞シナル・ハリアンや、マレーシア政府の文化芸術局のサイトが紹介するペラッ州の「ルンダン・トッ」は、クリシッとヤシ砂糖、酸味の果実を加え、汁けがなくなるまで煮ます。フェンネルやクミン、シナモン、八角などの乾燥スパイスを使うのも特徴です。

インドネシアの他の地域

インドネシア語のレシピには、砂糖を少し加えるものもあります(この記事で参考にしたレシピでは2件)。インドネシアの国営通信社 ANTARA によると、2018年12月にジャカルタで開かれたルンダンの催し「フェスティバル・ヌサンタラ・マランダン」で、中カリマンタン州のチームがパームシュガーを使いました。これに対し、西スマトラ州知事の夫人ネフィ・ズアイリナは、ミナンではパームシュガーは使わず、もっと辛くするものだと話しています。

手に入りにくい材料の代用

  • 赤唐辛子(生):インドネシアでは、細長くて辛さが中くらいの赤唐辛子を使います。手に入らないときは、韓国の粗びき唐辛子25gで代用し、手順2でペーストと一緒にハンドブレンダーにかけます。日本の鷹の爪は辛すぎるので、同じ量では使えません。
  • エシャロット:赤玉ねぎ120gで代用できます。
  • ガランガル:冷凍品を同じ量使えます。手に入らないときは、しょうがを10g増やします。香りの質は違います。
  • 生のターメリック:ターメリックパウダー2g(小さじ2/3)で代用し、手順4でコリアンダーと一緒に加えます。
  • レモングラス:冷凍品を同じ量使えます。
  • こぶみかんの葉:タイ料理の「バイマックルー」と同じ葉です。冷凍品や乾燥品を同じ枚数使えます。
  • ウコンの葉:ルンダンに独特の香りを加える葉ですが、日本ではほとんど手に入りません。入れずに作ってかまいません。
  • サラムの葉:インドネシアのベイリーフと呼ばれますが、ヨーロッパのローリエとは別の植物で、香りも違います。手に入らないときは入れずに作ります。
  • 牛もも肉:牛すね肉や肩肉でも作れます(「肉の部位」の節を参照)。
  • ココナッツミルク:缶によって濃さが違います。「ココナッツクリーム」と書かれた濃いものを使うときは、1600mlのうち400mlを水に替えます。

保存

  • 冷蔵:保存容器に入れて4日。翌日のほうが味がなじみます
  • 冷凍:小分けにして1か月
  • インドネシア語版ウィキペディアは、乾くまでしっかり煮詰めたルンダンは常温で3〜4週間もつとしています。日本の家庭では、冷蔵か冷凍で保存してください

東南アジアのほかのレシピ

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出典

本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。