アクーリーAkuri レシピ

この記事はAmazonアソシエイト・楽天アフィリエイトのリンクを含みます。
アクーリーは、インドのパールスィー(パーシー)が作るスパイス入りのスクランブルエッグです。ギーで炒めた玉ねぎとトマトに、ターメリックや唐辛子で色と香りをつけ、そこへ溶き卵を流し込みます。黄色い卵に、トマトの赤とパクチーの緑が散ります。
決め手は火加減です。いちばん弱い火で混ぜ続け、卵がまだ汁気を残してとろりとしているうちに火から下ろします。パーウ(ふんわりした小型の食パン)やトーストを添えて、朝ごはんによく食べられます。
アクーリーとは
ローマ字では Akuri のほか、Akoori とも綴られます。名前の由来を説明した情報源は、今回は見つかりませんでした。
パールスィーとグジャラート
パールスィーは、インドに住むゾロアスター教徒のコミュニティです。グジャラーティー語版ウィキペディアは、祖先がイランで信仰を守れなくなって海を渡り、まずディウの港に着き、そののちグジャラートのサンジャーンの港に移ったと書いています。
そのとき、土地の王ジャーディ・ラーナーは、なみなみと注いだ牛乳の器を届けて、この土地にはもう余地がないと伝えたとされています。一行の長は、その牛乳に砂糖を溶かして返しました。王はこれを、砂糖が牛乳にとけるように土地になじむという答えと受け取り、住むことを許したと伝えられています。同じページは、パールスィーの習慣の多くが土地の習慣と混ざり合った、とも書いています。
英語版ウィキペディアは、アクーリーを西インドのパールスィー料理としています。後で紹介するペルゼン・パテルは、アクーリーはムンバイのイラーニー・カフェ(イラン系の人々が開いた喫茶食堂)や、パールスィーの家庭で食べられてきた料理だと書いています。
卵好きのパールスィー
パールスィー料理のサイト「パールスィー・キュイジーン」(リター・ジャムシェード・カパーディヤーのサイト)は、卵をパールスィーの暮らしに欠かせないものとして紹介しています。縁起のよい盆「セス」にも、卵がのせられます。じゃがいもの細切りやトマト、オクラの上に卵を落として焼く「パル・イーダー」(上に卵)という料理もいろいろあります。英語版ウィキペディアの「パールスィー料理」の項目も、典型的な卵料理の一つにアクーリーを挙げています。
2つのレシピから
この記事は、パールスィー・キュイジーンに載っているカパーディヤーのレシピを土台にしました。玉ねぎを炒めてトマトを加え、しょうがとにんにく、パウダースパイスを、油がにじむまで炒めてから、火をいちばん弱くして泡立てた卵を流し込みます。スパイスは、ターメリック、レッドチリパウダー、コリアンダーとクミンの粉です。カパーディヤーは、コリアンダーとクミンの粉をまとめて「ダーナー・ジールー」(dhanajeeru)と書いています。
もう一つは、ニュージーランドのウェブ誌「ザ・スピンオフ」に載ったペルゼン・パテルのレシピです。パテルはムンバイからニュージーランドに移った人で、インドにいた頃は、自分のコミュニティの忘れられかけたレシピを記録するブログ「Bawi Bride」を書いていました。こちらは、しょうが・にんにく・青唐辛子を使わず、スパイスを炒めてからトマトを加えます。卵1個あたりのスパイスとギーは、カパーディヤーのレシピの2〜4倍です。
2つのレシピとも、卵は弱火で加熱します。パテルは、火を通しすぎずにやわらかくクリーミーに仕上げるよう書き、カパーディヤーは、とろとろにするか、しっかり火を通すかは好みで、としています。英語版ウィキペディアは、アクーリーは汁気が残るほどに仕上げ、決して火を通しすぎない、と書いています。この記事では、スパイスはカパーディヤーの量に合わせ、ギーはカパーディヤーより少し多めにしました。塩は、半分を溶き卵に、残りをマサーラーに入れます。
アクーリーのレシピ:材料(2人分)
下ごしらえ 15分 加熱 20分
- ターメリック1.5g
- 赤唐辛子1.3g
- コリアンダー1g
- クミン1g
卵液
- 卵(Mサイズ。殻を除いて約200g)4個
- 塩1.5g(小さじ1/4)
マサーラー(玉ねぎとトマトの炒めもの)
仕上げ
- パクチー(コリアンダーの葉)8g(刻んで大さじ3)
道具
- 厚手のフライパン(直径20〜24cm。カラーイー(インドの両手鍋)でもよい)
- ゴムべら(木べらでもよい)
作り方
卵を溶きほぐす
ボウルに卵4個を割り入れ、塩1.5gを加える。白身のかたまりがなくなり、表面に細かい泡が立つまでフォークで1分ほど溶きほぐす。ラップをして、マサーラーを作るあいだ冷蔵庫に入れておく。
野菜を切る
玉ねぎとトマトは5mm角のみじん切りにする。青唐辛子は小口切りにする。パクチーは茎ごと細かく刻む。
玉ねぎを炒める
フライパンにギー19gを中火で溶かし、玉ねぎを入れる。ときどき混ぜながら6〜8分、透き通ってふちが薄いきつね色になるまで炒める。
トマトを炒める
トマトと青唐辛子を加える。水分の多いトマトが熱いギーに入ると油がはねるので、顔を離して入れる。トマトが煮くずれて柔らかくなるまで、3〜4分炒める。
スパイスを炒める
しょうが5gとにんにく5gを加えて30秒炒める。ターメリック1.5g、コリアンダー1g、クミン1g、レッドチリパウダー1.25g、塩1.5gを加え、2〜3分炒める。全体がペースト状になり、ふちにギーがにじみ出てきたらよい。
卵を流し入れる
火をいちばん弱くし、30秒ほどおいてフライパンを少し冷ます。溶き卵を流し入れ、ゴムべらで鍋底と側面から大きくこそげるように、絶えず混ぜる。2〜3分して、全体がとろりとまとまり、表面にまだつやと汁気が残っているうちに火を止める。
パクチーを混ぜて仕上げる
パクチー8gを加えてひと混ぜし、すぐにフライパンを火から下ろして器に移す。フライパンに残すと余熱で固まり続ける。半熟を避けたい人の分は、手順6で卵に汁気がなくなるまで火を通してから取り分ける。
バターを塗ったパーウやトースト、ロートリー(薄い全粒粉のパン)にのせて、熱いうちに食べます。
料理科学:卵をとろりと仕上げる火加減
卵は、火を通しすぎるとぽろぽろになる
卵は温めると固まります。火を通しすぎると、かたくぽろぽろになり、皿に水がにじみ出ることもあります。英語版ウィキペディアが書くように、アクーリーは汁気が残るうちに仕上げ、火を通しすぎないようにします。パテルも、火を通しすぎずにやわらかく仕上げるよう書いています。
いちばん弱い火にして、早めに火から下ろす理由
フライパンの底は、弱火でも卵が固まる温度よりずっと熱くなります。強い火だと、底に触れた卵だけが一気に固くなり、上はまだ生、という差が大きくなります。カパーディヤーのレシピのように火をいちばん弱くして、底と側面から絶えずこそげて混ぜると、固まりかけた部分と生の部分が入れ替わり、全体がそろって固まっていきます。手順6で卵を入れる前にフライパンを少し冷ますのも、底を熱くしすぎないためです。
卵は火を止めてからも、フライパンと卵自身に残った熱で固まり続けます。手順6で、まだつやと汁気が残っているうちに火を止め、手順7ですぐに器へ移すのはそのためです。
料理科学:半熟の卵と衛生
卵の殻や中身には、食中毒の原因になるサルモネラ菌がついていることがあります。菌は加熱で死にますが、とろりと仕上げたアクーリーは、卵全体がしっかり固まる温度までは上げていません。
日本で売られている生食用の卵は、生で食べることを前提に、洗浄や温度の管理をして出荷されています。パックの賞味期限は、一般に、冷蔵で保存した卵を生で食べられる期限として表示されています。とろりと仕上げるなら、冷蔵庫で保存した期限内の卵を使い、割った卵は手順1のとおり冷蔵庫に入れておき、マサーラーができたらすぐに調理します。
次のときは、手順6で汁気がなくなるまで火を通します。
- ひびの入った卵や、賞味期限を過ぎた卵を使うとき
- 妊娠中の人、乳幼児、高齢の人、体調のすぐれない人が食べるとき
エッグ・ブルジーやバルーチー・アクーリーとの違い
インドには、アクーリーとよく似た「アンダー・ブルジー(エッグ・ブルジー)」という卵料理もあります。パテルは、ブルジーは長距離列車の朝食や早朝の屋台で出される、汁気のない辛い炒り卵で、アクーリーはクリーミーで香りがよく、辛さは控えめだと書き分けています。ドバイの新聞ガルフ・ニュースが紹介したドバイのカフェの作り方では、アクーリーにゆでて炒めたじゃがいもを加え、汁気を少し残して仕上げています。
英語版ウィキペディアによると、グジャラートの町バルーチで生まれたとされる「バルーチー・アクーリー」は、カシューナッツやアーモンド、レーズンを加えます。パールスィー・キュイジーンも、炒ったナッツとレーズンを仕上げに加える作り方を紹介しています。
手に入りにくい材料の代用
- ギー:食塩不使用バターを同じ量使います。バターは焦げやすいので、手順3は中火より少し弱めにします。
- レッドチリパウダー:一味唐辛子を小さじ1/4に減らし、パプリカパウダーを小さじ1/4足すと、辛さと色が近くなります。
- 青唐辛子:手に入らなければ省き、レッドチリパウダーを小さじ1/4増やします。
- パーウ:やわらかいロールパンや、厚めに切った食パンで代用できます。
保存
- 卵:とろりと仕上げたアクーリーは作り置きに向きません。作ったらすぐに食べ切ります
- マサーラー:手順5まで終えた状態で、保存容器に入れて冷蔵で2日。食べる直前に温め、手順6から行います
西インドのほかのレシピ
もっと知りたい人へ
出典
- ParsiCuisine.com「Akuri – Traditional Parsi Akuri made the old fashioned way and with the old fashioned taste!」(英語)
- ParsiCuisine.com「Eggs」(英語)
- ParsiCuisine.com「Hard Boiled Egg – Bharuchi Akuri」(英語)
- The Spinoff「Recipe: Akoori, or masala scrambled eggs」(英語)
- University of Auckland「Perzen Patel: 'There's more to Indian food than butter chicken'」(英語)
- Gulf News「Watch: Guide to making Parsi-style akuri pav, Bombay-style anda bhurji, and continental creamy scrambled eggs」(英語)
- Wikipedia「પારસી」(グジャラーティー語)
- Wikipedia「Akuri」(英語)
- Wikipedia「Parsi cuisine」(英語)
本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。