バーダーミー・ムルグBadami Murgh レシピ
بادامی مرغیバーダーミー・ムルギー

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バーダーミー・ムルグは、アーモンドのペーストで鶏肉を煮る料理です。唐辛子の赤もトマトの酸味も前に出さず、アーモンドと生クリームのまろやかさ、カルダモンの香りで食べさせます。パキスタンのウルドゥー語の新聞では、ラマダーン(断食月)の食事の特集で紹介されています。
作り方の要は2つです。アーモンドは皮をむいてから水と一緒になめらかなペーストにし、煮込みの最後に弱火で加えます。玉ねぎは淡いきつね色で止めて、ソースを白っぽく仕上げます。
バーダーミー・ムルグとは
バーダームはウルドゥー語とヒンディー語でアーモンドのことで、バーダーミーは「アーモンドの」という意味です。ムルグは鶏のことです。パキスタンの日刊紙ジャングは、ウルドゥー語でこの料理を بادامی مرغی(バーダーミー・ムルギー)と書いています。ムルギーもムルグと同じく鶏を指す言葉です。
今回読んだ情報源では、英語のつづりで「Badami Murgh」とするものがいちばん多くありました。パキスタンのテレビ局マサーラーTVのサイトや、インドの料理家サンジーヴ・カプールのサイトです。カプールのサイトには「Murgh Badami」と語順を逆にしたページもあり、パキスタンのウルドゥー語のポータルサイト UrduPoint には、「王家の」という意味のシャーヒーを冠した「シャーヒー・ムルグ・バーダーミー」があります。カプールのサイトの「バーダーミー・ムルグ」のページも、王家の料理のような風味の料理として紹介しています。
パキスタンの家庭の食卓で
ジャングは、2019年5月と2020年5月の料理の特集で、同じバーダーミー・ムルギーのレシピを載せています。どちらも、ラマダーンの夜明け前の食事(セヘリー)と日没後の食事(イフタール)に向けた献立の特集です。マサーラーTVのサイトでも、ザルナク・シドワ、シーリーン・アンワルといった複数の料理家が、バーダーミー・ムルグや「チキン・バーダーミー」の名前で、それぞれ違う作り方を紹介しています。
ムガル帝国の料理とアーモンド
ジャングに載った、サルマー・フサインの記事「ムガルの料理術」(ウルドゥー語)は、初代皇帝バーブルと2代皇帝フマーユーンの時代の料理では、アーモンド、くるみ、レーズン、干したすもも、あんず、ピスタチオ、サフランなどが使われ、とくにアフガニスタンから取り寄せられていた、としています。同じ記事は、米の粉をアーモンドや鶏肉と一緒についた、宮廷の甘い料理も紹介しています。
16世紀末にアクバル帝の宮廷で書かれた『アーイーニ・アクバリー』の献立の章(英訳)にも、アーモンドとピスタチオ、レーズンを入れる甘いご飯「ザルド・ビリンジ」や、アーモンドとレーズンを加える人もいるという、肉と米の料理「カブーリー(Qabuli)」が出てきます。
ただし、どちらもバーダーミー・ムルグそのものには触れていません。今回読んだ情報源には、バーダーミー・ムルグがいつ、どこで生まれたのかを書いたものはありませんでした。
この記事の配合
ジャングのウルドゥー語のレシピを土台にしました。カルダモンのさやを油で熱して取り出し、同じ油で玉ねぎを炒めて、しょうがとにんにく、鶏肉を加えます。鶏肉が柔らかくなったらヨーグルトを加えて水分をとばし、塩、黒こしょう、レモン汁、生クリーム、アーモンドのペーストを加えて弱火で10〜15分煮て、最後に取り出しておいたカルダモンとカルダモンの粉を加えて5分煮る、という流れです。分量は、鶏肉1kgの配合を800gに合わせて減らしました。
ジャングのレシピは、生クリームとアーモンドのペーストを合わせて1/2カップとしていて、それぞれの量は書いていません。そこでアーモンドの量は、カプールの2つのレシピ(どちらも鶏肉750gに、アーモンド20〜25粒と1カップ)の幅の中から、この記事で60gに決めました。幅の少ない方に寄せた量で、どちらかのレシピの量そのままではありません。生クリームは、カプールのバーダーミー・ムルグの大さじ2〜3にならって大さじ3にしました。アーモンドを熱湯に浸して皮をむくところはカプールのバーダーミー・ムルグに、ペーストと一緒に水1/2カップを加えるところはカプールのムルグ・バーダーミーにならっています。ジャングは鶏肉が柔らかくなるまで煮てからヨーグルトを加えますが、この記事では、鶏肉の表面の色が変わったらヨーグルトを加え、ふたをして煮ながら火を通します。塩と黒こしょうは、ジャングでは「好みで」なので、量はこの記事で決めました。塩は、鶏肉に味がしみるように、この記事ではヨーグルトと一緒に早めに入れています。パクチーはジャングのレシピにはありません。カプールのバーダーミー・ムルグや、マサーラーTVのザルナク・シドワのレシピの1つが仕上げに飾っているので、この記事でも散らします。
バーダーミー・ムルグのレシピ:材料(4人分)
下ごしらえ 30分 加熱 1時間5分
- グリーンカルダモン2.2g
- 黒こしょう1.2g
鶏肉
- 骨付き鶏もも肉(ぶつ切り)800g
アーモンドの皮むき用
- 熱湯(アーモンドを浸す)200ml
玉ねぎ・しょうが・にんにく
- 玉ねぎ300g(中1と1/2個)
- しょうが(すりおろし)10g(小さじ2)
- にんにく(すりおろし)10g(小さじ2)
ヨーグルトで煮る
- プレーンヨーグルト200g
- 塩9g(小さじ1と1/2)
仕上げ
作り方
アーモンドを熱湯に浸す
生アーモンド60gと生アーモンド(飾り用)6gをボウルに入れ、熱湯200mlを注いで15分おく。その間に、骨付き鶏もも肉800gをキッチンペーパーでふき、水気をよく取る。生の鶏肉をさわった手とまな板は、すぐに洗剤で洗う。玉ねぎ300gは縦半分に切り、繊維に沿って薄切りにする。プレーンヨーグルト200gはボウルに入れ、なめらかになるまで混ぜて、室温においておく。
アーモンドの皮をむく
アーモンドの湯を捨てる。1粒ずつ指でつまみ、とがっていない方の端を押して、中身を皮から押し出す。皮は使わない。飾り用の5粒は、縦に薄く切る。
アーモンドをペーストにする
生アーモンド60gと水120mlをハンドブレンダーの容器に入れ、2〜3分回して、ざらつきのないなめらかなペーストにする。
カルダモンを用意する
油で熱する用のグリーンカルダモン3粒は、すりこぎで軽くたたき、さやに割れ目を入れる。仕上げ用のグリーンカルダモン8粒は、さやを割って種を取り出し、すり鉢で粉にする。さやは使わない。
カルダモンを油で熱して取り出す
厚手の鍋にサラダ油81gを中火で熱し、油で熱する用のカルダモン3粒を入れる。さやがふくらみ、香りが立つまで20〜30秒熱したら、網じゃくしで取り出して小皿にとっておく。
玉ねぎを淡いきつね色に炒める
同じ油に玉ねぎ300gを加える。熱い油に水分の多い玉ねぎが入るので、油はねに気をつけ、顔を離して入れる。中火でときどき混ぜながら10〜12分、全体が淡いきつね色になるまで炒める。濃い茶色にはしない。しょうが(すりおろし)10gとにんにく(すりおろし)10gを加え、生のにおいがなくなるまで1分炒める。
鶏肉を炒める
強めの中火にし、鶏肉800gを加える。油はねに気をつける。上下を返しながら5分、表面の色が白く変わるまで炒める。
ヨーグルトを加えて煮る
弱火にし、1で混ぜたプレーンヨーグルト200gを大さじ3杯分ずつ加えては混ぜる。塩9gを加えて混ぜる。弱めの中火にし、ふつふつと煮立ったらふたをして20分煮る。途中で2〜3回、鍋底から混ぜる。
水分をとばす
ふたを取り、中火でときどき混ぜながら5分、鍋の水分がほとんどなくなり、縁に油がにじむまで煮詰める。鍋底が焦げそうなら、弱めの中火にして混ぜる回数を増やす。
アーモンドのペーストと生クリームで煮る
弱火にし、3のアーモンドのペースト、生クリーム45ml、レモン汁22.5ml、黒こしょう1.2gを加えて、全体をよく混ぜる。ふたをして、ごく弱火で12分煮る。ペーストは鍋底にたまって焦げやすいので、3〜4分ごとに鍋底からこそげるように混ぜる。
鶏肉の火の通りを確かめる
いちばん大きい1切れを取り出し、骨の近くのいちばん厚いところに温度計を刺す(先を骨に当てない)。75℃以上あればよい。温度計がないときは、骨まで切り込みを入れ、身に生の透明感がなく、出てくる汁が透明なことを確かめる。色だけでは確実に判断できないので、迷ったら3分煮足す。足りなければ鍋に戻し、ふたをしてごく弱火で3分ずつ煮て、そのつど確かめる。
カルダモンを戻して仕上げる
5で取り出したカルダモン3粒と、仕上げ用のカルダモンの粉を全体に振り入れる。ふたをして、ごく弱火で5分温める。火を止め、薄く切った生アーモンド(飾り用)6gとパクチー5gを散らす。
ジャングのレシピにならって、熱いうちにパラーター(層になった焼きパン)やチャパーティー(全粒粉の薄焼きパン)と食べます。カルダモンのさやは、食べるときによけます。
アーモンドの皮をむいてペーストにする
皮をむいて、ソースを白っぽく
今回読んだカプールの2つのレシピは、どちらもアーモンドの皮をむいてから使います。皮ごとペーストにすると、皮の茶色がソースに混じります。
熱湯に15分浸すと、皮がふやけて中身から浮きます。手順2のように端を押すと、中身がつるりと出てきます。
水と一緒に回して、なめらかにしておく
皮をむいたアーモンドを水120mlと一緒にハンドブレンダーで回すと、白く濁った、とろりとしたペーストになります。手順3で先にここまでなめらかにしておくと、粒が残ったまま鍋に入れるより、ソース全体に均一に混ざります。粒が残ると、ソースの舌ざわりがざらつきます。
ペーストを入れたら、ごく弱火で
アーモンドのペーストを加えたソースは濃く、ペーストが鍋底にたまりやすくなります。火が強いと、鍋底の部分だけ水分が少なくなって温度が上がり、焦げつきます。焦げた色と苦みは、白っぽく仕上げたいこの料理では目立ちます。手順10で、ふたをしてごく弱火にし、3〜4分ごとに鍋底からこそげるように混ぜるのはそのためです。玉ねぎを淡いきつね色で止めるのも、ソースの色を淡く保つためです。
作り手による違い
今回読んだ情報源だけでも、バーダーミー・ムルグにはいろいろな作り方がありました。
- パクチーと青唐辛子で緑にする:マサーラーTVで料理家ザルナク・シドワが紹介したバーダーミー・ムルグの1つは、青唐辛子6〜8本、しょうが、にんにく、パクチー1/2束を少しの水ですりつぶした緑のペーストで、鶏肉1kgを煮ます。鶏肉に半分ほど火が通ったら、ヨーグルト1カップと、皮をむいて粉にしたアーモンド10〜15(単位は書かれていません)を加えます。揚げたにんにくの薄切りとゆで卵を飾ります。
- 炒ったアーモンドとホールのコリアンダー:UrduPoint のシャーヒー・ムルグ・バーダーミーは、先に鶏肉1kgをギーで色づくまで焼いて取り出し、刻んだアーモンド100gを、コリアンダー(ホール)大さじ2、カルダモン8粒、けしの実大さじ2と一緒にギーで薄く色づくまで炒め、冷ましてから水でペーストにします。鶏肉を戻し、ヨーグルト大さじ3を少しずつ加えて、ふたをして50分、ギーが分かれるまで煮ます。材料欄には玉ねぎ225gがありますが、手順には出てきません。
- けしの実と合わせる:カプールの「ムルグ・バーダーミー」は、皮をむいたアーモンド20〜25粒を、水に浸したけしの実大さじ4と一緒にペーストにします。ホールスパイスはから炒りして粉にし、唐辛子の粉とターメリックも使います。
- 圧力鍋で煮て裏ごしする:カプールの「バーダーミー・ムルグ」は、アーモンド1カップを、玉ねぎ、にんにく、しょうが、青唐辛子、メロンの種と一緒に圧力鍋で煮てからなめらかにし、こして鶏肉と合わせます。白こしょうとコリアンダーパウダー、ガラム・マサーラーで香りをつけます。
- 玉ねぎとカシューナッツ、ココナッツミルク:ザルナク・シドワのもう1つのレシピは、玉ねぎ6個をきつね色に炒め、アーモンド10粒とカシューナッツ10粒をしょうが、にんにく、ホールスパイスと一緒にペーストにして炒め、ヨーグルトとココナッツミルクで煮ます。
- 牛乳とソースで甘辛く:マサーラーTVの料理家シーリーン・アンワルの「チキン・バーダーミー」は、すりおろした玉ねぎと青唐辛子10本、アーモンド20粒のペーストに、牛乳、赤唐辛子とにんにくのソース、甘いソースを加えます。
手に入りにくい材料の代用
- 生アーモンド:製菓用のアーモンドパウダー(皮なし)60gで代用できます。アーモンドを熱湯に浸して皮をむく作業(手順1〜2のアーモンドの部分)は省き、手順3で水120mlと一緒にハンドブレンダーでなめらかにします。飾り用の生アーモンドは、アーモンドスライス6gに替えます。素焼きの無塩アーモンドでも作れますが、熱湯に浸しても皮がむきにくく、むききれない皮が残るとソースが少し茶色っぽくなります。
- グリーンカルダモン(ホール):ホールが手に入らなければ、手順5のカルダモンは省き、手順12でカルダモンパウダー1g(小さじ1/2)を振ります。香りは弱くなります。
保存
- 冷蔵:保存容器に入れて2日。温め直すときは、ごく弱火で鍋底から混ぜながら、鶏肉の中心が75℃になるまで温めます。アーモンドのソースは冷えると固くなるので、焦げつかないように混ぜ続けます
- 冷凍:手順11まで終えて冷まし、1か月。解凍して温め直してから、手順12を行います
パキスタンのほかのレシピ
もっと知りたい人へ
出典
- Jang「سحری اور افطاری کا دستر خوان」(ウルドゥー語)
- Jang「سحری اور افطاری میں بنائیں چٹ پٹے پکوان」(ウルドゥー語)
- UrduPoint「Shahi Murgh Badami Recipe In Urdu - Recipe No. 1651」(ウルドゥー語)
- Masala TV「Badami Murgh Recipe」(英語)
- Masala TV「Badami Murgh Recipe」(英語)
- Masala TV「Chicken Badami Recipe | Shireen Anwar」(英語)
- Sanjeev Kapoor「Murgh Badami」(英語)
- Sanjeev Kapoor「Badami Murgh」(英語)
- Jang「مغلیہ فن آشیزی」(ウルドゥー語)
- Frances W. Pritchett「Recipes for Dishes(A'in-i Akbari」(英語)
- USDA Food Safety and Inspection Service「The Color of Meat and Poultry」(英語)
本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。