チキン・ティッカー・マサーラー日本では「チキンティッカマサラ」ともChicken Tikka Masala レシピ
चिकन टिक्का मसालाチキン・ティッカー・マサーラー

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チキン・ティッカー・マサーラーは、ヨーグルトとスパイスに漬けて焼いた一口大の鶏肉「ティッカー」を、玉ねぎとトマトのスパイシーなソースで煮た料理です。イギリスで広く親しまれていて、生まれたのはスコットランドのグラスゴーか、インドか、いまも意見が分かれています。
作り方は、インドの家庭のレシピにならいました。ティッカーは厚手のフライパンで焦げ目をつけます。ソースは、玉ねぎを濃い茶色になるまで炒め、トマトを油がにじむまで炒めてから煮ます。同じ北インドの味でも、トマトとバターを煮て裏ごしするバター・チキンとは、香りも食感も違う一皿です。
チキン・ティッカー・マサーラーとは
ヒンディー語では英語の名前をそのまま「チキン・ティッカー・マサーラー」(चिकन टिक्का मसाला)と書きます。ティッカーはヒンディー語・ウルドゥー語で「小さな切れ」のことで、骨を除いた肉を一口大に切り、ヨーグルトとスパイスに漬けて、串に刺してタンドゥール(壺型の窯)で焼く料理を指します。マサーラーは混ぜ合わせたスパイスのことで、ここでは玉ねぎやトマトとスパイスを炒めて作るソースを指します。
ティッカーそのものは古くからある料理です。シェフで料理作家のサダフ・フセインは、ティッカーの起源をムガル帝国の初代皇帝バーブル(在位1526〜1530年)の時代に結びつけています。一方、ティッカーをソースで煮る「ティッカー・マサーラー」がいつ、どこで生まれたのかは、はっきりしていません。
グラスゴーのシーシュ・マハルで生まれたとする説
いちばんよく知られているのは、スコットランドのグラスゴーで生まれたという話です。主役は、1945年に現在のパキスタンのパンジャーブ地方、ラホール近くの村で生まれたアリー・アフマド・アスラムです。子どもの頃に家族とグラスゴーに移り、1964年に西部の街区でレストラン「シーシュ・マハル」を開きました。
アスラムによると、1970年代はじめのある晩、客から「チキン・ティッカーがぱさぱさだ」と言われ、ソースで煮て出したのが始まりです。アスラムは2009年のAFP通信の取材で、辛いカレーを好まない客に合わせて、ヨーグルトと生クリームのソースで煮るようにしたと語っています。ヒンディー語のニュースサイトでも、考案の年を1970年とするものと、1972年とするものがあり、そろっていません。
缶詰の濃縮トマトスープを使った、という話もよく語られます。ただ、ロンドンのレストラン経営者イクバール・ワッハーブは2019年、このトマトスープの話は、自分と、カレー店のガイドを編集していた友人のピーター・グローヴが、何度も同じ質問をしてくる記者向けにこしらえたものだと明かしています。
2009年には、グラスゴー選出の下院議員モハンマド・サルワルが、チキン・ティッカー・マサーラーを「グラスゴーの料理」としてEUの原産地名称保護の対象にするよう求めましたが、認められませんでした。アスラムは2022年12月に77歳で亡くなり、シーシュ・マハルはいまも「チキン・ティッカー・マサーラー発祥の店」を名乗っています。
インドで生まれたとする説
インドでは、グラスゴー説に反論する声が根強くあります。バター・チキンで知られるデリーのモーティー・マハルを率いるモニシュ・グジュラールは、祖父のクンダン・ラール・グジュラールが、分離独立の前からこの料理を出していたと主張しています。
2009年のグラスゴーの動きの際には、デリーの料理記者ラーフル・ヴァルマが「1971年に初めて食べた。基本的にはパンジャーブの料理で、生まれて40〜50年ほど、偶然の産物だろう」と述べ、デリーの老舗カリームのシェフ、ザイームッディーン・アフマドは「ムガル時代から家に伝わるレシピ」だと語りました。先のワッハーブも、この料理の根はオールド・デリーのムルグ・マクニー(バター・チキン)にあるとしています。
ピーター・グローヴと妻のコリーンは、この料理はイギリスで、おそらくバングラデシュ出身の料理人が考えたものだろうとしています(ただしピーター・グローヴは、記者向けに話をこしらえたことも認めています)。どの説も、記録で確かめられてはいません。2001年には、イギリスの外務大臣ロビン・クックが演説でこの料理を「真のイギリスの国民食」と呼びました。
バター・チキンとの違い
どちらも焼いた鶏肉をトマトと生クリームのソースで煮る料理ですが、作り方の考え方が違います。
バター・チキンは、タンドゥーリー・チキンを煮直したことから生まれたとされ、ソースは玉ねぎを使わず、トマトをバターで煮て裏ごしした、なめらかで甘みのあるものです。チキン・ティッカー・マサーラーは、骨なしの一口大のティッカーを使い、ソースは玉ねぎを濃い茶色になるまで炒めた土台に、トマトとクミン・コリアンダーなどの粉のスパイスを加えて、油がにじむまで炒めてから煮ます。裏ごしはしないので、ソースには玉ねぎとトマトの粒が残り、甘みは控えめで、スパイスの香りと香ばしさが前に出ます。
この記事の配合
インドの家庭のレシピでは、ヒンディー語のものも英語のものも、玉ねぎを色づくまで炒めてから、トマトと粉のスパイスを加えて炒め、カスーリー・メーティー(乾燥したフェヌグリークの葉)で仕上げる流れが多く見られます。生クリームは、加えるレシピと加えないレシピがあります。配合は、インドの料理家スワスティ・シュリーカーントのレシピを中心に、ヒンディー語のレシピの玉ねぎの多さを取り入れました。
ティッカーは、インドの家庭で多い、厚手のフライパンで焼く方法にしています。カシューナッツは入れず、とろみは玉ねぎとトマトでつけます。
チキン・ティッカー・マサーラーのレシピ:材料(4人分)
下ごしらえ 4時間15分(漬け込みを含む) 加熱 1時間
- コリアンダー6g
- カシュミーリー・チリ5g
- ガラム・マサーラー4g
- クミン3g
- カスーリー・メーティー2g
- ターメリック0.8g
ティッカーの漬けだれ
- 鶏もも肉(皮なし・骨なし)600g
- ギリシャヨーグルト(水切りした濃いヨーグルト)100g
- しょうが(すりおろし)7.5g(小さじ1と1/2)
- にんにく(すりおろし)7.5g(小さじ1と1/2)
- カシュミーリー・チリパウダー(Amazon|楽天)2.5g(小さじ1)
- ターメリックパウダー(Amazon|楽天)0.8g(小さじ1/4)
- コリアンダーパウダー(Amazon|楽天)2g(小さじ1)
- クミンパウダー(Amazon|楽天)1g(小さじ1/2)
- ガラム・マサーラー(Amazon|楽天)2g(小さじ1)
- カスーリー・メーティー(Amazon|楽天)1g(大さじ1)
- レモン汁15ml(大さじ1)
- マスタードオイル(Amazon|楽天)13g(大さじ1)
- 塩4g(小さじ2/3)
マサーラー(ソース)
道具
- 厚手の鍋(直径20cm前後)
- 厚手のフライパン(鉄またはステンレス。直径26cm前後)
- 木べら
作り方
鶏肉を漬け込む
鶏もも肉600gを3〜4cm角に切り、キッチンペーパーで水気をふく。ボウルにギリシャヨーグルト100g、しょうが7.5g、にんにく7.5g、カシュミーリー・チリパウダー2.5g、ターメリックパウダー0.8g、コリアンダーパウダー2g、クミンパウダー1g、ガラム・マサーラー2g、レモン汁15ml、マスタードオイル13g、塩4gを混ぜ、カスーリー・メーティー1gを手のひらでもみながら加える。鶏肉を加えてよくからめ、ふたをして冷蔵庫で4時間〜一晩おく。
玉ねぎを濃い茶色になるまで炒める
玉ねぎ200gをみじん切りにする。鍋にギー26gを中火で熱し、玉ねぎと塩6gを入れて、ときどき混ぜながら12〜15分、全体が濃い茶色になるまで炒める。鍋底に茶色いこびりつきができたら、水30mlを大さじ1ずつ2回に分けて加え、木べらでこそげ落としながら炒め続ける。
スパイスとトマトを炒める
完熟トマト400gを1cm角に刻む。種とまわりのゼリー状の部分も捨てずに使う。青唐辛子1本は縦に切り込みを入れる。鍋にしょうが7.5g、にんにく7.5g、青唐辛子を加えて1分炒める。弱火にして、カシュミーリー・チリパウダー2.5g、コリアンダーパウダー4g、クミンパウダー2g、ガラム・マサーラー2gを加え、焦がさないように20〜30秒混ぜる。トマトを加えて強めの中火にし、木べらでつぶしながら8〜10分、水分がとんでぽってりし、縁に油がにじみ出るまで炒める。
水を加えて煮る
水200mlを加えて煮立て、ふたをして弱めの中火で12〜15分、とろみがつくまで煮る。焦げつかないよう、ときどき底から混ぜる。
ティッカーを焼く
ソースを煮ている間に焼く。フライパンを強めの中火で熱し、ギー13gの半量をひく。鶏肉の漬けだれを軽く落とし、半量を間隔をあけて並べる。油がはねるので、鶏肉は手前から奥へ置く。動かさずに3分焼き、ところどころに黒い焦げ目がついたら返して、さらに2〜3分焼いて取り出す。残りのギーで、残りの鶏肉も同じように焼く。中まで完全に火が通っていなくてよい(ソースで煮て仕上げる)。
ソースで煮て仕上げる
ソースに砂糖3gと生クリーム100mlを加えて混ぜ、弱めの中火で2分煮る。焼いた鶏肉を、フライパンに残った焼き汁と一緒に鍋に加え、カスーリー・メーティー1gを手のひらでもみながら加える。ソースがふつふつと煮立つ火加減で、ときどき混ぜながら5〜7分煮る。いちばん大きい1切れを切り、中に赤みがなく、肉汁が透明なら火が通っている。火を止め、刻んだパクチー5gを散らす。
ナーンや、炊いたバースマティー米を添えて食べます。
料理科学:玉ねぎを濃い茶色になるまで炒める理由
辛みが抜けて、香ばしさが加わる
生の玉ねぎの辛みは、加熱すると抜けていきます。炒めて水分が抜け、温度が上がると、糖が色づくカラメル化と、糖とアミノ酸が反応するメイラード反応が進み、茶色い色と香ばしい香りが生まれます。
このソースの甘み、こく、とろみの土台は、この玉ねぎです。薄いきつね色で止めると、ソースの味が平板になります。手順2で12〜15分かけて濃い茶色まで炒めるのはそのためです。
塩を先に入れ、鍋底のこびりつきを水で溶かす
塩は、スワスティ・シュリーカーントのレシピにならって、玉ねぎと一緒に入れます。塩をふると玉ねぎから水分が出て、しんなりしやすくなります。
炒めていくと、鍋底に茶色いこびりつきができます。焦がさないうちに少量の水を加えて木べらでこそげ落とし、玉ねぎにからめます。水はすぐに蒸発します。
料理科学:トマトを油がにじむまで炒める理由
「油が分かれる」は水分がとんだ合図
インドの料理では、玉ねぎやトマトとスパイスを、縁から油がにじみ出るまで炒めることを「ブーンナー」(炒りつける)と呼び、マサーラーの仕上がりの目安にします。
トマトの水分が多いうちは、鍋の中は100℃前後にとどまります。水分がとんでくると、トマトとスパイスに混ざっていた油が分かれて、縁ににじみ出てきます。この段階になると鍋底の温度が100℃を超えて上がり始め、トマトの糖やアミノ酸が色づいて、生のトマトの青い香りが消え、甘みと香ばしさのある深い味に変わります。
手順3で油がにじむ前に水を加えると、生のトマトの青い香りが残ったソースになります。
イギリスの店の作り方
イギリスの店では、生クリームやヨーグルトでまろやかにしたチキン・ティッカー・マサーラーがよく見られます。ただ、イギリスで1998年に48のレシピを比べた調査では、共通する材料は鶏肉だけだったとされ、店ごとに作り方が大きく違います。
グローヴ夫妻が先駆けとみているのが、料理家バルビール・シン夫人が1961年にイギリスで出した料理書の「シャーヒー・チキン・マサーラー」です。玉ねぎとトマトを炒めたソースに、生クリーム、ヨーグルト、アーモンドの粉を加えます。
イギリスの店のようなまろやかな味にしたいときは、手順6で生クリームと一緒にアーモンドパウダー60gと水50mlを加えます。
手に入りにくい材料の代用
- カシュミーリー・チリパウダー:色が濃く、辛さは穏やかな唐辛子の粉です。パプリカパウダーを同じ量使い、辛みを足したいときは一味唐辛子を小さじ1/4まで加えます。
- マスタードオイル:サラダ油で代用できます。マスタードオイル特有のツンとした香りはなくなります。
- カスーリー・メーティー:乾燥したフェヌグリークの葉です。代わりになるものがないので、手に入らなければ省きます。
- 青唐辛子:手に入らなければ省きます。辛みと青い香りが少し弱くなります。
- 完熟トマト:トマトの水煮缶(ホール)1缶(400g)で代用できます。手順3で、つぶしながら6〜8分炒めます。
- ギリシャヨーグルト:プレーンヨーグルト200gを、キッチンペーパーを敷いたざるにのせて冷蔵庫で2時間水切りすると、約100gの濃いヨーグルトになります。
- ギー:サラダ油で代用できます。ギーの香ばしい香りはなくなります。
保存
- 冷蔵:保存容器に入れて2日
- 冷凍:手順4まで終えたソースで1か月。解凍して温め直し、焼きたてのティッカーで手順5と6を行います
北インドのほかのレシピ
もっと知りたい人へ
出典
- Hebbar's Kitchen「पनीर टिक्का मसाला रेसिपी | paneer tikka masala recipe in hindi | पनीर टिक्का ग्रेवी」(ヒンディー語)
- Cookpad「चिकन टिक्का मसाला Chicken Tikka Masala (recipe in hindi)」(ヒンディー語)
- Aaj Tak「नहीं रहे शेफ अली अहमद, जानें दुनिया को कैसे दी थी चिकन टिक्का मसाला की रेसिपी」(ヒンディー語)
- DNA Hindi「Chicken Tikka Masala का अविष्कार करने वाले स्कॉटिश शेफ का निधन, 48 घंटे के लिए बंद हुआ यह रेस्टोरेंट」(ヒンディー語)
- Amar Ujala「Chicken Tikka Masala: चिकन टिक्का मसाला के आविष्कारक का निधन, जानें क्यों और कैसे बनी ब्रिटेन की राष्ट्रीय डिश」(ヒンディー語)
- GNT「History of Chicken Tikka Masala: ब्रिटेन की नेशनल डिश है चिकन टिक्का मसाला... जानिए इसके इतिहास से जुड़े किस्से」(ヒンディー語)
- Swasthi's Recipes「Chicken Tikka Masala Recipe」(英語)
- Archana's Kitchen「Chicken Tikka Masala Recipe」(英語)
- Gulf News「Chicken tikka debate gets spicier」(英語)
- Shish Mahal「The Birthplace of Chicken Tikka Masala」(英語)
- NPR(Michigan Public)「Who created chicken tikka masala? The death of a curry king is reviving a debate」(英語)
- The Sunday Post「Chicken Faker Masala: Restaurant boss admits inventing Scottish claim to famous dish」(英語)
- Mrs Balbir Singh's「Mrs Balbir Singh's | Shahi Chicken Masala (The Original Chicken Tikka Masala?)」(英語)
- Wikipedia「Chicken tikka masala」(英語)
- Wikipedia「Ali Ahmed Aslam」(英語)
本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。