チョク・ワングンChok Wangun レシピ

この記事はAmazonアソシエイト・楽天アフィリエイトのリンクを含みます。
チョク・ワングンは、なすを油で揚げてから、タマリンドの酸っぱい煮汁で煮たカシミールの料理です。料理名は、英語で「酸っぱいなす」と訳されています。揚げたなすのとろりとした果肉に、タマリンドの酸味と、乾燥しょうがとフェンネルの香りがしみ込みます。
カシミールのヒンドゥー教徒、パンディットの料理書にならって、玉ねぎもにんにくもトマトも使いません。なすはマスタードオイルで揚げ、その油の一部を煮汁に使います。
チョク・ワングンとは
カシミール語の料理名で、綴りは「Choek Vangan」「Chokh Vangun」などいろいろに書かれます。S. S. カウル・キラムとシャーム・ラーニー・キラムの料理書『De Leij: Culinary Art of Kashmir』は、この料理名を英語で「酸っぱいなす」と訳し、ヴァングンはなす1個、ヴァンガンは2個以上を指すと説明しています。「チョク」の語の説明はありません。同じ本は、ヒンディー語の名前を「Khate Baingan」(カッテー・バインガン)としています。インドの料理ブログ「マーイェーカー」と、英国の料理雑誌「フード・アンド・トラベル」のレシピも、料理名に「酸っぱいなす」の意味の言葉を添えています。
パンディットの宴席の一品
『De Leij』は、この料理をパンディットの菜食の料理の章に入れています。菜食の結婚式の宴やお祝いの席でよく出され、客一人に1〜2切れずつ配るものだとしています。少しだけ作って、漬物のような付け合わせにすることもあると書いています。フード・アンド・トラベルが料理家ロミー・ギルの本から載せたレシピも、結婚式で伝統的に出されてきた添え物と紹介しています。
英語版のウィキペディアは、パンディットの料理は、イスラム教徒の料理が玉ねぎやにんにく、エシャロットを使うところで、代わりにヒング(アサフェティダ。セリ科の植物の樹脂で、炒めると玉ねぎやにんにくに似た香りが出る)を使うとしています。ウェブサイト「カシミリル」の創業者カウナイン・カイサル・ワニが書いたカシミール料理の用語集も、パンディットの料理は玉ねぎとにんにくを使わないとしています。『De Leij』のチョク・ワングンの材料にも、玉ねぎとにんにくは入っていません。
煮方
『De Leij』のレシピは、揚げたなすを煮汁に戻して15〜20分、煮汁にとろみがつくまで煮るとしていて、ふたについては書いていません。マーイェーカーのアンジャナー・チャトゥルヴェーディーのレシピは、なすを煮汁に入れたらふたをして5分ほど煮ます。この記事では、マーイェーカーにならってふたをして5分煮てから、ふたを外し、『De Leij』のように煮汁にとろみがつくまで煮ます。
この記事の作り方
配合は『De Leij』のレシピを土台にしています。マスタードオイルでなすを揚げ、その油を少し冷ましてからクミンとクローブとヒングを入れ、水で溶いた唐辛子とターメリックを炒めて、タマリンドと砂糖、乾燥しょうがとフェンネルで煮る流れです。この記事では、ヒングをマーイェーカーにならって水に溶き、唐辛子と一緒に加えます。
『De Leij』は、マスタードオイル1カップでなすを揚げ、その油でスパイスを炒めます。揚げた油をどれだけ煮汁に使うかは書かれていません。この記事では、同じ1カップ(240ml)の油を直径20cm前後の鍋に入れて揚げ焼きにし、煮汁には大さじ3(45ml)を残します。
『De Leij』は、なす500gにタマリンド100gを使います。種ごとの重さかどうかは書かれておらず、戻したあとで殻のかけらや種、筋を取り除くとしています。マーイェーカーは濃いタマリンドの汁大さじ2、ロミー・ギルはタマリンドペースト大さじ3です。この記事では、ほかの2つのレシピの量も見て、種なしのタマリンド40gにしました。『De Leij』より酸味を控えめにする、この記事の判断です。フェンネルは、『De Leij』の小さじ1/2とマーイェーカーの小さじ2の間の小さじ1と1/2、乾燥しょうがは、マーイェーカーとロミー・ギルと同じ小さじ1にしています。
チョク・ワングンのレシピ:材料(4人分)
下ごしらえ 20分(タマリンドを戻す時間を含む) 加熱 45分
- カシュミーリー・チリ5g
- フェンネル3g
- ドライジンジャー2g
- ターメリック1.5g
- クミン1g
- ガラム・マサーラー1g
- ヒング0.3g
- クローブ0.2g
合わせ水
煮汁
道具
- 厚手の鍋(ふたつき・直径20cm前後で深さ8cm以上)
- 網じゃくし
- 網つきのバット(なければキッチンペーパーを敷いたバット)
- 耐熱の容器(揚げたあとの油を移す。金属製のオイルポットなど、熱い油に耐えるもの)
作り方
タマリンドを戻す
タマリンド40gを小さくちぎってボウルに入れ、湯(タマリンド用)150mlを注いで15分おく。指でよくもみほぐし、目の細かいざるでこして、果肉をしぼり出す。ざるに残った筋は捨てる。これをタマリンド水とする。
なすを切る
なす500gは、へたを付けたまま、がくのひらひらした部分だけを切り落とす。へたごと縦4つ割りにする(中なす6本なら24切れ)。洗って、キッチンペーパーで水気をしっかりふく。水気が残っていると、揚げるときに油がはねる。
合わせ水を作る
小さな器にヒング0.3g、カシュミーリー・チリパウダー5g、ターメリックパウダー1.5gを入れ、水(合わせ水用)30mlで溶く。
なすを揚げ焼きにする
換気扇を回す。厚手の鍋にマスタードオイル220g(240ml)を入れて中火で熱する。乾いた菜箸の先を鍋底に当て、細かい泡がすぐに勢いよく上がってくれば170〜180℃の目安。煙が出たら火を弱める。なすの1/3量(8切れ)を、油面の近くから静かに入れる。油がはねるので、鍋から顔を離す。網じゃくしでときどき返しながら4〜6分、全体がきつね色になるまで揚げ焼きにする。網つきのバットに、重ねずに並べて油を切る。残りも同じように2回に分けて揚げる。揚げている間は鍋のそばを離れず、水やぬれた布巾を鍋の近くに置かない。万一火が出たら、水はかけずに、火を止めて鍋にふたをかぶせる。
鍋の油を減らす
火を止める。鍋の油をおたまで静かにすくって耐熱の容器に移し、鍋に45ml(大さじ3)を残す。残りが45mlより少なければ、そのまま使う。移した油は熱いので、冷めるまで容器を動かさない。
ホールスパイスと合わせ水を炒める
鍋をコンロからおろして1〜2分おき、油の温度を下げる。クミン1gとクローブ2粒を入れ、10秒ほどして泡が落ち着いたら、合わせ水を鍋の縁から静かに加える。水が入ると油がはねるので、顔を近づけない。鍋を中火に戻し、混ぜながら2〜3分、水分がとんで油が赤く色づき、鍋肌に分かれてくるまで炒める。
煮汁を作る
タマリンド水、水(煮汁用)200ml、砂糖3g、塩6g、ドライジンジャーパウダー2g、フェンネルパウダー3gを加えて混ぜ、中火で煮立てる。
ふたをして弱火で煮る
揚げたなすを、なるべく重ならないように並べ入れ、煮汁をスプーンでかける。ふたをして、ごく弱火で5分煮る。途中で1回、鍋を揺すって煮汁を全体に回す。なすはくずれやすいので、へらでかき混ぜない。
煮詰めて仕上げる
ふたを外して中火にし、8〜10分、煮汁にとろみがついて表面に赤い油が浮くまで煮る。ガラム・マサーラー1gを振り入れ、鍋を揺すってなじませ、火を止める。
炊いたご飯と一緒に食べます。マーイェーカーは、パラーター(層にして焼いた平たいパン)やプーリー(揚げたパン)も挙げています。
料理科学:なすを先に揚げる理由
揚げると水分が抜けて、焼き色がつく
熱い油に入れると、なすの表面の水分が水蒸気になって抜けていき、表面が色づいて香ばしくなります。手順4で、全体がきつね色になるまで揚げるのは、なすの表面の水分を飛ばして、揚げた香りをつけるためです。
なすは油をよく吸います。チョク・ワングンでは、なすが吸った油も、鍋に残った油も、そのまま料理のこくになります。
揚げたなすをくずさずに煮る
揚げたなすは柔らかく、煮るとくずれやすくなります。手順8ではふたをしてごく弱火にし、煮汁が大きく煮立って、なすが動かないようにします。へらでかき混ぜずに、鍋を揺すって煮汁を回します。『De Leij』は、なすをへたごと縦に切ります。へたが付いていると、煮ている間に切り身がばらけにくくなると考えられます。
料理科学:唐辛子を水で溶いて油に入れる理由
手順9で表面に浮く油が赤いのは、唐辛子の色が油に移っているからです。
手順6では、唐辛子とターメリックの粉をそのまま熱い油に入れず、水で溶いてから加えます。水が残っている間、鍋の中はおおむね100℃前後に保たれるので、粉が焦げずにすみます。水分が蒸発していくにつれて、唐辛子の色が油に移り、油が赤く色づいてきます。
その前に、なすを揚げた油をコンロからおろして1〜2分おくのは、『De Leij』の方法です。揚げた直後の油は熱く、そのままホールスパイスやヒングを入れると焦げやすいからです。水分を含む合わせ水を入れたときの油はねも、少し温度が下がっていれば穏やかになります。
ほかの作り方とカシミールのなす料理
- 玉ねぎとトマトを入れる作り方:インドのレシピサイト「アルチャナズ・キッチン」のチョク・ワングン(ニティヤー・アナンタムのレシピ)は、揚げた玉ねぎのペーストとトマトを加え、クミンとカルダモン、シナモンも使います。
- ヨーグルトと仕上げのスパイスを足す作り方:ロミー・ギルのレシピは、唐辛子と一緒にヨーグルト小さじ2を炒め、仕上げにクミンの粉、ブラックカルダモンの種、シナモンの粉を混ぜます。なすはひまわり油で揚げ、スパイスを炒める油にはマスタードオイル(または菜種油)を使います。
- トマトで煮るなす:アルチャナズ・キッチンのヒンディー語のレシピ「タムテル・ワンガン」は、玉ねぎもにんにくも使わないカシミールの料理として、炒めたなすをトマトと乾燥しょうがで煮ます。
- ヨーグルトで煮るなす:同じサイトのヒンディー語のレシピ「カシュミーリー・ダヒー・バインガン」は、マスタードオイルとヒングとカルダモンで炒めたなすを、フェンネルの粉と乾燥しょうがの粉を加えたヨーグルトで煮ます。
- 青菜と煮るなす:『De Leij』は、カシミールの青菜ハーク(コラードやケールの仲間)を煮るときに、揚げたなすを加える作り方も載せています。
- 干したなすや大根で:『De Leij』によると、生のなすがないときは、干したなす(ヴァンガン・ハチ)でも作ります。同じ作り方で大根を煮たものは「チョーキ・ムジ」と呼ぶそうです。
手に入りにくい材料の代用
- マスタードオイル:からし菜の種からしぼった油で、ツンとした辛みのある香りがあります。サラダ油で代用できます。香りは穏やかになります。
- タマリンド:タマリンドペースト(濃縮したもの)を使うときは、大さじ1を湯(タマリンド用)150mlに溶き、手順1のこす作業は省きます。製品によって酸味の強さが違うので、手順7で煮汁の味を見て加減します。
- ヒング:省いても作れます。パンディットの料理らしい香りがひとつ欠けます。
- カシュミーリー・チリパウダー:色が濃く、辛さは穏やかな唐辛子の粉です。パプリカパウダーを同じ量使い、辛みを足したいときは一味唐辛子を小さじ1/4まで加えます。
- フェンネルパウダー:フェンネルシード3g(小さじ1と1/2)を、すり鉢やミルで粉にして使います。
- なす:『De Leij』は、細長い品種のなすがよいとしています。日本の長なすなら1本を縦4〜8つ割りに、米なすなら1個を縦8つ割りにします。どちらも、へたを付けたまま切ります。
保存
- 冷蔵:保存容器に入れて2日。鍋に入れ、弱火でふたをして温め直します
- 冷凍:なすの食感が変わるので向きません
北インドのほかのレシピ
もっと知りたい人へ
出典
- ikashmir.net(S. S. Kaul Kilam, Shyam Rani Kilam『De Leij: Culinary Art of Kashmir』)「Choek Vangan」(英語)
- ikashmir.net(S. S. Kaul Kilam, Shyam Rani Kilam『De Leij: Culinary Art of Kashmir』)「Hak Ta Nadeir Ya Vangan」(英語)
- Maayeka「Chokh Vangun Recipe I Kashmiri khatte Baingan」(英語)
- Archana's Kitchen「Kashmiri Style Chokh Vangun Recipe - Baingan Masala」(英語)
- Food and Travel「Chok wangun (sour aubergines)」(英語)
- Archana's Kitchen「टामटेर वांगन रेसिपी - Tamter Wangun (Recipe In Hindi)」(ヒンディー語)
- Archana's Kitchen「कश्मीरी दही बैंगन रेसिपी - Kashmiri Dahi Baingan Recipe」(ヒンディー語)
- Kashmiril「Kashmiri Food Glossary: 50 Terms Every Foodie Should Know」(英語)
- Wikipedia「Kashmiri cuisine」(英語)
本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。