イラーイチー・チキンElaichi Chicken レシピ
الائچی چکنイラーイチー・チキン

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イラーイチー・チキンは、グリーンカルダモンの香りを主役にした鶏肉の煮込みです。玉ねぎも、しょうがも、にんにくも使いません。香りの中心はカルダモンと黒こしょうで、トマトとヨーグルトのソースで骨付きの鶏肉を煮ます。
カルダモンは2回に分けて入れます。最初はさやごと油に入れて鶏肉と一緒に炒め、最後に挽いたばかりの種の粉を振ります。玉ねぎを色づくまで炒めて甘みを出す煮込みとは違って、さわやかで少し辛い味わいに仕上がります。
イラーイチー・チキンとは
イラーイチーは、ヒンディー語とウルドゥー語でカルダモンのことです。ウルドゥー語では الائچی چکن と書き、「イラーイチー・チキン」と読みます。英語では Elaichi Chicken とつづられます。名前のとおり「カルダモンの鶏」という意味です。
今回読んだ情報源では、「イラーイチー・チキン」(Elaichi Chicken)の名前がいちばん多く使われていました。インドの料理家サンジーヴ・カプールのサイト、パキスタンのラホール生まれのファイザ・ザリーフのレシピサイト、パキスタンのウルドゥー語のポータルサイト UrduPoint の「ロースト・イラーイチー・チキン」(オーブンで焼く作り方)などです。パキスタンのテレビ局 Masala TV のサイトは、「シンディー・イラーイチー・ムルグ」の名前で載せています。シンディーは「シンドの」、ムルグは鶏という意味です。
シンド地方の料理として
シンドは、インダス川の下流に広がる地方で、いまはパキスタンの州の一つです。Masala TV のサイトのほかにも、この料理をシンドの料理として紹介している作り手がいます。
- 料理ブログ「ショーバーズ・フード・マザー」は、この料理を伝統的なシンドの料理としています。ページの題は「Fote Bhugi Chicken」で、かっこ書きで「Elaichi Chicken」と添えています。「Fote」の意味はページには書かれていませんが、英語版ウィキペディアの「シンド料理」の項は、シンド語でカルダモンを「Photo」とつづっています。
- ブログ「ニートゥー・ディーディー」を書くニートゥー・チュガーニーは、祖先の土地であるシンドの料理で、自分が子どもの頃から食べてきたものだと書いています。
2人とも、スパイスの少ない軽い料理だとしています。ニートゥー・チュガーニーは、病み上がりの人によく食べさせる料理だと書き、ショーバーは、妊娠中や出産のあと、体調を崩したときにも食べられるとしています。
英語版ウィキペディアは、1947年のインドとパキスタンの分離独立のあと、シンドのヒンドゥー教徒の多くがインドに移り住み、シンド料理はインドでも見られるとしています。今回読んだ情報源には、この料理がいつ頃から作られているのかを書いたものはありませんでした。ファイザ・ザリーフとカプールのページは、この料理をシンドと結びつけていません。
この記事の配合
Masala TV のサイトのシンディー・イラーイチー・ムルグと、ファイザ・ザリーフのイラーイチー・チキンを土台にしました。2つのレシピは、どちらも鶏肉1kgに油1/2カップを使い、玉ねぎ、しょうが、にんにくを入れません。ファイザ・ザリーフは鶏肉1kgを12〜16切れにします。この記事では、骨付きのもも肉のぶつ切りを使います。カルダモンはさやごと鶏肉と一緒に油に入れ(Masala TV はつぶしてから入れます)、黒こしょう、唐辛子の粉、コリアンダー、ターメリックで炒め、トマトとヨーグルト1カップで煮ます。仕上げにカルダモンの粉を加えるところも同じです。
ヨーグルトと一緒に水を加えるのは、Masala TV のレシピにならいました。仕上げに振る種子は、Masala TV のレシピでは英語で「black cumin seeds」、ファイザ・ザリーフのレシピではふつうのクミンシードです。Masala TV のレシピには、black cumin seeds がどの種子を指すのかは書かれていません。この記事では、これをシャーヒー・ジーラー(クミンに似た細く黒っぽい種子)と考えて使いますが、カロンジー(ニゲラシード)など、ほかの種子を指している可能性もあります。仕上げのカルダモンは、市販の粉ではなく、この記事ではホールの種をその場で挽きます。
ウルドゥー語やヒンディー語で分量まで書かれたこの料理のレシピは、今回は UrduPoint の1件しか読めませんでした。その1件も、手順で使うヨーグルトが材料欄になく、分量がわからないため、配合には使っていません。この記事の配合は、パキスタンの作り手が英語で書いた2つのレシピがもとになっています。
イラーイチー・チキンのレシピ:材料(4人分)
下ごしらえ 15分 加熱 1時間5分
- 赤唐辛子3.8g
- グリーンカルダモン3g
- コリアンダー3g
- ターメリック1.5g
- 黒こしょう1.2g
- シャーヒー・ジーラー1g
鶏肉
- 骨付き鶏もも肉(ぶつ切り)1kg
スパイス・塩・青唐辛子
トマトとヨーグルトのソース
- 完熟トマト300g(中2個)
- プレーンヨーグルト250g
- 水200ml
仕上げ
作り方
下ごしらえをする
骨付き鶏もも肉1kgをキッチンペーパーでふき、水気をよく取る。生の鶏肉をさわった手とまな板は、すぐに洗剤で洗う。完熟トマト300gはみじん切りにする。青唐辛子4本は小口切りにする。ボウルにプレーンヨーグルト250gと水200mlを入れ、泡立て器でなめらかになるまで混ぜ、室温においておく。パクチー10gは茎ごと刻む。
カルダモンを用意する
炒める用のグリーンカルダモン7粒は、すりこぎで軽くたたき、さやに割れ目を入れる。仕上げ用のグリーンカルダモン8粒は、さやを割って種を取り出し、すり鉢で粉にする。さやは使わない。
カルダモンと鶏肉を油に入れる
厚手の鍋にサラダ油108gを中火で熱し、炒める用のカルダモン7粒を入れる。10秒ほどして香りが立ったら、すぐに鶏肉を加える。熱い油に水分のある鶏肉が入るので、油はねに気をつけ、顔を離して入れる。強めの中火で3分、上下を返しながら表面の色が変わるまで炒める。
スパイスと塩を加えて炒める
中火にし、黒こしょう1.2g、レッドチリパウダー3.75g、コリアンダーパウダー3g、ターメリックパウダー1.5g、塩11g、青唐辛子4本を加える。ときどき鍋底から混ぜながら10分炒める。鍋底のスパイスが焦げそうなら、弱めの中火にする。
トマトを炒める
完熟トマト300gを加え、中火でときどき混ぜながら10分、トマトが崩れて鍋の縁に油がにじむまで炒める。
ヨーグルトを加えて煮る
弱火にし、1で混ぜたプレーンヨーグルト250gと水200mlを、大さじ3杯分ずつ加えては混ぜる。全部入れたら弱めの中火にし、ふつふつと煮立ったらふたをして25分煮る。途中で2〜3回、鍋底から混ぜる。
煮詰める
ふたを取り、中火でときどき混ぜながら5分、ソースにとろみがつき、表面に油が浮いてくるまで煮詰める。
鶏肉の火の通りを確かめる
いちばん大きい1切れを取り出し、骨の近くのいちばん厚いところに温度計を刺す(先を骨に当てない)。75℃以上あればよい。温度計がないときは、骨まで切り込みを入れ、身に生の透明感がなく、出てくる汁が透明なことを確かめる。色だけでは確実に判断できないので、迷ったら3分煮足す。足りなければ鍋に戻し、ふたをして弱めの中火で3分ずつ煮て、そのつど確かめる。
仕上げる
弱火にし、仕上げ用のカルダモンの粉とシャーヒー・ジーラー1gを全体に振り、ふたをして2分温める。火を止め、刻んだパクチー10gを散らす。
ナーンやローティー(全粒粉の薄焼きパン)、またはご飯と一緒に食べます。ホールのカルダモンのさやは、食べるときによけます。
料理科学:カルダモンを2回に分けて入れる理由
香りは、挽くと失われやすい
スパイスの香りは、挽いて粉にすると抜けやすくなります。
この記事で、仕上げのカルダモンを手順2で挽き、手順9で振るのはこのためです。挽いてから鍋に入れるまでの時間を短くし、ふたをして2分だけ温めて、長くは煮ません。
最初のカルダモンは下地、仕上げのカルダモンは直前の香り
手順3で、カルダモンを最初から鶏肉と一緒に油で炒めるのは、2つの土台のレシピの作り方です。このあと50分ほど炒めたり煮たりするので、揮発しやすい香りの成分は、そのあいだに一部が失われていくと考えられます。この記事では、最初のカルダモンを料理全体の下地の香り、仕上げのカルダモンを食べる直前に足す香りと考えて、2回に分けて入れます。
料理科学:ヨーグルトと骨付きの鶏肉
ヨーグルトは溶きのばしてから少しずつ入れる
ヨーグルトは、強く加熱すると分離して、ソースがざらつきやすくなります。
この記事で、手順1でヨーグルトを水と一緒になめらかに混ぜて室温においておき、手順6で弱火にしてから少しずつ加えるのは、熱いトマトのソースにヨーグルトを一度に入れて、急に温度を上げないためです。全部入れてからも、強く煮立てずに、ふつふつとする程度の火加減で煮ます。
骨付きの肉は、骨のそばで測る
アメリカ農務省(USDA)の食品安全検査局は、鶏肉はどの部分も、食品用の温度計で測って74℃(165°F)以上にすることを、安全な最低の中心温度としています。この記事では余裕をみて、75℃以上を目安にします。
USDA は同じページで、鶏の温度は、もも肉や手羽のいちばん内側と、胸肉のいちばん厚いところで確かめるとしています。この記事では、手順8で、いちばん大きい1切れの、骨の近くのいちばん厚いところを測ります。温度計の先が骨に当たると、肉そのものの温度が測れないので、骨には当てません。
切って確かめるときは、骨のまわりの身の色に注意します。USDA は同じページで、生後6〜8週の若い鶏では、骨とそのまわりの肉が暗い色になることがあると書いています。骨が固まりきっていないため、骨髄の色素がしみ出すもので、冷凍もこの原因になるとしています。見た目だけの問題で、安全には関係ないそうです。迷うときは、温度計で測るのがいちばん確かです。
作り手による違い
今回読んだ情報源だけでも、作り方には次のような違いがありました。
- トマトもヨーグルトも使わない、薄いスープの作り方:ショーバーのレシピは、つぶしたカルダモンを油で熱して鶏肉を炒め、ターメリックとガラム・マサーラー、塩を加えて、水でさらさらのスープに煮ます。最後に水で溶いた小麦粉でとろみをつけ、挽いた黒こしょうを振ります。ライムを搾ってもよい、としています。
- しょうがとトマトの作り方:ニートゥー・チュガーニーのレシピは、骨なしのもも肉を使います。おろしたしょうがを油で炒めてから鶏肉とトマトを炒め、カルダモンの粉と黒こしょうを加えて、水で軽く煮ます。カレーリーフは、もとのレシピにはなく、自分で足しているものだと書いています。
- 汁気のない作り方:サンジーヴ・カプールのサイトの「イラーイチー・チキン」は、骨なしの鶏むね肉で作る、汁気のない料理として紹介されています。ページにあるのは動画と短い説明だけで、分量は書かれていません。
- オーブンで焼く作り方:UrduPoint のウルドゥー語の「ロースト・イラーイチー・チキン」は、切り込みを入れた鶏肉を、ヨーグルトと酢、青唐辛子、黒こしょう、塩で4時間漬けてから、カルダモンを炒めたギーと一緒にオーブンで焼きます。ヨーグルトは手順にだけ出てきて、材料欄にはありません。
手に入りにくい材料の代用
- グリーンカルダモン(ホール):ホールが手に入らなければ、手順3のカルダモンは省き、手順9でカルダモンパウダー1.5g(小さじ3/4)を振ります。香りは弱くなります。
- シャーヒー・ジーラー:ファイザ・ザリーフのレシピのように、クミンシード1g(小さじ1/2)で代用できます。香りは少し変わります。
- レッドチリパウダー:一味唐辛子を同じ量使えます。
- 青唐辛子:ししとう4本で代用できます。辛みはほとんどなくなります。
保存
- 冷蔵:保存容器に入れて2日。温め直すときは、弱めの中火で混ぜながら、ふつふつと煮立つまで温めます。強く煮立てると、ヨーグルトのソースが分離しやすくなります
- 冷凍:手順8まで終えて冷まし、1か月。解凍して温め直してから、手順9を行います
パキスタンのほかのレシピ
もっと知りたい人へ
出典
- Masala TV「Sindhi Elaichi Murgh Recipe」(英語)
- Cook With Faiza「ELAICHI CHICKEN RECIPE」(英語)
- Shobha's Food Mazaa「FOTE BHUGI CHICKEN ( Elaichi Chicken)」(英語)
- Nitu Didi「CARDAMOM (ELAICHI) CHICKEN」(英語)
- Sanjeev Kapoor「Elaichi Chicken」(英語)
- UrduPoint「Roast Elaichi Chicken (Roast Cardamom Chicken) Recipe In Urdu - Recipe No. 1524」(ウルドゥー語)
- Wikipedia「Sindhi cuisine」(英語)
- USDA Food Safety and Inspection Service「The Color of Meat and Poultry」(英語)
本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。