トップ / 北インド

カチュンバルKachumber レシピ

कचुम्बरカチュンバル

地域
北インド(インド、パキスタン)
分量
4人分
公開
ステンレスの皿に盛ったカチュンバル。角切りのきゅうりとトマト、玉ねぎに輪切りの青唐辛子とパクチーが混ざってスパイスが振られ、くし形のレモンを添えている。奥にダールとご飯の皿

この記事はAmazonアソシエイト・楽天アフィリエイトのリンクを含みます。

カチュンバルは、玉ねぎ・トマト・きゅうりを刻んで、レモン汁と塩で和えたインドのサラダです。油を使わず、野菜には火を通しません。カレーやダール(豆の煮込み)の横に添えて、口の中をさっぱりさせる役目をします。

材料は少なく、手順は刻んで和えるだけです。そのぶん、塩を入れるタイミングで仕上がりが変わります。塩を早く入れると野菜から水が出て、水っぽいサラダになります。インドのレシピサイト「ヘッバールズ・キッチン」と料理家スワスティ・シュリーカーントのレシピは、塩とレモン汁を食べる直前に加えるよう書いています。

カチュンバルとは

料理名はヒンディー語で「कचुम्बर」(カチュンバル)と書きます。英語では kachumber や cachumber とつづられます。ヘッバールズ・キッチンは、きゅうり・玉ねぎ・トマトを主な材料にしたインドのサラダとして紹介しています。

名前について

ヒンディー語の百科事典サイト「バーラトコーシュ」は、シャームスンダル・ダース編の辞書『ヒンディー・シャブダサーガル』の記述として、つづりの近い語 kachūmar(カチューマル)を載せています。この辞書は、kachūmar の由来を動詞 kuchalnā(クチャルナー、つぶす)とし、意味として、つぶして作った漬物、つぶしたもの、ブルタ(つぶして作る料理)を挙げています。

同じ項目には kachūmar karnā/kachūmar nikālnā(カチューマル・カルナー/ニカールナー)という言い回しも載っていて、粉々になるまでたたく、使いすぎてだめにする、ひどく打ちのめす、といった意味が挙げられています。この項目にサラダの意味は書かれていません。料理名のカチュンバルがこの語と同じ語なのかどうかは、読んだ情報源には書かれていませんでした。

インドとパキスタンの食卓のサラダ

英語版ウィキペディアは、カチュンバルを南アジアのサラダとし、インド・パキスタン・バングラデシュを発祥の地に挙げています。南インドのコーサンバリや北東インドのシンジュを、近いサラダとして挙げています。きゅうりのラーイター(ヨーグルトの和え物)をカチュンバルと呼ぶこともある、とも書いています。

インドのレシピブログ「サフラン・トレイル」のナンディター・アイヤルは、カチュンバルという言葉は、数種類の生野菜を細かく切ったインドのサラダ全般を指すことがある、と書いています。実際、読んだレシピでは、にんじんやキャベツ(ヘッバールズ・キッチン)、ざくろの実(アルチャナズ・キッチン)を加えるものもありました。この記事では、玉ねぎ・トマト・きゅうりの3つだけで作ります。

カチュンバルのレシピ:材料(4人分)

下ごしらえ 15分 加熱 2分(クミンを煎る)

スパイスの配合 4人分で計3.2g
  • チャート・マサーラー1.5g
  • クミン1.2g
  • 黒こしょう0.5g

野菜

  • きゅうり2本(200g)
  • トマト中1個(150g)
  • 玉ねぎ1/3個(70g)
  • 青唐辛子(生のもの)1本(3g)
  • パクチー(コリアンダーの葉)5g(大さじ2)

味つけ(食べる直前)

  • クミン(ホール)(Amazon|楽天)1.2g(小さじ1/2)
  • 塩3g(小さじ1/2)
  • チャート・マサーラー(Amazon|楽天)1.5g(小さじ1/2)
  • 黒こしょう(粗挽き)(Amazon|楽天)0.5g(小さじ1/4弱)
  • レモン汁15ml(大さじ1)

道具

  • 小さなフライパン
  • すり鉢とすりこぎ(厚手のポリ袋とめん棒でもよい)
  • キッチンペーパー

作り方

  1. クミンを煎って粉にする

    換気扇を回す。小さなフライパンにクミン1.2gを入れ、弱めの中火で1〜2分、ゆすりながらから煎りする。色がひと回り濃くなり、香ばしい香りが立てばよい。煙が出る前に火から下ろし、すぐに皿に移して冷ます。すり鉢で粉にする。

  2. 野菜の水気をふく

    きゅうり、トマト、青唐辛子、パクチーを洗い、キッチンペーパーで表面の水気をしっかりふき取る。表面に水が残っていると、サラダが水っぽくなる。

  3. 野菜を刻む

    きゅうり200gは両端を落として皮をむき、7〜8mm角に切る。トマト150gはへたを取り、7〜8mm角に切る。玉ねぎ70gは5mm角に刻む。青唐辛子1本は細かく刻み、切ったあとは手を洗う。パクチー5gは細かく刻む。すりおろしたり、つぶれるほど細かく刻んだりはしない。

  4. 冷やしておく

    刻んだ野菜とパクチーをボウルに入れて混ぜる。塩とレモン汁はまだ加えない。ラップをかけ、食べるまで冷蔵庫に入れておく。

  5. 食べる直前に味をつける

    食べる直前に、塩3g、チャート・マサーラー1.5g、黒こしょう0.5g、レモン汁15mlを加えてさっくり混ぜる。器に盛り、手順1のクミンを振る。味をつけたら時間をおかずに食べる。

ダールとごはん、ローティー(全粒粉の薄焼きパン)とカレー、プラオ(炊き込みごはん)など、インドの食事に添えて食べます。

料理科学:塩を食べる直前に入れる理由

塩で野菜から水が出るしくみ

きゅうりやトマトは、ほとんどが水です。刻んだ野菜に塩を振ると、浸透の働きで、野菜の中の水が外へ出てきます。

水は一度に出きるわけではなく、時間がたつほどボウルの底に汁がたまっていきます。ダサナー・アミットのレシピも、塩をしてから数時間おくと、野菜の汁が出て水っぽくなると書いています。そこで手順では、野菜を刻んで冷やしておき、塩とレモン汁は食べる直前に加えます。

細かく刻みすぎない理由

包丁で切ると、切り口の細胞が壊れて汁が出ます。切る回数が多いほど切り口の面積が増え、塩が触れる面も広くなるので、水が出やすくなります。ヘッバールズ・キッチンの英語のレシピは、野菜を細かく刻みすぎたりすりおろしたりせず、ざっくり角切りにするよう書いています。すりおろすと野菜から水が出て、サラダがぐちゃぐちゃになるからです。手順でトマトときゅうりを7〜8mm角にするのはそのためです。

洗った野菜の水気をふき取るのも、同じ理由です。スワスティ・シュリーカーントのレシピは、野菜を切る前に水気を完全にふき取るよう、念を押しています。

料理科学:クミンを煎ってから使う理由

スワスティ、ダサナー、アルチャナズ・キッチンのレシピは、から煎りしてから粉にした「ローストしたクミンパウダー」を振ります。ヘッバールズ・キッチンのヒンディー語のレシピはクミンを入れず、チャート・マサーラー(酸味と塩気のあるミックススパイス)を使っています。この記事では両方を使います。

クミンを乾いた鍋で煎ると、色づいて香ばしい香りが立ちます。煎りすぎると苦みが出るので、色がひと回り濃くなったところで火から下ろし、すぐに皿に移して余熱で焦げるのを防ぎます。

カチュンバルは野菜に火を通さない料理です。煎ったクミンを最後に振ると、生野菜の味に香ばしさが加わります。

地域による違い

パールスィーのカチュンバル

パールスィー(パーシー)は、インドのゾロアスター教徒のコミュニティです。ナンディター・アイヤルと、パールスィー料理のサイト「パールスィー・キュイジーン」は、どちらもカチュンバルを、ダーンシャークに添えるものとして紹介しています。ダーンシャークについて、ナンディター・アイヤルは、豆(dhan)と野菜(sakh)を合わせて作るパールスィーの料理と説明しています。

ナンディター・アイヤルは、パールスィーのカチュンバルを、きゅうり・玉ねぎ・トマトを酢と塩で和え、2時間以上寝かせてから出すサラダとして紹介しています。酢と寝かせる時間が、ふつうのカチュンバルとの違いだと書いています。玉ねぎが多めで、トマトは種を除いて使います。リター・ジャムシェード・カパーディヤーのサイトであるパールスィー・キュイジーンのレシピでは、ごく薄く切った玉ねぎを手でもみほぐし、塩か酢を混ぜてから、トマトやきゅうりを加えています。

寝かせるあいだに、浸透で野菜から出てきた汁が酢と混ざり、漬け汁になります。トマトの種のまわりのゼリー状の部分は水分が多いので、種を除くと汁が出すぎるのを抑えられます。

作るときは、野菜を玉ねぎ120g(中2/3個)、きゅうり1本(100g)、トマト中1個(150g)にして、玉ねぎをいちばん多くします。トマトは横半分に切って種を除いてから刻みます。青唐辛子とパクチーはこの記事の分量のままです。手順5で、レモン汁・チャート・マサーラー・クミンの代わりに、りんご酢30ml(大さじ2)、塩3g(小さじ1/2)、黒こしょう0.5g(小さじ1/4弱)を加えて混ぜます。ラップをかけ、冷蔵庫で2時間以上おきます。

東アフリカのカチュンバリ

英語版ウィキペディアは、ケニアやタンザニアなどアフリカ大湖地域で食べられる、生のトマトと玉ねぎのサラダとして、カチュンバリ(kachumbari)を紹介しています。英語版ウィキペディアのカチュンバルの項目は、カチュンバリを、似ているが別の料理として挙げています。カチュンバリの項目は、スワヒリ語のカチュンバリはインドの言葉 cachumber から来たとしていますが、この記述に出典は示されていません。

ケニアの新聞「ザ・スタンダード」などを出すメディア企業、スタンダード・グループの女性向けサイト「EVE Woman」のレシピ(ロリータ・ブンデ)では、トマトと玉ねぎ、青唐辛子、パクチーを刻んで塩を混ぜ、レモン汁か白い酢を加えます。きゅうりやにんじんは加えても加えなくてもよい、という扱いです。ピラウ(炊き込みごはん)や、湖のそばで食べる魚料理に添えると書いています。英語版ウィキペディアは、ケニアではニャマ・チョマ(焼いた肉)とウガリ(とうもろこしの粉を練った主食)に添えるとし、アボカドを加える作り方も挙げています。

手に入りにくい材料の代用

  • 青唐辛子:手に入らないときは、手順5で一味唐辛子0.3g(小さじ1/8)を振ります。スワスティとダサナーのレシピも、赤唐辛子の粉を使っています。
  • チャート・マサーラー:入れないときは、塩を3.5g(小さじ1/2強)にします。
  • パクチー(コリアンダーの葉):手に入らないときは、ミントの葉5gを刻んで使います。ヘッバールズ・キッチンとダサナーのレシピは、ミントも加えています。
  • レモン汁:ライムの果汁を同じ量使えます。

保存

  • 味をつける前(手順4まで):冷蔵庫で数時間。早めに刻んでおくときは、ダサナーのレシピにならって、玉ねぎとパクチーだけは食べる直前に刻みます
  • 味をつけたあと:水が出るので、その日のうちに食べきります。パールスィー式の酢で寝かせたものも、冷蔵庫に入れてその日のうちに食べます

北インドのほかのレシピ

もっと知りたい人へ

  • ハロルド・マギー『マギー キッチンサイエンス』食材と加熱の仕組みを広く扱う、料理科学の定番Amazonで見る楽天で見る

出典

本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。