トップ / タイ

ゲーン・マッサマン・ガイ日本では「マッサマンカレー」ともKaeng Massaman Gai レシピ

แกงมัสมั่นไก่ゲーン・マッサマン・ガイ

地域
タイ(バンコク)
分量
4人分
公開
鶏の絵の器に盛ったゲーン・マッサマン・ガイ。手羽元とじゃがいも、玉ねぎ、ピーナッツ、シナモンと八角が見える。奥にジャスミンライス

この記事はAmazonアソシエイト・楽天アフィリエイトのリンクを含みます。

ゲーン・マッサマン・ガイは、乾燥スパイスをたっぷり使ったタイの鶏のカレーです。ココナッツミルクのコクに、クミンやシナモン、カルダモンの香りが重なり、パームシュガーの甘み、タマリンドの酸味、ナンプラーの塩けで味を整えます。辛さは穏やかで、タイのカレーの中では、インドのカレーに近い香りをもつ一皿です。

カレーペーストは市販品を使わず、乾燥唐辛子と焼いた香味野菜、煎ったスパイスを石臼でついて作ります。そのペーストを、煮詰めて油を出したココナッツクリームで炒めてから、骨つきの鶏肉とじゃがいもを煮込みます。

ゲーン・マッサマン・ガイとは

タイ語では「แกงมัสมั่นไก่」と書きます。ゲーンは汁けのあるカレーや煮込み、ガイは鶏のことです。手順が多く手間がかかることから、「ゲーン・クルー(先生のカレー)」と呼ばれることもあります。

名前の由来

マッサマンの語源は、ペルシャ語で「ムスリム(イスラム教徒)」を意味する「ムサルマーン」が変化したものだとする説が広く知られています。タイ語版ウィキペディアはこの説を「推定」として紹介しています。タイの公共放送の記事は、ペルシャ語から来た名前だと書いています。タイのムスリムはこの料理を「サーラマン」と呼びます。

宮廷の詩に歌われたカレー

マッサマンは、ラーマ2世が作ったとされる詩「カープ・ヘー・チョム・クルアン・カーオ・ワーン」(料理と菓子をたたえる詩)で、料理の最初に登場します。詩の内容をおおまかに訳すと、次のとおりです。

マッサマンは愛しい人のカレー。クミンが香り、味は熱く力強い。このカレーを口にした男は、恋しさのあまり夢にまで見る。

この詩は、ラーマ2世が王位につく前の18世紀末に、のちに王妃となる女性の料理をたたえて作ったものと伝えられています。19世紀末に書き残されたタイのレシピには、すでにマッサマンが登場します。そこでは、酸味にソムサー(ビターオレンジの一種)の汁を使っていたと伝えられています。

伝来の諸説

マッサマンがどこからタイに伝わったのかは、記録で確かめられていません。主な説は次のとおりです。

  • アユタヤ王朝のペルシャ人説:アユタヤ王朝の宮廷に仕えたペルシャ系の人々が伝えたとする説です。タイの記者・研究者サンティ・サウェートウィモンらは、ペルシャのクム出身の商人シェイク・アフマド(1602年ごろアユタヤに来たとされ、タイの名門ブンナーク家の祖とされる人物)と結びつけています。
  • ナーラーイ王の時代説:17世紀後半のナーラーイ王の時代から、外国の食文化がタイの料理に混ざり合い、その中で食べられるようになったとする説で、タイの公共放送の記事が紹介しています。
  • マレー経由説:タイ語版ウィキペディアは、マレー料理の影響を受けたカレーだとしています。同じタイの公共放送の記事は、もとはインドのムガル朝の宮廷料理だと書き、タイに入る前にマレー料理の影響を受けたと推定しています。

どの説も、イスラム圏とのつながりを指している点は共通しています。タイの家庭では、それにタイのカレーの土台であるレモングラスやガランガル、カピを合わせ、甘み・酸味・塩けのはっきりした味に仕上げてきました。

ゲーン・マッサマン・ガイのレシピ:材料(4人分)

下ごしらえ 1時間(カレーペーストを作る時間を含む) 加熱 1時間15分

スパイスの配合 4人分で計16.5g
  • 赤唐辛子6g
  • コリアンダー3g
  • シナモン2g
  • 白こしょう1.5g
  • グリーンカルダモン1.1g
  • クミン1g
  • スターアニス0.7g
  • メース0.5g
  • ローリエ0.4g
  • クローブ0.3g

カレーペースト

  • 乾燥唐辛子(タイの大きくて辛さの穏やかなもの)(Amazon|楽天)6g(8本)
  • ぬるま湯(唐辛子をもどす)200ml
  • エシャロット(タイのホームデーン(赤いエシャロット))(Amazon)50g
  • にんにく25g(5片)
  • レモングラス(根元の白い部分)(Amazon|楽天)15g(2本分)
  • ガランガル(Amazon|楽天)10g
  • こぶみかんの皮(タイのマクルート(こぶみかん)の実の表面の緑の部分)2g(小さじ1)
  • パクチーの根(根つきのパクチーから切り取る)3g(2〜3株分)
  • カピ(タイのえびの発酵ペースト)(Amazon|楽天)5g(小さじ1)
  • 塩2g(小さじ1/3)

カレーペーストのスパイス

  • コリアンダー(ホール)(Amazon|楽天)3g(小さじ1と1/2)
  • クミン(ホール)(Amazon|楽天)1g(小さじ1/2)
  • 白こしょう(ホール)(Amazon|楽天)1.5g(小さじ1/2)
  • クローブ(ホール)(Amazon|楽天)4本(0.3g)
  • メース(ホール)(Amazon|楽天)0.5g(小さな1片)
  • グリーンカルダモンの種(さやを割って中の種だけを使う)(Amazon|楽天)4粒分(0.5g)

煮込みのホールスパイス

  • シナモン(ホール)(Amazon|楽天)1本(5cm・2g)
  • スターアニス(ホール)(八角)(Amazon|楽天)1個(0.7g)
  • グリーンカルダモン(ホール)(Amazon|楽天)3粒(0.6g)
  • ローリエ(Amazon|楽天)2枚(0.4g)

カレー

  • 鶏手羽元(骨つき鶏もも肉のぶつ切りでもよい)800g
  • ココナッツクリーム(ココナッツミルク缶の上に固まった濃い部分)200ml
  • ココナッツミルク(Amazon|楽天)600ml
  • 水200ml
  • ピーナッツ(無塩・ロースト)40g
  • じゃがいも(メークインなど煮くずれしにくいもの)300g(中2個)
  • 玉ねぎ(小玉ねぎでもよい)200g(中1個)
  • タマリンド(ブロック)(Amazon|楽天)20g
  • 湯(タマリンドをもどす)60ml
  • パームシュガー(Amazon|楽天)30g
  • ナンプラー(Amazon|楽天)45ml(大さじ3)
  • 塩6g(小さじ1)

道具

  • 石臼(タイのクロック。すり鉢やミキサーでもよい)(楽天)
  • スパイスミル(石臼でもよい)(Amazon|楽天)
  • 厚手の鍋

作り方

  1. 唐辛子をもどす

    乾燥唐辛子6gはヘタを切り落とし、縦に切り目を入れて種を出す(種は硬くて潰れにくいため)。ぬるま湯200mlに15分浸してやわらかくし、水けを絞って1cm幅に切る。

  2. 香味野菜を焼く

    エシャロット50gとにんにく25gは、皮つきのまま丸ごと使う。レモングラス15gは薄い小口切り、ガランガル10gは薄切りにする。油をひかないフライパンを弱めの中火にかけ、エシャロットとにんにくを並べて、ときどき返しながら5〜6分焼く。レモングラスとガランガルを加え、さらに3〜4分、ときどき返しながら、表面のところどころに焼き色がつくまで焼いて取り出す。エシャロットとにんにくは、粗熱が取れたら皮をむく。カピ5gはアルミホイルで平たく包み、同じフライパンで両面を1〜2分ずつ焼く。こぶみかんの皮2gは細かく刻み、パクチーの根3gはよく洗って細かく刻む。この2つは焼かずに使う。

  3. スパイスを煎る

    フライパンをふいて弱火にかけ、コリアンダー3g、クミン1g、白こしょう1.5g、クローブ4本、メース0.5g、グリーンカルダモンの種0.5g(4粒分)を入れ、フライパンをゆすりながら2〜3分煎る。香りが立ち、コリアンダーがうっすら色づいたらすぐ皿に移し、冷めたらスパイスミルで粉にする。続けてシナモン1本、スターアニス1個、グリーンカルダモン(ホール)3粒、ローリエ2枚を1〜2分煎り、煮込み用に取り分ける。

  4. カレーペーストを作る

    石臼に塩2gと唐辛子を入れ、細かくなるまでつく。レモングラス、ガランガル、こぶみかんの皮、パクチーの根を加えてつき、エシャロットとにんにくを加えてなめらかになるまでつく。最後にカピと粉にしたスパイスを加え、全体が均一になるまでつき混ぜる。全部で20〜30分かかる。ミキサーを使うときは、ココナッツクリーム200mlのうち30ml(大さじ2)を加えて回す。

  5. 具とタマリンドの下ごしらえ

    じゃがいも300gは皮をむいて4cm角に切る。玉ねぎ200gは2cm幅のくし形に切る。タマリンド20gを湯60mlに5分浸してからもみほぐし、ざるでこして汁を取る。

  6. ココナッツクリームを煮詰めて油を出す

    厚手の鍋にココナッツクリーム200ml(ミキサーでペーストに30ml使ったときは残りの170ml)を入れ、中火にかける。煮立ったら木べらで混ぜながら5〜10分煮詰め、とろみがついて透明な油が分かれて浮いてくるまで待つ。

  7. ペーストを炒める

    カレーペーストを全量加え、弱めの中火で5〜8分、鍋底をこそげながら炒める。焦げつきそうなときは、ココナッツミルク600mlのうち大さじ1〜2を加えてのばす。香りが立ち、ペーストの色が濃くなって、赤い油がにじみ出てきたら炒め上がり。

  8. 鶏肉をからめる

    鶏手羽元800gを加えて中火にし、3〜4分、表面の色が変わるまでペーストをからめる。

  9. 煮込む

    残りのココナッツミルク、水200ml、煎ったシナモン・スターアニス・グリーンカルダモン・ローリエ、ピーナッツ40gを加える。煮立ったら弱火にし、ふたをずらしてのせ、ときどき混ぜながら30分煮る。

  10. 味をつけて仕上げる

    じゃがいも、玉ねぎ、パームシュガー30g、タマリンドの汁(全量)、ナンプラー45ml、塩6gを加える。弱火のまま、ふたをせずに20〜25分、じゃがいもに竹串がすっと通るまで煮る。火を止めて10分おき、味をなじませる。

ジャスミンライスと一緒に食べます。タイのムスリムの家庭では、ローティー(薄焼きのパン)を添えることもあります。

料理科学:ココナッツクリームを煮詰めて油を出す理由

油が分かれるまで煮詰める

ココナッツクリームは、缶のココナッツミルクの上に固まる濃い部分で、ココナッツの油を多く含んでいます。煮立てて水分をとばしていくと、とろみがつき、やがて透明な油が分かれて浮いてきます。タイではこれを「テーク・マン(油が分かれて出る、の意味)」と呼び、カレーペーストを入れる合図にしています。Wongnai のレシピも、ココナッツクリームを煮立ててペーストを入れ、油が分かれるまで炒めています。手順6で、とろみがついて油が浮くまで煮詰めるのはそのためです。

水の中で煮るのと、油で炒めるのとの違い

ペーストを水分の多いココナッツミルクの中で煮ると、水がある限り、温度は100℃前後までしか上がりません。分かれた油の中で炒めると、水分がとぶにつれて温度が上がり、香味野菜やスパイスに炒めた香ばしさが加わります。この記事では、手順7でペーストの色が濃くなり、赤い油がにじみ出てくるのを炒め上がりの目安にしています。

ただし、タイの料理家パイリン・チョンチットナンは、ココナッツミルクによっては油が分かれないことがあると書いています。煮詰めても油が出ないときは、とろみがついたところでペーストを加え、手順7で香りが立つまでしっかり炒めれば進めてかまいません。

料理科学:香味野菜を焼き、スパイスを煎ってから潰す理由

香味野菜を焼く

この記事では、エシャロットやにんにく、レモングラス、ガランガルを先に焼いてからペーストにします。タイ語の記事には、マッサマンを「ペーストの材料を煎り、焼かなければならないカレー」と説明するものがあります。一方で、焼かずに生のまま潰すレシピもあります。

焼くと表面の焼き色から香ばしさが加わり、水分が減るので、ペーストを油で炒めやすくなります。

スパイスはホールで煎ってから粉にする

KRUA.CO に載っている出版社セーンデートのレシピも、コリアンダーやクミンなどのホールのスパイスを、弱火で香りが立つまで煎ってから粉にしています。小さな種は焦げやすく、焦げると苦くなります。手順3でフライパンをゆすりながら2〜3分で火から下ろし、すぐ皿に移すのは、余熱で焦がさないためです。

地域による違い

  • 中部(バンコクなど):甘みを先に立て、塩けと酸味を重ねます。汁けを多めにして、ご飯にかけて食べます。この記事の作り方はこちらです。
  • タイのムスリムの家庭:とろりと濃く煮詰め、パンやローティーにつけて食べます。ペーストにはガランガルやレモングラスを使わず、乾燥唐辛子とエシャロット、にんにく、揚げたピーナッツに、コリアンダーとクミンの粉を合わせます。
  • 南部のムスリムの家庭:ペーストを作らず、コリアンダー、クミン、唐辛子、こしょうの粉を、揚げた玉ねぎと一緒に油で炒めて作ります。

肉は、もとは牛肉が中心で、いまは鶏肉がよく使われます。ムスリムの料理に由来するため、豚肉はほとんど使いません。じゃがいもがタイで広まる前は、さつまいもを入れていました。

手に入りにくい材料の代用

  • 乾燥唐辛子:タイの乾燥唐辛子は大きく、辛さは穏やかで色が濃いものです。日本の鷹の爪は辛すぎるので、韓国の粗びき唐辛子6gで代用します。手順1は省き、手順4で粉にしたスパイスと一緒に加えます。
  • エシャロット(ホームデーン):赤玉ねぎ50gで代用できます。
  • レモングラス・ガランガル:冷凍品を同じ量使えます。ガランガルが手に入らないときはしょうがで代用できますが、香りの質が違うので半量の5gにします。
  • こぶみかんの皮:冷凍のこぶみかんの実が手に入れば、表面を薄くむいて使います。手に入らないときは、冷凍のこぶみかんの葉2枚(1g)の太い筋を除き、ごく細かく刻んで代わりに加えます。葉は皮とよく似た香りですが、硬くて潰れにくいので、できるだけ細かく刻んでからつきます。
  • パクチーの根:根つきのパクチーが手に入らないときは、茎の根元に近い部分3gで代用できます。
  • カピ:アンチョビのフィレ5g(2枚)で代用できます。
  • パームシュガー:きび砂糖30gで代用できます。
  • タマリンド:レモン汁20mlで代用できます。手順10でタマリンドの汁の代わりに加えます。酸味が軽く、果実の香りは少なくなります。
  • ココナッツクリーム:缶を振らずに開けると、上に濃い部分が固まっています。これをすくって200mlにし、残りをココナッツミルクとして使います。夏などで固まっていないときは、缶を冷蔵庫で半日冷やします。
  • 市販のマッサマンカレーペースト:手順1〜4の代わりに、タイ製のマッサマンカレーペースト110gを使います。手順3の煮込み用のホールスパイスは、そのまま煎って加えます。市販のペーストは塩けが強いので、塩6gは入れず、ナンプラーは15mlから加え、味をみて45mlまで足します。

保存

  • 冷蔵:保存容器に入れて2日。翌日のほうが味がなじみます
  • 冷凍:じゃがいもを取り除いて1か月(じゃがいもは冷凍すると食感が悪くなります)
  • カレーペースト:密閉容器に入れて、冷蔵で1週間、冷凍で1か月

タイのほかのレシピ

もっと知りたい人へ

  • Pailin Chongchitnant『Hot Thai Kitchen』(英語)タイ出身の料理家パイリン・チョンチットナンの本。カレーペーストの作り方が詳しいAmazonで見る楽天で見る
  • ハロルド・マギー『マギー キッチンサイエンス』食材と調理の科学を広く扱う、料理科学の定番Amazonで見る楽天で見る

出典

本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。