ムルグ・ドー・ピャーザーMurgh Do Pyaza レシピ
مرغ دو پیازہムルグ・ドー・ピャーザー

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ムルグ・ドー・ピャーザーは、玉ねぎをたっぷり使って鶏肉を煮る、北インドとパキスタンの料理です。名前は「二つの玉ねぎ」という意味です。みじん切りの玉ねぎをじっくり色づけてソースの土台にし、仕上げの前に角切りの玉ねぎをもう一度加えます。
ソースはトマトとヨーグルトで、鶏肉にからむ程度の濃さです。あとから入れた玉ねぎは、形と歯ごたえが残ります。甘く溶けた玉ねぎと、シャキッとした玉ねぎの両方を味わう料理です。
ムルグ・ドー・ピャーザーとは
ウルドゥー語では「ムルグ・ドー・ピャーザー」(مرغ دو پیازہ)と書きます。ムルグは鶏、ドーは「2」、ピャーザーはペルシア語の「ピヤーズ」(玉ねぎ)から来た言葉です。ウルドゥー語とヒンディー語では、玉ねぎを「ピャーズ」と言います。英語版ウィキペディアは、ドピアザ(dopiaza)はペルシア語で「二つの玉ねぎ」という意味で、英語の dopiaza はウルドゥー語とペルシア語から入った言葉だとしています。ヒンディー語版ウィキペディアによると、鶏肉のほか、羊肉、牛肉、えびでも作られ、肉を使わないものではオクラやパニール(インドのフレッシュチーズ)で作ります。
「二つの玉ねぎ」が指すもの
名前の「二つ」が何を指すのかは、情報源によって説明が分かれます。
- パキスタンのテレビ局24ニュースのウルドゥー語のサイトは、玉ねぎを2通りに使うことから来た名前だとしています。細かく切って加える玉ねぎと、炒めてから加える玉ねぎです。
- 英語版ウィキペディアも、ソースの中で煮る玉ねぎと、生または炒めて添える玉ねぎの、2通りの使い方から来た名前だと説明しています。
- インドのレシピサイト、ヘッバールズ・キッチンのヒンディー語のページは、オクラのドー・ピャーザーについて、オクラと玉ねぎを1対2の割合で使うことから来た名前だとしています。
ムガル宮廷の料理とされる話
ドー・ピャーザーは、16世紀のムガル帝国の宮廷と結びつけて語られることがあります。パキスタンの新聞ジャングに載った、サルマー・フサインの記事「ムガルの料理術」(ウルドゥー語)は、アクバル帝(在位1556〜1605年)の宮廷の台所について述べたあと、ハリームやザルド・ビリンジ(黄色いご飯)と並べて、ドー・ピャーザーをその時代の料理として挙げています。24ニュースも、ムガル時代の有名な料理だと紹介しています。
アクバル帝の重臣アブル・ファズルが書いた『アーイーニ・アクバリー』には、宮廷の料理の作り方の一つとして「ドゥピヤーザ」が載っています。H・ブロッホマンの英訳では、ほどよく脂のある肉10セール(セールは当時の重さの単位)に対し、ギーと玉ねぎがそれぞれ2セールで、塩、こしょう、クミン、コリアンダーの種、カルダモン、クローブを加えるとされています。英語版ウィキペディアは、料理史家リジー・コリンガムが、このレシピはスパイスの量が多く、ヒンドゥスターン(北インド)の料理の影響がうかがえると指摘していることを紹介しています。『アーイーニ・アクバリー』のこのレシピには、玉ねぎを2回に分けて入れるかどうかは書かれていません。
ヒンディー語版ウィキペディアは、ドー・ピャーザーは、イラン北東部から中央アジアにかけてのホラーサーン地方で最初に作られ、ムガル帝国の時代に南アジアに広まったとしています。英語版ウィキペディアは、イラン料理にも同じ名前の料理があると説明しています。
ムッラー・ドー・ピャーザーの伝承
この料理を、アクバル帝に仕えたとされるムッラー・ドー・ピャーザーと結びつける話もあります。英語版ウィキペディアによると、ムッラー・ドー・ピャーザーは、アクバル帝と知恵者ビールバルの笑い話に、ビールバルの好敵手として登場する人物です。料理との結びつきについて伝えられている話は、情報源によって少しずつ違います。
- ヒンディー語版ウィキペディアは、ムッラー・ドー・ピャーザーが料理をしていて、急にとても多くの玉ねぎを入れたという言い伝えを紹介しています。
- 英語版ウィキペディアの「ドピアザ」の項は、ムッラー・ドー・ピャーザーを架空の人物としたうえで、彼が玉ねぎを2回入れてしまい、偶然この料理ができたという伝説を紹介しています。
英語版ウィキペディアの「ムッラー・ドー・ピャーザー」の項によると、大半の研究者は、ムッラー・ドー・ピャーザーを架空の人物と考えています。同じ項は、ムガル時代の記録にこの名前の廷臣は出てこず、その生涯や笑い話の冊子が出版されたのは19世紀の終わりになってからだとしています。同じ項によると、研究者ハーフィズ・マフムード・シーラーニーは、もとの名をアブドゥル・モーミンという実在の人物だったと主張しています。これに対して研究者C・M・ナイームは、シーラーニーの描く人物は架空で、アクバル帝とは関係のないペルシアの民話にもとづくと反論しています。
インドとパキスタンの家庭の作り方
この記事で読んだ鶏肉のレシピは5件です。インドのテレビ局アージ・タクのヒンディー語のレシピ、レシピサイト、ザーイカー・レシピズのヒンディー語のレシピ、インドの料理家ランヴィール・ブラールの2件のレシピ、同じくサンジーヴ・カプールのレシピで、5件とも玉ねぎを2回に分けて加えます。
- 1回目は、みじん切りか薄切りの玉ねぎを油で炒めて、ソースの土台にする
- 2回目は、角切りや4つ切り、花びら状にばらした大きめの玉ねぎを、鶏肉を鍋に入れたあとで加える
2回目の玉ねぎを入れてから火を止めるまでの時間は、レシピによって数分から20分近くまで幅があります。アージ・タクのレシピは、2回目の玉ねぎの半分を取り分けておき、最後に加えます。24ニュースのひき肉のドー・ピャーザーも、薄切りの玉ねぎを先に炒め、細切りの玉ねぎをあとから加えて蒸し煮にします。
配合は、アージ・タクとザーイカー・レシピズのレシピを中心にしました。鶏肉を色が変わるまで炒めてから粉スパイス、トマト、ヨーグルトの順に加える流れと、仕上げの角切りのトマトとカスーリー・メーティー(乾燥したフェヌグリークの葉)は、アージ・タクのレシピから取り入れました。ホールのクミンはアージ・タク、ベイリーフ(この記事ではインドのベイリーフ、テージ・パッターを使います)、カルダモン、クローブ、シナモンはザーイカー・レシピズのレシピにあるものです。油はランヴィール・ブラールのレシピにならってギーにしました。鶏肉は、サンジーヴ・カプールのレシピにならって、骨付きのぶつ切りを使います。ランヴィール・ブラールの1件目のレシピは、カレー用のぶつ切り(カレーカット)を使います。
ムルグ・ドー・ピャーザーのレシピ:材料(4人分)
下ごしらえ 20分 加熱 1時間
- コリアンダー6g
- カシュミーリー・チリ5g
- クミン4g
- ガラム・マサーラー2g
- ターメリック1.5g
- シナモン1g
- グリーンカルダモン0.6g
- テージ・パッター0.5g
- カスーリー・メーティー0.5g
- クローブ0.3g
鶏肉
- 鶏もも肉(骨付き・ぶつ切り)800g
ホールスパイスと1回目の玉ねぎ
マサーラー(ソース)
2回目の玉ねぎと仕上げ
作り方
材料を切る
鶏もも肉800gはキッチンペーパーで水気をふく。玉ねぎ(みじん切り用)300gはみじん切りにする。玉ねぎ(角切り用)200gは2〜3cm角に切り、1枚ずつにほぐす。完熟トマト(ピューレ用)200gはざく切りにし、ハンドブレンダーでなめらかなピューレにする。完熟トマト(角切り用)100gは2cm角に切り、種とまわりのゼリー状の部分を除く。青唐辛子2本は縦に切り込みを入れる。プレーンヨーグルト100gはボウルに入れ、なめらかになるまで混ぜて、室温においておく。
ホールスパイスを油で熱する
厚手の鍋にギー39gを中火で熱し、テージ・パッター2枚、クミン(ホール)2g、グリーンカルダモン3粒、クローブ4粒、シナモン1gを入れる。クミンのまわりに細かい泡が立ち、香りが出るまで10〜20秒熱する。
1回目の玉ねぎを色づける
玉ねぎ(みじん切り用)300gを加える。熱い油に水分の多い玉ねぎが入るので、油はねに気をつける。ときどき混ぜながら中火で12〜15分、濃いきつね色になるまで炒める。後半は鍋底が焦げやすいので、弱めの中火にして混ぜる回数を増やす。しょうが(すりおろし)15gとにんにく(すりおろし)15gを加え、生のにおいがなくなるまで1分炒める。
鶏肉を炒める
強めの中火にし、鶏もも肉800gを加える。上下を返しながら4〜5分、表面の色が白く変わるまで炒める。
粉スパイスと塩を炒める
弱火にし、カシュミーリー・チリパウダー5g、ターメリックパウダー1.5g、コリアンダーパウダー6g、クミンパウダー2g、塩11gを加える。焦がさないように、鶏肉にからめながら1分炒める。
トマトを炒める
中火にし、完熟トマト(ピューレ用)のピューレ200gを加える。ピューレがはねるので、ふたを手に持って少しずつ加える。ときどき混ぜながら5〜6分、水分がとんでぽってりするまで炒める。
ヨーグルトを加える
弱火にし、プレーンヨーグルト100gを大さじ2杯分ずつ加え、そのつどよく混ぜてなじませる。全部入れたら中火にし、ときどき混ぜながら5〜6分、縁に油がにじみ出るまで炒める。
水を加えて煮る
水150mlを加えて混ぜ、ふたをして弱めの中火で15分煮る。途中で1〜2回、底から混ぜる。
2回目の玉ねぎを加える
玉ねぎ(角切り用)200g、青唐辛子2本、ガラム・マサーラー2gを加えて全体を混ぜる。ふたをして弱めの中火で5分煮る。玉ねぎが半ば透き通り、芯にまだ歯ごたえが残っていればよい。
鶏肉の火の通りを確かめる
いちばん大きい1切れを取り出し、骨の近くのいちばん厚いところに温度計を刺す(骨には当てない)。75℃以上あればよい。温度計がないときは、骨まで切って、身にピンク色が残っておらず、出てくる汁が透明なことを確かめる。足りなければ鍋に戻し、ふたをして3分ずつ煮て、そのつど確かめる。
仕上げる
ふたを取り、完熟トマト(角切り用)100gを加え、カスーリー・メーティー0.5gを手のひらでもみながら加える。中火で1〜2分、トマトが温まるまで混ぜる。火を止め、刻んだパクチー5gを散らす。
ローティー(全粒粉の薄焼きパン)やナーン、またはご飯と一緒に食べます。
玉ねぎを2回に分けて入れる理由
1回目の玉ねぎは、水分をとばしてから色づく
1回目の玉ねぎを12〜15分かけて炒めるのは、ソースの甘みと香ばしさの土台を作るためです。玉ねぎは大部分が水分です。水分が残っている間は、玉ねぎの温度は水が沸く100℃前後から上がりにくく、色づきません。みじん切りにして、出てくる水分をとばしながら炒め続けると、やがて色づき始め、甘みと香ばしさが出てきます。
生の辛みは、加熱で和らぐ
生の玉ねぎの辛みは、加熱すると和らぎます。1回目の玉ねぎは、長く炒めることで辛みがなくなり、甘い土台になります。2回目の玉ねぎは5分ほどしか火を通さないので、玉ねぎらしい香りが少し残ります。
2回目の玉ねぎは、歯ごたえを残す
野菜は、長く煮るほど柔らかくなり、形が崩れていきます。2回目の玉ねぎを角切りにして最後の5分だけ煮るのは、形と歯ごたえを残すためです。
いろいろなドー・ピャーザー
この記事で読んだ情報源には、鶏肉のほかにも、いろいろなドー・ピャーザーがありました。
- ハイダラーバードの作り方:英語版ウィキペディアは、インドではドー・ピャーザーはハイダラーバードの町と結びつけられているとしています。サンジーヴ・カプールのサイトが「ハイダラーバード料理」に分類しているムルグ・ザーフラーニー・ドー・ピャーザーは、けしの実、チローンジー(小さなナッツ)、アーモンドの粉と、サフランを加えます。薄切りの玉ねぎを色づけたあと、4つ切りの玉ねぎをスパイスと一緒に加え、輪切りの生の玉ねぎを添えて出します。
- ダーバー(街道沿いの食堂)風:ランヴィール・ブラールのもう一つのレシピは、2回目の玉ねぎをピーマンと角切りのトマトと一緒に加え、ケウラ水(タコノキの花の香りの水)で仕上げます。材料にはレモン汁も挙がっています。
- ひき肉:24ニュースのひき肉のドー・ピャーザー(キーマー・ドー・ピャーザー)は、羊のひき肉で作ります。
- じゃがいも:パキスタンのニュースサイト、ABNニュースのじゃがいものドー・ピャーザーは、1回目の玉ねぎをスパイスやトマトと煮てペースト状にし、揚げたじゃがいもにからめます。2回目の大きな角切りの玉ねぎは、強火で数秒だけ火を通します。
- オクラ:ヘッバールズ・キッチンのヒンディー語のレシピは、オクラを先に炒めて取り出し、角切りの玉ねぎで作ったマサーラーと合わせます。
- イラン:ヒンディー語版ウィキペディアは、イランのドー・ピャーザーは、たっぷりの玉ねぎに、ひき肉、鶏肉、えび、じゃがいもなどを合わせると説明しています。
イギリスのカレーハウスとの違い
ドー・ピャーザー(英語では dopiaza などとつづられます)は、イギリスのインド料理店(カレーハウス)でもおなじみの料理です。英語版ウィキペディアは、英領インド期にアングロ・インディアン(インドに暮らしたイギリス系の人々)の料理に取り入れられ、イギリスに持ち帰られて、1926年創業のロンドンのインド料理店ヴィーラスワーミーのメニューにも載ったと説明しています。その後、イギリスのインド料理店の定番になったとしています。
同じくウィキペディアは、イギリスの放送局BBCのサイトに載っている、えびのドピアザのレシピを紹介しています。ソースにはちみつとグリーンピースを加え、玉ねぎとえびをバターで炒める作り方です。
この記事のドー・ピャーザーは、インドとパキスタンの家庭向けのレシピにならったものです。はちみつや砂糖は加えず、甘みは主に玉ねぎから引き出します。
手に入りにくい材料の代用
- カシュミーリー・チリパウダー:色が濃く、辛さは穏やかな唐辛子の粉です。パプリカパウダーを同じ量使い、辛みを足したいときは一味唐辛子を小さじ1/4まで加えます。
- テージ・パッター:インドのベイリーフです。ローリエ1枚で代用できます。香りは少し変わります。
- ギー:サラダ油で代用できます。ギーの香ばしい香りはなくなります。
- カスーリー・メーティー:乾燥したフェヌグリークの葉です。代わりになるものがないので、手に入らなければ省きます。
- 青唐辛子:手に入らなければ、赤唐辛子(ホール)1本を、手順2でホールスパイスと一緒に入れます。青い香りはなくなります。
- 骨付きの鶏もも肉:骨なしの鶏もも肉600gを4cm角に切って使えます。手順8で煮る時間を10分にし、塩は9g(小さじ1と1/2)に減らします。
保存
- 冷蔵:保存容器に入れて2日。温め直すと、2回目の玉ねぎの歯ごたえは弱くなります
- 冷凍:手順8まで終えたら、手順10の方法で鶏肉に火が通っていることを確かめてから冷まし、1か月。解凍して温め直してから、手順9〜11を行います
北インドのほかのレシピ
もっと知りたい人へ
出典
- Aaj Tak「Non Veg Food Recipe: नॉनवेज में कुछ अलग ट्राई करना चाहते हैं तो बनाएं चिकन दो प्याजा, नोट करें ये आसान विधि」(ヒンディー語)
- Zayka Recipes「चिकन दो प्याज़ा स्वाद में बेमिसाल और बनाने में आसान Chicken Do Pyaza Recipe」(ヒンディー語)
- 24 News「قیمہ دو پیازہ بنانے کی آسان ترکیب」(ウルドゥー語)
- ABN News「آلو دو پیازہ بنانے کا آسان طریقہ」(ウルドゥー語)
- Jang「مغلیہ فن آشیزی」(ウルドゥー語)
- Wikipedia「दो प्याज़ा」(ヒンディー語)
- Hebbar's Kitchen「भिंडी दो प्याज़ा रेसिपी | bhindi do pyaza in hindi | भिंडी दो प्याज़ा कैसे बनाएं」(ヒンディー語)
- Ranveer Brar「Easy Chicken Do Pyaza चिकन दो प्याज़ Recipe」(英語)
- Ranveer Brar「Chicken/ Murgh Do Pyaza चिकन दो प्याज़ा dhaba style Do Pyaza」(英語)
- Sanjeev Kapoor「Murg Zafrani Do Pyaza - SK khazana」(英語)
- Frances W. Pritchett「Recipes for Dishes(A'in-i Akbari」(英語)
- Wikipedia「Dopiaza」(英語)
- Wikipedia「Mulla Do-Piyaza」(英語)
本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。