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マトン・チュッカー・ヴァルヴァルMutton Chukka Varuval レシピ

மட்டன் சுக்கா வறுவல்マッタン・チュッカー・ヴァルヴァル

地域
南インド(タミル・ナードゥ(マドゥライ))
分量
3人分
公開
ステンレスの皿に盛ったマトン・チュッカー・ヴァルヴァル。黒こしょうをまぶした骨付きの羊肉に、小玉ねぎと赤唐辛子、カレーリーフがからみ、刻んだパクチーがかかっている。奥に汁を入れたステンレスのカップ

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マトン・チュッカー・ヴァルヴァルは、柔らかく煮た羊や山羊の肉を、汁気がなくなるまで炒りつけて、黒こしょうをまぶした南インド・タミル・ナードゥ州の料理です。インドの料理人のサイトでは、英語で「マトン・ペッパー・フライ」(Mutton Pepper Fry)や「マトン・チュッカ」(Mutton Chukka)とも呼ばれています。

読んだタミル語のレシピ4件のうち3件は、肉を圧力鍋で柔らかく煮てから、煮汁を飛ばして油で炒りつけます。ここでは、ボールドスカイのタミル語版に載ったマドゥライのレシピを土台にして、こしょうを多めに効かせます。小玉ねぎとフェンネル、カレーリーフの香りの中で肉を炒りつけ、仕上げに炒って挽いたばかりの黒こしょうを効かせます。

マトン・チュッカー・ヴァルヴァルとは

タミル語では「மட்டன் சுக்கா வறுவல்」と書きます。ヴァルヴァルは炒めたもの(フライ)という意味です。読んだタミル語のレシピ4件のうち3件は、料理名に「マトン・ヴァルヴァル」を含み、そのうちマドゥライのレシピが「マトン・チュッカー・ヴァルヴァル」です。こしょう(タミル語でミラグ)を料理名に入れたものはありませんでした。マトンは英語から入った言葉で、タミル語の料理記事でもそのまま使われています。羊や山羊の肉をタミル語で言い表すと「アーットゥカリ」になります。

インドで「マトン」というと、羊ではなく山羊の肉を指すことが多くあります。英語版ウィキペディアは、南アジアの多くの国では「マトン」という言葉が山羊肉に使われるとしています。日本では山羊肉が手に入りにくいので、この記事では羊肉で作ります(後半の「手に入りにくい材料の代用」を参照)。

マドゥライのチュッカー・ヴァルヴァル

インドのウェブメディア、ボールドスカイのタミル語版は、「マドゥライ・マトン・チュッカー・ヴァルヴァル」を、マドゥライとその周辺によく見られる料理として紹介しています。同じ記事は、マトンのチュッカーは町ごとにそれぞれの作り方がある、とも書いています。英語でレシピを紹介しているブログ「スリー・ホイッスルズ・キッチン」は、マトン・チュッカーを、スパイスなどと一緒に火を通したマトンを最後に水分を飛ばして炒りつける料理と説明し、南インド、とくにマドゥライで人気があるとしています。

ボールドスカイのこのレシピでは、熱した油にフェンネルとカレーリーフを入れ、小玉ねぎとしょうが・にんにくを炒めてから、肉とターメリック、ちぎった赤唐辛子を加えて圧力鍋で煮ます。ふたを開けてからこしょうを加え、油が分かれるまで弱火で炒りつけます。

こしょうの土地の肉料理

こしょうは、タミル・ナードゥでも育てられています。タミル・ナードゥ農業大学のタミル語のページは、ナーマッカル県のコッリ丘陵で「ナートゥ・ミラグ」と呼ばれる在来のこしょうが栽培されていると紹介しています。粒は小さいものの、辛みが強いそうです。

英語版ウィキペディアによれば、同じタミル・ナードゥ州のシヴァガンガ県にあるチェッティナードゥ地方の料理も、こしょうやフェンネル、スターアニス、シナモン、クローブなど多くの香辛料を使います。同じ項によれば、歴史家S. ムッタイアは、この地方の商人の共同体チェッティヤールは伝統的に菜食だが、交易を通じてマラバール海岸(インド南西部の沿岸)から肉料理の影響を受け、18世紀の終わりからは、商売の拠点を置いたセイロン(スリランカ)やビルマ(ミャンマー)などからも影響を受けた、と書いています。

この記事の作り方

マドゥライのレシピを骨組みにして、主に2つの点を変えています。

まず、マドゥライのレシピではガラム・マサーラー(粉)を使いますが、この記事では、チェッティナードゥ式やテルグ語のレシピと同じく、ホールスパイスをその場で炒って挽きます。中身は黒こしょうに、シナモン、クローブ、フェンネルです。

次に、こしょうの量を増やし、2回に分けて加えます。こしょうの量はレシピによって大きな幅があり、肉500gあたり、マドゥライのレシピは粉で小さじ1と1/2、インドの料理人ランヴィール・ブラールのレシピはその4倍以上を使います。この記事では、ホールで大さじ1(8g)にしました。

マトン・チュッカー・ヴァルヴァルのレシピ:材料(3人分)

下ごしらえ 40分(下味の30分を含む) 加熱 1時間10分(圧が下がるのを待つ時間を含む)

スパイスの配合 3人分で計14.8g
  • 黒こしょう8g
  • フェンネル2g
  • 赤唐辛子2g
  • ターメリック1.5g
  • シナモン1g
  • クローブ0.3g

肉の下味

  • 羊肉(肩・骨付きぶつ切り)(マトンまたはラム。骨なしでもよい)(楽天)500g
  • ターメリック(パウダー)(Amazon|楽天)1.5g(小さじ1/2)
  • しょうが(すりおろし)7.5g(小さじ1と1/2)
  • にんにく(すりおろし)7.5g(小さじ1と1/2)
  • 塩4.5g(小さじ3/4)

炒って挽くマサーラー

  • 黒こしょう(ホール)(Amazon|楽天)8g(大さじ1)
  • フェンネル(ホール)(Amazon|楽天)1g(小さじ1/2)
  • シナモン(ホール)(Amazon|楽天)2.5cm(1g)
  • クローブ(ホール)(Amazon|楽天)3粒(0.25g)

炒めて煮る

  • 太白ごま油(焙煎していない透明なごま油)52g(60ml)
  • フェンネル(ホール)(Amazon|楽天)1g(小さじ1/2)
  • 赤唐辛子(ホール)(2つにちぎる)(Amazon|楽天)4本(2g)
  • カレーリーフ(炒め始め用)(Amazon|楽天)10枚
  • 小玉ねぎ(ペコロスかエシャロット。皮をむいて縦半分)100g
  • 水250ml

仕上げ

  • カレーリーフ(仕上げ用)(Amazon|楽天)10枚
  • パクチー(コリアンダーの葉)(粗く刻む)8g(1/2カップ)

道具

  • 圧力鍋(容量3L以上。そのまま炒めるので底の厚いもの)(Amazon|楽天)
  • スパイスミル(すり鉢でもよい)(Amazon|楽天)
  • 小さなフライパン(スパイスを炒る)

作り方

  1. 肉に下味をつける

    肉は3〜4cm大に切り(骨付きは精肉店で切ってもらうとよい)、キッチンペーパーで水気をふく。ターメリックパウダー1.5g、しょうが7.5g、にんにく7.5g、塩4.5gをもみ込み、冷蔵庫で30分〜1時間おく。

  2. マサーラーを炒って挽く

    換気扇を回す。小さなフライパンに黒こしょう8g、フェンネル1g、シナモン1g、クローブ0.25gを入れ、油をひかずに弱火で2〜3分、ときどきゆすりながら香りが立つまで炒る。こしょうの刺激のある煙が出るので、顔を近づけない。皿に移して冷まし、スパイスミルで粗めに挽く。挽いたマサーラーを2つに分けておく。

  3. 香りを油に移す

    圧力鍋に太白ごま油52gを中火で熱し、フェンネル1gを入れて10秒炒める。赤唐辛子4本とカレーリーフ10枚を加える。葉の水分で油がはねるので、顔を離して入れる。10秒炒めたら、小玉ねぎ100gを加え、ふちが茶色くなるまで4〜5分炒める。

  4. 肉を炒める

    下味をつけた肉を、油がはねないよう鍋の縁から静かに加える。中火で5〜7分、ときどき返しながら、肉の表面の色が変わるまで炒める。

  5. 圧力鍋で煮る

    水250mlを加えて混ぜ、ふたをして強火にかける。圧力がかかったら(おもりが振れる、またはピンが上がる)弱火にして20分加圧し(この記事の目安。ラムなら12分)、火を止める。インドの笛が鳴るタイプの圧力鍋なら、マドゥライのレシピと同じく笛を5回鳴らしてから火を止める。ピンが下がって圧が抜けきるまで、ふたを開けずに10〜15分おく。

  6. 柔らかさを確かめる

    ふたを開け、いちばん大きい肉を1つ取り出して切る。中まで色が変わり、フォークがすっと入れば煮え上がり。硬ければ、ふたをして再び圧力をかけ、5分加圧してから同じように圧が抜けるのを待つ。

  7. 煮汁がなくなるまで炒りつける

    ふたを外したまま中火〜強めの中火にかけ、鍋底から返しながら10〜15分、煮汁がほとんどなくなり、油が鍋肌に分かれてくるまで煮詰める。油が分かれると鍋の中が急に熱くなるので、ここからは焦がさないよう中火で混ぜ続ける。

  8. こしょうをまぶす

    挽いたマサーラーの半量と、仕上げ用のカレーリーフ10枚を加える(油がはねるので、顔を離して入れる)。中火で4〜5分、肉の表面が濃い茶色になり、マサーラーが肉にからむまで炒る。

  9. 仕上げる

    残りのマサーラーを加えて1分炒め、火を止める。パクチー8gを散らして混ぜる。

炊きたてのご飯にまぜて、ラッサム(タマリンドとこしょうの酸っぱいスープ)と一緒に食べます。

先に圧力鍋で煮てから炒める理由

硬い肉は、まず水の中で柔らかくする

羊の肩のようによく動かす部位は筋が多く、そのまま炒めただけでは硬くて、かみ切れません。読んだタミル語のレシピ4件は、どれもまず肉を圧力鍋で煮ています。

普通の鍋では、煮汁の温度は100℃前後までしか上がりません。圧力鍋は中の圧力を上げて、それより高い温度で煮られるので、肉が早く柔らかくなります。

英語版ウィキペディアによれば、マトンは2歳を超えた羊の肉、ラムは1歳未満の羊の肉です。年をとった羊の肉ほど硬いので、この記事ではマトンをラムより長く煮ます。

水がなくなってから、香ばしさが生まれる

肉の焼き色と焼いた香りは、メイラード反応(たんぱく質と糖が反応して、色と香ばしい香りが生まれる反応)によるものです。鍋に水分が残っているうちは、温度は100℃前後にとどまり、焼き色はなかなかつきません。手順7で、ふたを外して煮汁を飛ばすと、やがて水分がなくなり、油が鍋肌に分かれてきます。油が分かれるのは、水分がほぼなくなった合図です。ここから鍋の中の温度が100℃を超えて上がり、肉と小玉ねぎの表面が色づいて、ヴァルヴァルらしい香ばしさが出ます。マドゥライのレシピも、こしょうを加えたあと、油が分かれるまで弱火で炒るよう書いています。

こしょうを炒って挽き、2回に分けて加える理由

挽きたてを使う

こしょうは、挽くと香りが飛びやすくなります。チェッティナードゥ式やテルグ語のTV9テルグのレシピと同じく、手順2でホールのまま炒ってから挽き、その日のうちに使います。

1回目は肉にからめ、2回目は香りのため

手順8で加える1回目のこしょうは、肉と一緒に数分炒ることで、香りの一部は飛びますが、辛みと炒った香ばしさが肉の表面と油にからみます。手順9で加える2回目は、火を止める直前に入れて、飛びやすい香りをできるだけ残します。

ランヴィール・ブラールのレシピも、こしょうを煮る段階、炒める段階、最後の仕上げに分けて加えています。

地域と家庭による違い

同じ「マトンのヴァルヴァル」でも、地域や家庭によって作り方が大きく違います。読んだレシピから、いくつか紹介します。

  • チェッティナードゥ式:ボールドスカイのタミル語版のチェッティナードゥのマトン・ヴァルヴァルは、肉にレッドチリパウダーなどで1時間下味をつけ、小玉ねぎとにんにくと一緒に圧力鍋で煮ます。別の鍋で、玉ねぎとトマト、削ったココナッツ、炒って挽いたスパイスのペーストを炒め、煮た肉を加えて水分を飛ばします。ペーストには、こしょうのほかにクローブ、シナモン、ベイリーフ、フェンネル、けしの実が入ります。こしょうは8粒だけで、こしょうが主役の料理ではありません。
  • 玉ねぎもトマトも使わない作り方:ボールドスカイのタミル語版には、玉ねぎもトマトも使わないマトン・ヴァルヴァルもあります。カシュミーリー・チリ、コリアンダー、ガラム・マサーラーと一緒に肉を圧力鍋で煮て、シナモン、クローブ、カルダモン、ベイリーフ、フェンネルを熱した油に、煮汁ごと加えて煮詰めます。
  • 煮汁を飛ばさないペッパー・マサーラー:同じくボールドスカイのタミル語版のマトン・ペッパー・マサーラーは、玉ねぎとトマトをたっぷり使い、粉のこしょう大さじ1とフェヌグリークの葉を加えて、水と一緒に圧力鍋で煮ます。煮汁を飛ばす手順はなく、ご飯やチャパーティーに合う料理として紹介しています。
  • アーンドラ・テランガーナのテルグ語のレシピ:テルグ語の新聞アーンドラ・ジョーティのマトン・ローストは、こしょうの粉小さじ1/2とターメリックを最初から肉と一緒に圧力鍋で煮ます。そのあと、玉ねぎ、フェンネル、しょうが・にんにく、カレーリーフ、レッドチリパウダーなどの粉とトマトを炒めて肉を合わせます。テルグ語のテレビ局TV9テルグのサイトのマトン・フライは、コリアンダーシード、シナモン、カルダモン、クローブ、こしょう小さじ1、赤唐辛子を炒って挽いたマサーラーを使い、シャーヒー・ジーラーとベイリーフで香りをつけた油で玉ねぎを炒めて、肉を煮汁ごと強火で炒ります。どちらも、こしょうの量はこの記事より少なめです。
  • ケーララのビーフ・ウラルティヤトゥ:同じく南インドのケーララ州には、牛肉を柔らかく煮てから汁気がなくなるまで炒りつける料理があり、当サイトではビーフ・ウラルティヤトゥの記事で紹介しています。英語版ウィキペディアのケーララ料理の項は、「イラッチ・ウラルティヤトゥ」(イラッチは肉の意味)を、ケーララ・ビーフ・フライとも呼ばれる牛肉の料理として挙げ、肉のウラルティヤトゥを、削ったココナッツの入った汁気のない料理としています。当サイトの記事でも、ココナッツの薄切りを揚げ焼きにして加えます。この記事のマドゥライ式は、羊(インドでは山羊のことが多い)の肉で作り、ココナッツを使いません。

手に入りにくい材料の代用

  • 羊肉(マトン・ラム):インドの「マトン」は山羊肉のことが多いのですが、山羊肉は日本の一般的なスーパーではまず見かけません。この記事では羊肉で作ります。手順5の加圧時間(20分)は、読んだレシピの笛の回数(マドゥライのレシピは5回)を、笛のない日本の圧力鍋向けに置き換えたこの記事の目安で、マトン(2歳を超えた羊の肉)に合わせています。
  • ラム:1歳未満の羊の肉で、マトンより手に入りやすいです。ラムの肩肉なら、手順5の加圧を12分にします(この記事の目安)。骨なしのラムもも肉でも作れます。
  • 圧力鍋がないとき:手順5で、厚手の鍋に水500mlを加え、ふたをしてごく弱火で煮ます。煮る時間はこの記事の目安で、マトンなら1時間15分〜1時間30分、ラムなら50分〜1時間です。20分ごとに底から混ぜ、水が減って焦げつきそうなら水50mlずつ足します。肉が柔らかくなったら手順6に進みます。
  • 小玉ねぎ:ペコロスかエシャロットを使います。どちらもなければ、玉ねぎ100gをくし形に切って使います。
  • 太白ごま油:焙煎していないごま油です。スリー・ホイッスルズ・キッチンのチュッカーのレシピは、ごま油(ジンジェリー・オイル)を好んで使うとしています。サラダ油を同じ量使ってもかまいません。焙煎したごま油は香りが強く、料理の香りが変わるので避けます。
  • カレーリーフ:さわやかな香りのある、ミカン科の木の葉です。乾燥のものを同じ枚数使えます。香りは弱くなります。手に入らなければ省きます。
  • 赤唐辛子(ホール):日本の鷹の爪で代用するときは、辛みが強いので2本にします。
  • スパイスミル:すり鉢で、こしょうの粒が粗く割れる程度にすりつぶします。

保存

  • 冷蔵:保存容器に入れて3日
  • 冷凍:1か月。温め直すときは、フライパンに入れて水15mlを足し、ふたをして弱めの中火で中心まで十分に温めてから、ふたを外して水分を飛ばします

南インドのほかのレシピ

もっと知りたい人へ

  • Sumeet Nair・Meenakshi Meyyappan『The Bangala Table』(英語)チェッティナードゥ地方のヘリテージホテル、ザ・バンガラの料理をまとめた、チェッティナードゥ料理の本Amazonで見る
  • ハロルド・マギー『マギー キッチンサイエンス』食材と加熱の仕組みを広く扱う、料理科学の定番Amazonで見る楽天で見る
  • J. Kenji López-Alt『The Food Lab』(英語)家庭料理の手順を実験で確かめていく料理科学の本Amazonで見る楽天で見る

出典

本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。