パット・パックブン・ファイ・デーン日本では「パックブンファイデーン」ともPad Pak Boong Fai Daeng レシピ
ผัดผักบุ้งไฟแดงパット・パックブン・ファイ・デーン

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パット・パックブン・ファイ・デーンは、空心菜をにんにくと唐辛子、タオチアオ(大豆の発酵調味料)、オイスターソースと一緒に、ごく強い火で一気に炒めるタイの料理です。食堂でも家庭でもよく作られる、ご飯に合うおかずです。
作り方はとても短く、空心菜を鍋に入れてから皿に盛るまで1分あまりです。空心菜の上に調味料を全部のせておき、煙の立つ油に一度に入れて、茎の歯ごたえと鮮やかな緑色が残るうちに火から下ろします。家庭のコンロで強火の炒め物をするときの、油はねと炎への備え方もあわせて書きました。
パット・パックブン・ファイ・デーンとは
タイ語では「ผัดผักบุ้งไฟแดง」と書きます。パットは「炒める」、パックブンは「空心菜」、ファイは「火」、デーンは「赤い」という意味です。
「赤い火」で炒める
タイ出身の料理家リーラー・プンヤラッタバンドゥは、英語のブログ「SheSimmers」で、ファイ・デーンを、この料理を炒める真っ赤に燃え盛る炎のことだと説明しています。リーラーは、家庭風の野菜炒めの多くは中くらいの火で作るのに対し、ごく強い火で炒めるこの料理の作り方は中国料理に近いとも書いています。
この記事で読んだタイ語のレシピのうち、Sanook(タイの大手ポータルサイト)、クノールのタイのサイト、Wongnai(タイのグルメサイト)の投稿、ウェブサイト「タラートソット・オンライン」のブログ記事は、いずれも鍋をよく熱するか、強い火を使うように書いています。クックパッドのタイ語版の投稿は、空心菜を入れたときに火が上がることがあるので気をつけるよう注意しています。
ファイ・デーンという言葉は、空心菜だけに使うものではありません。タイの歴史・文化の雑誌『シンラパ・ワッタナタム』で食について書くクリット・ルアラマイは、カイラン(芥藍)を強火で炒める「パット・カナー・ファイ・デーン」など、野菜を強火で手早く炒める料理を「パット・パック・ファイ・デーン」とまとめて呼んでいます。
中国系の人々が広めた炒め物
クリットは同じ記事で、野菜の炒め物は、昔のタイでは手軽に食べられるものではなかったはずだ、と書いています。クリットの見立てでは、中国から移ってきた人々が、畝を立てて肥料と水を与える育て方で「中国の野菜」を安定して作るようになったことが、炒め物が広まるきっかけになりました。炒める油には、中国系の人々が飼った豚の脂(ラード)が使われたのだろう、ともクリットは書いています。
炒め物に欠かせない鉄の鍋について、クリットは、シャム(いまのタイ)の商人が中国から取り寄せる人気の品だったと書いています。その手がかりとして挙げているのが、タイ東部チョンブリー県サッタヒープのクラーム島の近くに沈んでいた船から、鉄の鍋が見つかったことです。記事によると、この船は仏暦20世紀の初め(西暦ではおよそ14世紀の後半)ごろのものとされています。さらに、1882年にバンコクで開かれた国産品の博覧会の本の、炭についての一覧に、「バンコクの鍋工場の中国人の番頭」が人を雇って森で炭を焼かせていたという記録があることも紹介しています。
夜のお粥の店の定番
タイの知識共有ブログ「GotoKnow」に料理の記事を書く筆者は、パット・パックブン・ファイ・デーンを、夜通し開いているお粥の店(カーオ・トム・トー・ルン)でよく出される料理として挙げています。リーラーも、白いご飯か、味をつけずに炊いた白がゆと一緒に食べる料理として紹介しています。
パット・パックブン・ファイ・デーンのレシピ:材料(2人分)
下ごしらえ 10分 加熱 5分
炒め油
- サラダ油26g(大さじ2)
道具
- 中華鍋(直径26cm以上の鉄のフライパンでもよい)
- 鍋に合うふた(炎が上がったときにかぶせる)
- サラダスピナー(野菜の水切り器。ざると清潔なふきんでもよい)
- 大きめのボウル
作り方
空心菜を切る
空心菜300gを水でよく洗い、根元の硬い部分を2〜3cm切り落とす。7〜8cm長さに切り、太い茎は斜めに切って、葉と火の通りをそろえる。
水けをしっかり切る
空心菜をサラダスピナーで回して水けを切る。ないときは、ざるに上げてから清潔なふきんで包み、軽く押さえて表面の水を取る。水が残っていると、熱い油に入れたときに油がはね、鍋の温度も下がる。
香味野菜と調味料をのせる
にんにく15gと生の赤唐辛子5gを、包丁の腹で押しつぶす。大きめのボウルに空心菜を入れ、その上に、にんにく、唐辛子、タオチアオ8.5g、オイスターソース18g、砂糖1.5gをのせる。混ぜなくてよい。水30mlは別の器に入れて、コンロの横に置く。
鍋を熱する
換気扇を強で回し始める。コンロのまわりから、ふきん、キッチンペーパー、油の容器など燃えやすいものをどける。中華鍋を強火にかけ、1分ほどを目安に熱する。空のまま長く熱し続けない(ガスコンロの過熱を防ぐ装置が働いて、火が消えることがある)。
油を熱する
サラダ油26gを入れ、鍋を回して全体に広げる。強火のまま20〜30秒、油の表面がゆらめいて、うっすら煙が立つまで熱する。
一気に炒める
ボウルの中身を、鍋の手前のふちから向こう側へすべらせるようにして、一度に入れる(はねた油が自分に向かわないように)。顔を鍋に近づけない。ガスコンロでは、はねた油が火に触れて、鍋のふちに炎が上がることがある。炎が収まらないときは火を止めてふたをかぶせ、水はかけない。強火のまま、トングかへらで底から大きく返しながら30秒炒める。
水を加えて仕上げる
水30mlを鍋のふちから回し入れる。湯気が勢いよく上がるので、顔を離しておく。さらに30〜60秒、全体を返しながら炒め、葉がしんなりして、茎が鮮やかな緑色で歯ごたえが残るうちに火を止める。鍋に残すと余熱で火が通りすぎるので、すぐに皿に移す。
炊きたてのご飯か白がゆに、ほかのおかずと一緒に添えて、炒めたてを食べます。
料理科学:強火で短く炒める理由
長く加熱すると、緑がくすんでくたっとする
空心菜は、長く加熱すると緑の色がくすみ、葉も茎もくたっとしてきます。クノールのタイのサイトは、調味料を全部空心菜の上にのせ、煙が出るまで熱した鍋で強火で一気に炒めると、10〜15秒で緑が鮮やかでしゃきっと仕上がるとしています。手順7で、茎が鮮やかな緑色で歯ごたえが残るうちに火を止め、すぐ皿に移すのは、鍋の余熱で火が通りすぎるのを防ぐためです。
空心菜は、薄い葉と、中が空洞になった太い茎でできています。手順1で太い茎を斜めに切るのは、断面を広くして、茎にも短い時間で火を通すためです。Sanookのレシピも、太い茎は斜めに切っています。
鍋の温度を下げないための3つの工夫
空心菜は水分の多い野菜です。鍋に一度にたくさん入れると鍋の温度が下がり、空心菜から出た水が鍋底にたまって、炒めるより蒸し煮に近い、ゆでたような仕上がりになります。この記事では、次の3つで温度の下がり方を抑えます。
- 水けを切る(手順2):表面の水が多いと、その水を蒸発させるのに鍋の熱が使われます。タラートソット・オンラインのブログ記事も、油はねと水っぽさを防ぐために、水けをよく切るとしています。
- 量を300gまでにする:家庭のコンロの火力で強火を保ちやすい量の目安です。倍の量を作るときは、2回に分けて炒めます。
- 調味料を先にのせて一度に入れる(手順3と6):タイ語のレシピでは、Sanook、Wongnaiの投稿3件、クックパッドの投稿が、調味料を空心菜の上にのせてから鍋に入れています。Wongnaiの「パット・パックブン・ファイ・マイ・デーン(赤い火じゃない空心菜炒め)」の投稿者は、調味料を先にのせておくと炒める時間が短くなり、しゃきっと仕上がると書いています。材料を何度にも分けて入れるたびに鍋の温度が下がるのを避けられます。
料理科学:家庭のコンロで強火の炒め物をするとき
油がはねる理由
水は沸騰して水蒸気になると、体積が大きくふくらみます。炒め物の油は水が沸騰する100℃よりずっと熱いので、そこに水滴が入ると一瞬で水蒸気に変わり、そのとき周りの油をはね飛ばします。手順2で水けを切り、手順6で鍋の手前から向こうへすべらせるように入れるのは、はねる油の量を減らし、飛ぶ向きを自分から遠ざけるためです。
手順7で水を加えるのは、空心菜が鍋に入って油の温度が下がったあとです。リーラーのレシピは、スープも最初に空心菜の上にのせていますが、この記事では、煙の立つ油に直接水が入らないように、クノールやWongnaiの投稿と同じく、炒め始めてから加えています。
炎は狙わなくてよい
クックパッドのタイ語版の投稿が注意しているように、空心菜を入れたときに、鍋から火が上がることがあります。はねた油がコンロの火に触れると、燃えて炎が上がります。
家庭で作るときに、わざと炎を上げる必要はありません。鍋のふちに炎が上がったら、あわてて鍋を動かさず、火を止めます。東京消防庁の資料には、カセットこんろで揚げ物をしていて鍋から炎が上がり、鍋を火からおろした人が、はねた油で腕と額にけがをした事例が載っています。炎が収まらなければ鍋に合うふたをかぶせて、空気を断ちます。油の火に水をかけると、水が一気に水蒸気になって燃えている油を飛び散らせるので、絶対にかけません。
空焼きは短く、換気は先に
製品評価技術基盤機構(NITE)の資料によると、ガスこんろの調理油過熱防止装置は鍋底の温度を測り、約250℃になると自動で火を消します。同じ資料は、油は強火で加熱して約5〜10分で、火を近づけなくても燃え出す温度(370℃)に達するとし、油の量が少ないと温度が急に上がるとも注意しています。この料理の油は大さじ2と少ないので、鍋から目を離さないでください。手順4で空の鍋を熱するのを1分ほどにとどめ、油を入れてから20〜30秒で空心菜を入れるのは、装置が働いて火が消えるのを避け、油を必要以上に熱しすぎないためです。時間は目安で、コンロや鍋によって変わります。
東京消防庁の資料によると、2008年以降に作られた家庭用のガステーブル(ガスコンロ)には、この過熱防止装置などをまとめた「Siセンサー」が付いています。一方、カセットこんろの安全装置の多くはボンベの異常な過熱による圧力の異常を感じ取るもので、油の温度を測るものではありません。資料は「目を離さない」「加熱しすぎない」ことを呼びかけています。カセットこんろで作るときは、空焼きと油の加熱をとくに短くしてください。
サラダ油が煙を出し始める温度(煙点)は、油の種類や状態によって違いますが、手順5のようにうっすら煙が立てば、油はかなり熱くなっています。つぶした唐辛子が熱い油に触れると、むせるような刺激の強い煙も出ます。換気扇は鍋を火にかける前に、強で回しておきます。
作り方の違い
- にんにくを先に炒める:クノール、Wongnaiの投稿2件、タラートソット・オンラインは、先に油でにんにく(多くは唐辛子も)を炒めて香りを出してから空心菜を入れています。にんにくは煙の立つ油ではすぐ焦げるので、この方法にするときは、にんにくを入れて香りが立ったらすぐ空心菜を入れます。
- ラードで炒め、黒いタオチアオで味をつける:クリットは、鉄の鍋で植物油かラードを強火で熱して炒め、黒いタオチアオと少しの塩で味をつける作り方を紹介し、市販の合わせ調味料やうま味調味料は使わないとしています。
- カリカリの豚の脂をのせる:Wongnaiの投稿(Pattama Satansathit)は、ラードを取ったあとのカリカリの豚の脂身(カーク・ムー・ジアオ)を上に散らしています。
- 空飛ぶ空心菜:リーラーは、炒めた空心菜を宙に飛ばして見せる「パックブン・ローイ・ファー(空飛ぶ空心菜)」を、簡単な料理を特別なものに見せる売り方として紹介し、食べ物が無駄になることもあると書いています。
手に入りにくい材料の代用
- タオチアオ:中国の黄豆醤(大豆のみそ)を同じ量使えます。手に入らないときは、淡色の米みそ7gで代用します。豆の粒の食感はなくなります。
- 生の赤唐辛子(プリック・キーヌー):日本の生の赤唐辛子か青唐辛子5gで代用できます。辛さは穏やかになります。乾燥の赤唐辛子なら2本をちぎって使います。乾燥のものは焦げやすいので、鍋に入れたらすぐに返します。
- 空心菜:空心菜が手に入らない季節は、クリットが同じ炒め方に向くと挙げている野菜のうち、もやしやにらで作れます。もやしは同じ時間、にらは手順7の炒め時間を30秒ほどにします。
保存
- 炒めたてがいちばんおいしい料理です。時間がたつと色がくすみ、水が出ます
- 残ったときは保存容器に入れて冷蔵で翌日まで。冷凍には向きません
タイのほかのレシピ
もっと知りたい人へ
出典
- Sanook「ผัดผักบุ้งไฟแดงเมนูอร่อยบำรุงสุขภาพ」(タイ語)
- Knorr(タイ)「ผัดผักบุ้งไฟแดง」(タイ語)
- Wongnai(Tippawan Koy)「ผัดผักบุ้งไฟแดง」(タイ語)
- Wongnai(กินไม่อ้วน)「ผัดผักบุ้งไฟแดง」(タイ語)
- Wongnai(Pattama Satansathit)「ผัดผักบุ้งไฟแดงกากหมูเจียว #wongnaichef」(タイ語)
- Wongnai(Nuyying ลูกคุณวิภา)「ผัดผักบุ้งไฟไม่แดง」(タイ語)
- Cookpad(Tarl@สวนสบายสามพราน)「ผัดผักบุ้งไฟแดง」(タイ語)
- ตลาดสด-ออนไลน์「ผัดผักบุ้งไฟแดง」(タイ語)
- ศิลปวัฒนธรรม「“ผัดผัก” เคยหากินยากในไทย? ก่อนเป็นเมนูผัดผักไฟแดงแม้แต่รัชกาลที่ 9 ก็โปรด」(タイ語)
- GotoKnow(นกขมิ้นเข้าครัว)「น้ำพริกและผักบุ้งดอง」(タイ語)
- SheSimmers「Stir-Fried Chinese Water Morning Glory – Phat Phak Bung Fai Daeng (ผัดผักบุ้งไฟแดง)」(英語)
- 製品評価技術基盤機構(NITE)「ガスこんろでの天ぷら火災」(日本語)
- 東京消防庁「9 天ぷら油火災」(日本語)
本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。