トップ / 西インド

ヴィンダールー日本では「ポークビンダルー」ともVindalho レシピ

विनडालूヴィンダールー

地域
西インド(ゴア)
分量
6人分
公開
素焼きの器に盛ったヴィンダールー。赤い油の浮いたマサーラーに豚肉が浸かり、乾燥唐辛子とにんにくがのっている。奥にパンとご飯

この記事はAmazonアソシエイト・楽天アフィリエイトのリンクを含みます。

ヴィンダールーは、インド西海岸のゴアで、豚肉を酢とにんにくと唐辛子のペーストに一晩漬けてから煮込む料理です。ポルトガルの肉料理「カルネ・デ・ヴィーニャ・ダリョシュ」が元になったとされています。イギリスのカレー店では激辛カレーの代名詞ですが、ゴアの家庭のレシピには、辛さよりも酸味とスパイスの香りが前に出て、ほのかに甘みのあるものがあります。

カシュミーリー・チリをたっぷり使うので、色は濃い赤です。豚肩ロースに豚バラを合わせ、脂の甘みと酢の酸味を釣り合わせます。

ヴィンダールーとは

ゴアでは、この料理の名前を vindalho と綴ります。ゴアの新聞 The Goan は、ゴアの人たちが vindaloo ではなく vindalho という呼び名にこだわると伝えています。ゴアの言葉であるコーンカニー語版のウィキペディアでは、デーヴァナーガリー文字で「विनडालू」と書かれています。

同じコーンカニー語版ウィキペディアは、この名前はポルトガル語から来たもので、にんにくとワインを合わせたものを指すと説明しています。また、豚肉の料理なので、主にキリスト教徒の人たちが作るとしています。

ポルトガルの「ワインとにんにく」の肉

元になったとされるのは、ポルトガルの肉料理「カルネ・デ・ヴィーニャ・ダリョシュ」(carne de vinha d’alhos)です。カルネは肉、アリョシュはにんにくのことです。英語版ウィキペディアは、この名前を「にんにく酢の肉」とも「にんにくワインの肉」とも訳しています。

この料理は、いまも大西洋のマデイラ島の名物です。マデイラの観光局のサイトによると、豚肉をにんにくと白ワインと香辛料に数日漬けてから油で揚げ焼きにし、皿に盛って、あるいはパンにはさんで食べます。かつてはクリスマス・イヴの夕食のための料理だったとされています。インドの歴史メディア Live History India は、マデイラの人たちが肉や魚を長く保存するために生み出した調理法だとしています。

ゴアで酢と唐辛子の料理に

英語版ウィキペディアによると、ゴアは1530年にポルトガルのインド領の首都になりました。ゴアの新聞 Herald Goa の記事で、ファティマ・ダ・シルヴァ・グラシアス博士は、元はワインとにんにくの料理だったものが、ゴアではワインの代わりにヤシの酢で作られるようになったと説明しています。旅行サイト i-escape の記事によると、ゴアのヤシの酢は、ココナッツの木から採った樹液(トディ)を酸っぱくなるまで寝かせて作ります。Live History India は、インドでは酢を作っていなかったので、フランシスコ会の司祭たちがココナッツのトディから酢を作ったと伝えられている、と書いています。

唐辛子はアメリカ大陸の作物です。英語版ウィキペディアによると、遅くとも1528年までに、ポルトガル人がインド南西部のマラバール海岸に持ち込みました。グラシアス博士は、ポルトガルの料理を元に、ゴアで手に入るものに合わせて調味料が加えられていったと話しています。

ゴアの祝いの席の料理

The Goan は、ヴィンダールーをゴアのカトリックの人たちのビュッフェに欠かせない料理と紹介しています。Herald Goa の記事で、ゴアの料理クラブの創立メンバーで料理評論家のオデット・マスカレニャスは、本来は脂と皮と肉のバランスがよい豚バラで作られたと話しています。一方、グラシアス博士は、カシュミーリー・チリやシナモン、クローブなどの材料が高くつくため、カトリックのゴアの人の多くは、ヴィンダールーよりもゴアの豚肉料理「ソルポテル」を作る方を選ぶと話しています。

この記事の配合

ゴアの料理サイト Goan Food Recipes のクライドのレシピは、豚肉に塩をして水気を出し、カシュミーリー・チリとスパイスを酢で挽いたマサーラーに一晩漬けます。ゴア料理を得意とした母親のレシピを書いている Celebration In My Kitchen のジェシーのレシピも一晩漬け、酢は約180ml、砂糖は小さじ1/2です。i-escape が紹介している、ゴアの宿 Casa Susegad の料理人ジョアニータのレシピは、自家製のヤシの酢をたっぷり使い、砂糖も多めです。

この記事では、唐辛子の数と砂糖を、これらのレシピの中ほどにしました。酢は、ジェシーの約180ml、ジョアニータの豚肉1kgあたり約170mlよりやや少ない150mlで、水を加えずにマサーラーを挽ける量です。タマリンドは入れません。ジェシーは、酢が酸味を担うのでタマリンドはいらないとしています。肉は、マスカレニャスの話と、脂と肉が半々では脂っこくなりすぎるというシェフのピーター・フェルナンデスの話から、豚肩ロースに豚バラを3割ほど合わせました。

ヴィンダールーのレシピ:材料(6人分)

下ごしらえ 12時間30分(漬け込みを含む) 加熱 2時間15分

スパイスの配合 6人分で計14.4g
  • カシュミーリー・チリ7.5g
  • クミン2g
  • シナモン2g
  • ターメリック1.5g
  • 黒こしょう0.7g
  • クローブ0.7g

豚肉の下ごしらえ

  • 豚肩ロース(かたまり)700g
  • 豚バラ(かたまり)300g
  • 塩12g(小さじ2)

マサーラー(漬け込みのペースト)

  • カシュミーリー・チリ(ホール)(乾燥した赤唐辛子)(Amazon|楽天)15本(7.5g)
  • ココナッツビネガー(ヤシの樹液から作る酢)(Amazon)150ml
  • クミン(ホール)(Amazon|楽天)2g(小さじ1)
  • 黒こしょう(ホール)(Amazon|楽天)15粒(0.7g)
  • クローブ(ホール)(Amazon|楽天)8粒(0.7g)
  • シナモン(ホール)(スティック)(Amazon|楽天)5cm(2g)
  • ターメリック(パウダー)(Amazon|楽天)1.5g(小さじ1/2)
  • にんにく30g(6片)
  • しょうが15g

煮る

  • サラダ油26g(大さじ2)
  • 玉ねぎ300g(中1と1/2個)
  • 水200ml
  • 砂糖6g(小さじ2)

道具

  • スパイスミル(ホールスパイスを粉にする)(Amazon|楽天)
  • ミキサー(少ない水分でもペーストにできる、容器の小さいもの)
  • ふたつきの保存容器(ガラスかホーロー。酢に強いもの)
  • 厚手の鍋(ふたつき。直径20〜22cm前後)

作り方

  1. 豚肉に塩をする

    豚肩ロースと豚バラを3〜4cm角に切り、キッチンペーパーで水気を拭く。ボウルに入れ、塩12gをもみ込む。

  2. 唐辛子を酢に浸す

    カシュミーリー・チリ15本はヘタを取り、ココナッツビネガー150mlに30分浸して柔らかくする。

  3. ホールスパイスを粉にする

    シナモン5cmを手で小さく折る。クミン2g、黒こしょう15粒、クローブ8粒、シナモンをスパイスミルに入れ、細かい粉にする。

  4. マサーラーをすりつぶす

    ミキサーに、カシュミーリー・チリを浸したココナッツビネガーごと入れ、粉にしたスパイス、ターメリック1.5g、皮をむいたにんにく30g、皮をむいて薄切りにしたしょうが15gを加える。水は加えずに、指先でこすってもざらつかなくなるまで、なめらかなペーストにする。

  5. 一晩漬ける

    豚肉にマサーラーを加え、1切れずつにからむようによく混ぜる。保存容器に移してふたをし、冷蔵庫で12〜24時間おく。

  6. 玉ねぎを炒める

    玉ねぎを薄切りにする。厚手の鍋にサラダ油26gを中火で熱し、玉ねぎを入れる。油がはねやすいので、鍋から体を離して入れる。混ぜながら10〜12分、全体が薄く色づくまで炒める。

  7. 豚肉を漬け汁ごと炒める

    換気扇を回す。豚肉をマサーラーの漬け汁ごと鍋に加え、弱めの中火にする。鍋底をこそげるように混ぜながら10分炒め、スパイスの生っぽい香りが消えて、肉の表面の色が変わったらよい。唐辛子の刺激のある湯気が立つので、顔を近づけない。

  8. ふたをして煮込む

    水200mlを加えて煮立て、ふたをしてごく弱火で1時間30分煮る。15分おきにふたを取り、鍋底から混ぜる。鍋底が焦げつきそうなら、火をさらに弱める。

  9. 煮詰めて仕上げる

    肉を1切れ取り出して半分に切り、中まで色が変わって赤みがなく、竹串がすっと通るほど柔らかいことを確かめる。砂糖6gを加え、ふたを取って中火で10〜15分、混ぜながら煮詰める。ソースが肉にからむほど濃くなり、表面に赤い油がにじんできたら火を止める。

炊いたご飯と一緒に食べます。クライドもジェシーも、作った翌日の方がおいしいと書いています。時間があれば、粗熱を取って冷蔵庫で一晩おき、温め直してから食べてください。

漬け込みと塩

漬け込みは、マサーラーを肉にまとわせる

ヴィンダールーの漬け込みでは、酢とスパイスとにんにくのペーストを肉の表面にまとわせ、煮汁に香りと酸味を移します。肉を3〜4cm角と小さめに切るのは、表面の割合を増やして、マサーラーの味がからむ部分を多くするためです。柔らかさは、手順8で弱火で長く煮込むことで生まれます。

塩はマサーラーより先に

クライドのレシピにならい、手順1でマサーラーより先に塩をもみ込みます。この記事では塩の全量を最初に入れて、漬け汁ごと煮るので、煮込んだあとで塩を足す必要はありません。

料理科学:酢の料理は日持ちするか

前に触れたように、マデイラのカルネ・デ・ヴィーニャ・ダリョシュは、肉を保存するための方法だったという説があります。酢には、多くの微生物が増えるのを抑えるはたらきがあり、ピクルスのような酢漬けの保存食が日持ちするのはこのためです。

ただし、酢漬けの保存食は、食べ物全体がはっきり酸っぱくなるほどの量の酢を使います。この記事のヴィンダールーでは、酢は完成した重さの1割ほどです。肉と玉ねぎで薄まるうえ、煮込む間に酢のにおいの一部は湯気と一緒に飛びます。常温で日持ちする保存食にはならないので、冷蔵庫で保存してください。

手順9でふたを取って煮詰めると、つんとした酢の香りがやわらぎます。シェフのヴァスコ・アルヴァレスは Herald Goa の記事で、ヴィンダールーは長くおくほど酢の角が取れると話しています。

イギリスのカレー店の「激辛ヴィンダールー」との違い

イギリスのインド料理店では、ヴィンダールーはメニューでいちばん辛いカレーとして知られています。英語版ウィキペディアと Live History India によると、次のような道をたどりました。

  • 19世紀:Live History India によると、ゴアのカトリックの料理人を通じてイギリス人に伝わり、英語の本に初めて出てくるのは1888年で、ポルトガルのカレーという意味の名前で紹介されました。英語版ウィキペディアは、この頃のレシピでは牛肉や鴨でも作るとされていたと書いています。
  • 1970年代:イギリスでインド料理店が増え、ヴィンダールーも広まりました。Live History India は、店の多くでバングラデシュ出身の料理人が作り、インドのものとは違う料理になったとしています。
  • 1980年代から:同じ記事によると、ヴィンダールーはメニューでいちばん辛いカレーになり、それを頼むことが男らしさの見せ場になりました。1998年のサッカーのワールドカップでは、ヴィンダールーを歌った曲がイングランドのファンの非公式の応援歌になりました。

イギリスのヴィンダールーには、じゃがいもが入ることがあります。英語版ウィキペディアは、名前の「ルー」をヒンディー語のじゃがいも(アールー)と取り違えたためとし、伝統的なゴアのヴィンダールーにはじゃがいもは入らないとしています。マスカレニャスも Herald Goa の記事で、材料を知らずに、じゃがいもの入ったヴィンダールーと取り違える人が多いと話しています。

イギリスのカレーの本の著者パット・チャップマンは、イギリスのヴィンダールーはポルトガル料理を元にしたものではなく、店の定番の中くらいの辛さのカレー(マドラス・カレー)に、酢とじゃがいもとたっぷりの唐辛子を足したものだという説を唱えています。グラシアス博士も、ヴィンダールーという名前の料理はチェンナイやベンガルなどにもあるが、中身は別の料理だと話しています。

ゴアのヴィンダールーにもカシュミーリー・チリがたっぷり入りますが、カシュミーリー・チリは色が濃いわりに辛さが穏やかです。ジェシーは、伝統的なヴィンダールーは酸味にほのかな甘みがあり、辛くはないと書いています。

地域と家庭による違い

グラシアス博士によると、ヴィンダールーは、ゴアの中でもバルデス、ティスワディ、サルセテの地域によって作り方に違いがあります。

  • 唐辛子:グラシアス博士によると、最近は高価なカシュミーリー・チリの代わりに、アーンドラ・プラデーシュ州の長い唐辛子を使うこともあります。
  • タマリンド:ムンバイの神父のブログ PottyPadre が紹介している古い手書きのレシピのように、酢と一緒にタマリンドを加える作り方もあります。
  • フェニ:ジェシーのレシピでは、煮込みの途中で、ゴアの蒸留酒フェニ(ヤシのものかカシューのもの)を大さじ1加えることもできるとしています。
  • 漬け込まない作り方:PottyPadre のレシピは、豚肉を漬け込まずにマサーラーと炒め、ぬるま湯で煮てから、酢と砂糖と塩を加えます。青唐辛子も入れます。
  • ほかのスパイス:ジェシーのレシピではカルダモンは入れても入れなくてもよいとしています。ジョアニータのレシピでは、マスタードシードとナツメグも加えます。ジェシーの母親は、マスタードシードもフェヌグリークも入れなかったそうです。
  • 鶏肉や羊肉で作る:The Goan の記事で、ゴアのレストランを営んでいたマルガリーダ・タヴォラは、鶏肉やエビのヴィンダールーはずっと後になって、観光客向けに作られるようになったと話しています。シェフのピーター・フェルナンデスは、ヴィンダールーは主に豚肉で作るが、ほかの肉でも作れて、羊肉のヴィンダールーもとてもおいしいとしています。この記事の配合で作るなら、豚肉の代わりに骨つきの鶏もも肉1kgをぶつ切りにして使い、手順8で煮る時間を30〜40分にします。羊の肩肉1kgなら、煮る時間は豚肉と同じです(どちらもこの記事の目安です)。

手に入りにくい材料の代用

  • カシュミーリー・チリ(ホール):色が濃く、辛さは穏やかな唐辛子です。カシュミーリー・チリパウダー7.5g(大さじ1)で代用できます。手順2は省き、手順4でココナッツビネガーと一緒にミキサーに入れます。パウダーもなければ、パプリカパウダー7.5g(大さじ1)に一味唐辛子0.5g(小さじ1/4)を加えます。
  • ココナッツビネガー:米酢150mlで代用できます。ポルトガルの元の料理にならって、白ワインビネガー150mlを使ってもよい味になります。
  • 豚バラ:豚肩ロースだけで作るときは、1kgにして、サラダ油を39g(大さじ3)に増やします。

保存

  • 冷蔵:保存容器に入れて3日。翌日は酢の角が取れて味がなじみます
  • 冷凍:1か月。冷蔵庫で解凍し、鍋で中まで熱くなるまで温め直します

西インドのほかのレシピ

もっと知りたい人へ

  • Gilda Mendonsa『The Best of Goan Cooking』(英語)ゴアの家庭料理の定番の料理書Amazonで見る
  • ハロルド・マギー『マギー キッチンサイエンス』食べものと調理の科学を幅広く解説した、料理科学の定番Amazonで見る楽天で見る
  • J. Kenji López-Alt『The Food Lab』(英語)家庭料理の手順を実験で確かめた料理科学の本Amazonで見る楽天で見る

出典

本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。