プローン・バルチャオPrawn Balchão レシピ
सुंगटाचो बालच्यांवスングターチョ・バールチャーンヴ

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プローン・バルチャオは、インド西海岸のゴアで、えびを酢と唐辛子のペーストで煮込む料理です。酢をたっぷり使い、甘さと辛さと酸っぱさが重なる濃い味で、ゴアでは漬物(ピクルス)にたとえられ、瓶に詰めて保存されてきました。
えびは先に油で焼き色がつくまで焼きます。玉ねぎは砂糖を加えて1時間近く、ジャムのようにまとまるまで炒めます。そこに酢で挽いたカシュミーリー・チリのマサーラー(香辛料のペースト)を合わせるので、色は濃い赤茶色です。
プローン・バルチャオとは
ゴアの言葉であるコーンカニー語版のウィキペディアは、ゴアの魚料理を並べた中で、えびのバルチャオを「सुंगटाचो बालच्यांव」(スングターチョ・バールチャーンヴ)と書いています。スングターチョは「えびの」という意味です。同じページは別の箇所で「ボールチャーンヴ」とも綴っていて、英語やポルトガル語では balchão と書かれます。
雨季の備えの「漬物」
同じコーンカニー語版ウィキペディアは、バルチャオや、魚を使った「パーロ」は「プルメント」のために作られ、漬物のような料理だと説明しています。ゴアの新聞 Gomantak Times によると、プルメントはポルトガル語の provisão(蓄え)から来た言葉です。激しい雨で出かけにくく、市場にも行きにくくなる雨季に備えて、食べ物を買いためておく習わしを指します。
ゴアの新聞 Herald Goa のゴアの歴史の記事は、干したり漬けたりしたパーロやバルチャオのような魚介の料理が、雨季の食卓の定番だったとしています。ゴア料理のレシピサイト Xantilicious のザンティ・ピントも、生の魚が手に入らない雨季のために作っておくものだと書いています。
マカオやマラッカとの関わり
バルチャオの由来を、マカオの「バリシャオン」(balichão)や、マレー半島のマラッカと結びつける説明があります。ただし、書き手によって説明が違います。
- ポルトガル語版ウィキペディア:バリシャオンを、えびと蒸留酒、塩、こしょう、ローリエ、唐辛子などで作るマカオの調味料と説明しています。よく作ったものは涼しい場所で数か月もつとしています。そのうえで、バリシャオンはゴアの料理バルチャオの味つけに使われ、バルチャオの名前もバリシャオンから来たとしています。出典には、シェリー・Y・ハミルトンの料理書『Os sabores da lusofonia』を挙げています。
- Celebration In My Kitchen:母親が作っていたゴア料理のレシピを載せている書き手のサイトです。干しえびのバルチャオの記事で、バルチャオはポルトガル人がゴアに持ち込んだもので、マカオで生まれ、マカオではバリシャオンと呼ばれていると書いています。
- 英語版ウィキペディア:ポルトガル人がマラッカ(いまのマレーシアのムラカ)からゴアに持ち込んだ可能性が高いとし、マカオにはバリシャオンという関係のある料理があると書いています。ただし同じページは、出典を示さないまま、バルチャオと東南アジアのえびのペースト「ブラチャン」が似ているのは、1千年紀に東南アジアと交易したインドの商人によるものとする見方のほうが、より可能性が高いかもしれないとも書いています。
ポルトガル語版ウィキペディアの説明では、バリシャオンは数か月もつ調味料で、バルチャオはそれで味をつける料理なので、両者は同じものではありません。一方、Celebration In My Kitchen は、マカオではバルチャオをバリシャオンと呼ぶと書いています。この記事では、どの説明が正しいかは決めずに紹介します。
ゴアの酢
Herald Goa の記事は、漬物に欠かせないヤシの酢は、主にカトリックの人たちが使ってきたとしています。ゴア料理のレシピを載せている料理ブロガーのラクシャ・カマトも、えびのバルチャオの多くはゴアのトディ(ヤシの樹液を発酵させたもの)から作る酢で酸味をつけると書いています。カマト自身のレシピは、酢の代わりにタマリンドとライムで酸味をつける作り方です。
この記事の配合
この記事は、Celebration In My Kitchen の生のえびのバルチャオをもとにしました。えびに塩をして焼き色がつくまで焼き、玉ねぎを砂糖と一緒に1時間ほどかけて茶色く炒め、酢で挽いたマサーラーとトマトを加えて、えびを戻して煮る作り方です。分量は、えび1kgのこのレシピのほぼ半分にしました。
唐辛子とスパイスの量は、Celebration In My Kitchen、ゴアの料理サイト Goan Food Recipes のクライドのレシピ、ザンティ・ピントのレシピの間をとりました。3つのレシピは、どれもマサーラーを酢で挽きます。砂糖は Celebration In My Kitchen と同じ割合にしました。塩は、えびのおかずとしてそのまま食べられる量にしています。そのぶん、常温で長くおけるかは確かめていないので、冷蔵庫で保存します(「保存」の節)。
プローン・バルチャオのレシピ:材料(6人分)
下ごしらえ 40分(唐辛子を酢に浸す時間を含む) 加熱 1時間45分
- カシュミーリー・チリ7.5g
- クミン2g
- シナモン2g
- ターメリック1.5g
- 黒こしょう0.7g
- クローブ0.7g
えびの下ごしらえ
- えび(殻つき・頭なし、中くらいのもの)650g(むき身で約500g)
- 塩3g(小さじ1/2)
- サラダ油(えびを焼く)39g(大さじ3)
マサーラー(酢で挽くペースト)
炒めて煮る
- サラダ油90g(100ml)
- 玉ねぎ400g(中2個)
- 砂糖(玉ねぎを炒める途中で)9g(大さじ1)
- にんにく30g(6片)
- しょうが15g
- 完熟トマト150g(中1個)
- 砂糖(仕上げ)4.5g(小さじ1と1/2)
- 塩(仕上げ)3g(小さじ1/2)
作り方
えびに塩をする
えびの殻と尾をむき、背に浅く切り目を入れて背わたを除く。水で洗い、キッチンペーパーで水気をよく拭く。大きいものは1.5cm幅に切る。ボウルに入れて塩3gをまぶし、冷蔵庫で15分おく。
唐辛子を酢に浸す
カシュミーリー・チリ15本はヘタを取り、ココナッツビネガー150mlに30分浸して柔らかくする。
マサーラーをすりつぶす
シナモン5cmを手で小さく折る。クミン2g、黒こしょう15粒、クローブ8粒、シナモンをスパイスミルで細かい粉にする。ミキサーに、カシュミーリー・チリを浸したココナッツビネガーごと入れ、粉にしたスパイスとターメリック1.5gを加える。水は加えずに、指先でこすってもざらつかなくなるまで、なめらかなペーストにする。ミキサーの容器は洗わずにおく。
えびを焼く
えびの表面に出た水分をキッチンペーパーで拭き取る。フライパンにサラダ油の半量(大さじ1と1/2)を強めの中火で熱し、えびの半量を重ならないように並べる。水分ではねるので、ふたか網をかざしながら入れる。ときどき返しながら3〜4分、表面に焼き色がついて身が締まるまで焼き、キッチンペーパーに取る。残りの油とえびで同じように焼く。いちばん大きいえびを1切れ切って、中まで白く不透明になっていることを確かめる。
玉ねぎをじっくり炒める
玉ねぎ、にんにく、しょうがは、それぞれみじん切りにする。厚手の広い鍋にサラダ油90gを中火で熱し、玉ねぎを入れる。油がはねやすいので、鍋から体を離して入れる。弱めの中火にして、数分おきに鍋底から混ぜながら45〜60分炒める。20分ほどたったら砂糖9gを加える。全体が濃い茶色になり、ジャムのようにまとまったらよい。焦げそうなときは火を弱める。
にんにくとしょうがを炒める
にんにく30gとしょうが15gを加え、焦がさないように3〜4分、香りが立って柔らかくなるまで炒める。
マサーラーを炒める
換気扇を回す。マサーラーを加えて弱火にし、鍋底をこそげるように混ぜながら10〜15分炒める。酢と唐辛子の刺激のある湯気が立つので、顔を近づけない。マサーラーが濃くなり、縁に油がにじんできたらよい。
トマトを加える
完熟トマト150gを横半分に切って種を除き、切り口からおろし金ですりおろして、皮は除く。すりおろしたトマトをマサーラーの残ったミキサーの容器に入れて軽く回し、容器ごとすすぐようにして鍋に加える。混ぜながら5分煮る。
えびを戻して煮る
焼いたえび、砂糖4.5g、塩3gを加えて混ぜる。弱火で、ときどき混ぜながら10分煮る。ソースがえびにからむほど濃くなり、表面に赤い油が浮いてきたら火を止める。
冷まして瓶に詰める
鍋のまま完全に冷ます。熱湯をかけてよく乾かしたガラス瓶に、清潔な乾いたスプーンで詰め、表面が油でおおわれるようにする。ふたをして冷蔵庫に入れる。
炊いたご飯に少しずつのせて食べます。冷ましたらすぐに食べられます。瓶に詰めてから味をなじませる期間は、Celebration In My Kitchen は1週間、ザンティ・ピントは少なくとも1〜2週間としています。この記事の配合は冷蔵で1週間を目安にしているので(「保存」の節)、なじませるときも冷蔵庫に入れ、その期間のうちに食べきります。
料理科学:えびを焼いてから煮る理由
水分を減らし、焼いた香りをつける
手順4でえびを焼き色がつくまで焼くのは、えびの水分を減らすためと、焼いた香りをつけるためです。
えびは加熱すると縮んで水分が出ます。先に焼いて水分を飛ばしておくと、そのあと酢のマサーラーで煮ても、えびから出る水でソースが薄まりにくくなります。Celebration In My Kitchen の書き手も、えびをかりっとするまで焼くのは日持ちをよくするためでもあると書いています。
焼き色と香ばしい香りは、たんぱく質と糖が反応するメイラード反応によるものです。表面に水分が残っていると、水が蒸発するあいだ温度が100℃前後から上がらず、焼き色がつく前に身に火が通ってしまいます。手順4で焼く直前にもう一度水分を拭き取り、えびを重ならないように並べるのはそのためです。
玉ねぎに砂糖を加えて炒める
玉ねぎを長く炒めると、メイラード反応やカラメル化で茶色く色づき、甘く香ばしくなります。Celebration In My Kitchen のレシピでは、炒める途中で砂糖を加えて、玉ねぎをカラメル状にします。手順5で20分ほどたってから砂糖を加えるのは、このレシピにならったものです。砂糖は焦げやすいので、加えたあとは火を強くしすぎないようにします。
料理科学:酢・塩・砂糖・油で日持ちさせる仕組み
酢と塩と砂糖の働き
酢と塩と砂糖には、どれも微生物が増えるのを抑えるはたらきがあります。ピクルスやジャムのような保存食は、これらを十分な量使って、食べ物全体を微生物が増えにくい状態にしています。
バルチャオの酢と砂糖も、同じ働きをしています。ザンティ・ピントは読者への返信で、長く保存するには酢が必要だと書いています。ただし、保存の効き目は、酢と塩と砂糖が料理全体に対してどれだけ入っているかで変わります。この記事の配合は塩を控えめにしているうえ、手順7で炒める間に、酢のにおいの一部は湯気と一緒に飛びます。常温で長くおけるかは確かめていないので、冷蔵庫で保存します。
表面を油でおおう理由と、その限界
Goan Food Recipes のクライドは、長く保存するなら油を多めにして、瓶の中身の上に油が浮いているようにすると書いています。Celebration In My Kitchen も、表面を油でおおって瓶に詰めます。油の層は、中身が空気に触れるのを防ぎ、空気を好むかびなどがつきにくくなります。
一方で、微生物には、ボツリヌス菌のように空気のないところで増えるものもあります。油でおおっても、すべての微生物を防げるわけではありません。この記事で冷蔵庫に入れて保存するのは、そのためでもあります。
カマトは、取り分けるときはいつも清潔な乾いたスプーンを使うように書いています。Celebration In My Kitchen の干しえびのバルチャオの記事も、水分が入ると漬物が傷むとしています。
地域と家庭による違い
- 酢を使わない作り方:カマトのレシピは、酢の代わりにタマリンドで煮て、仕上げにライムを搾ります。マサーラーは、ヒング(アサフェティダ)を油で熱し、黒こしょうとマスタードシードを加えてはじけさせてから、冷ましてすり鉢ですりつぶします。カマトはこのバルチャオを、冷蔵庫で1週間ほど保存できるとしています。
- タマリンドや青唐辛子を加える:クライドのレシピは、マサーラーにしょうが、にんにく、タマリンドも入れて酢で挽きます。炒めるときにはカレーリーフと、千切りのしょうがを使い、最後に青唐辛子を加えます。
- えびを揚げる:ザンティ・ピントのレシピは、塩とターメリックをまぶしたえびを油で揚げ、酢をふりかけて1時間おいてから、マサーラーと合わせます。
- 干しえびで作る:Celebration In My Kitchen は、ガルンボ(干した小えび)のバルチャオも紹介しています。コーンカニー語版ウィキペディアも、干した小えびを、生の魚が手に入らないときにゴアの人が使う塩干しの魚介の一つに挙げています。
- ほかの具:Celebration In My Kitchen は、えびの代わりに身の締まった魚(サワラの仲間)、いか、豚肉でも作れるとしています。
- モーリョとの違い:Celebration In My Kitchen によると、魚介や豚肉を揚げてマサーラーで煮るのが「モーリョ」で、そこに玉ねぎや、ときにトマトも加えるのがバルチャオです。
手に入りにくい材料の代用
- カシュミーリー・チリ(ホール):色が濃く、辛さは穏やかな唐辛子です。カシュミーリー・チリパウダー7.5g(大さじ1)で代用できます。手順2は省き、手順3でココナッツビネガーと一緒にミキサーに入れます。パウダーもなければ、パプリカパウダー7.5g(大さじ1)に一味唐辛子0.5g(小さじ1/4)を加えます。
- ココナッツビネガー:米酢150mlで代用できます。
- 殻つきのえび:むきえび500gで代用できます。冷凍のものは冷蔵庫で解凍し、手順1と手順4で水気をよく拭きます。
保存
- 冷蔵:手順10の瓶に入れて1週間(この記事の目安)。取り分けるときは清潔な乾いたスプーンを使い、残りの表面が油でおおわれているようにします
- 冷凍:小分けにして1か月(この記事の目安)。冷蔵庫で解凍します
西インドのほかのレシピ
もっと知りたい人へ
出典
- Wikipedia「गोंयकार आनी नुस्तें」(コーンカニー語)
- Wikipedia「Balichão」(ポルトガル語)
- Celebration In My Kitchen「Goan Fresh Prawn Balchão」(英語)
- Celebration In My Kitchen「Galmbo (Dried Baby Shrimps) Balchão」(英語)
- Goan Food Recipes「Prawn Balchao: The Goan Prawn Pickle」(英語)
- Xantilicious「Prawn Balchão (Goan Prawn Pickle)」(英語)
- Raksha's Kitchen「Prawn Balchao Recipe – Goan Prawns Pickle (No Vinegar)」(英語)
- Herald Goa「Goa History: Monsoon Traditions; How Generations Prepared Seasonal Provisions to Preserve Culinary Heritage」(英語)
- Gomantak Times「'Purument', where Goa's monsoon meets culinary heritage」(英語)
- Wikipedia「Balchão」(英語)
本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。