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ローガン・ジョーシュ日本では「ローガンジョシュ」ともRogan Josh レシピ

روغن جوشローガン・ジョーシュ

地域
北インド(カシミール)
分量
4人分
公開
彫りのある銅の器に盛ったローガン・ジョーシュ。骨付きの羊肉が赤い油の浮いた濃い赤の汁に沈み、ブラックカルダモンがのぞく。奥にご飯

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ローガン・ジョーシュは、骨付きの羊肉を赤い油で煮込んだカシミールの料理です。深い赤色ですが、使うのは辛さの穏やかなカシュミーリー・チリなので、見た目ほど辛くありません。カシミールでは、ヒンドゥー教徒のパンディットの家庭と、イスラム教徒の宴席料理の両方で作られてきました。

ここではパンディットの家庭の作り方で作ります。玉ねぎもにんにくもトマトも使いません。羊の肩肉にヨーグルトをからめてマスタードオイルで炒め、乾燥しょうがとフェンネルの香りで2時間ほど煮込みます。

ローガン・ジョーシュとは

ウルドゥー語では「روغن جوش」と書きます。名前の由来には諸説あります。よく知られているのは、ペルシア語の「ローガン」(油、ギー)と「ジョーシュ」(煮え立つこと、熱、勢い)から、「熱い油で煮たもの」とする説です。ヒンディー語版ウィキペディアは、熱い油で作るからという説のほかに、色づけに使う植物「ラタンジョト」に由来するという説も紹介しています。カシミール語の「ローガン」(赤)から「赤い肉」と読む説もあります。

ワーズワーンと伝来の話

カシミールのイスラム教徒の宴席料理を「ワーズワーン」といい、それを作る専門の料理人を「ワーザ」といいます。ローガン・ジョーシュは、ワーズワーンで次々に出てくる羊肉料理の一品です。

カシミール出身の記者イフティカール・ギーラーニーは、ウルドゥー語の記事で、14世紀にティムールを恐れて中央アジアから移ってきた職人たちがワーズワーンを伝え、カシミールの人々が育てたと書いています。一方、書き手のヴィクラム・ズトシは、ティムールの軍に付いてきた宮廷の料理人たちが伝えたとしています。地元紙グレーター・カシミールの記事(ウペンドラ・カウル)は、ティムールの時代にサマルカンドから来た料理人(ワーザ)が始まりだとする説が最も広く知られているとしています。

また、パンディット料理の店マタマールなどは、ペルシアの料理がムガル帝国の人々によってカシミールに持ち込まれたと説明しています。いずれも伝承として語られている説です。なお、唐辛子がインドに伝わったのは16世紀以降なので、いまのように唐辛子で赤く仕上げる形になったのはそれより後のことです。

パンディット式とムスリム式

ローガン・ジョーシュは、パンディットの家庭にも、イスラム教徒(ムスリム)の家庭や宴席にもある料理です。カシミールにルーツを持つ書き手ヴィクラム・ズトシは、共通の料理だが、パンディットは玉ねぎやにんにくを使わないと書いています。違いをまとめると、次のようになります。

  • 香りのもと:パンディット式は、玉ねぎ・にんにくの代わりにヒング(アサフェティダ。セリ科の植物の樹脂で、炒めると玉ねぎやにんにくに似た香りが出る)を使います。ムスリム式は、にんにくと「プラーン」(カシミールの小さなエシャロット)を使います。ワーズワーンでは、玉ねぎとプラーンを1kgずつ揚げてすりつぶし、湯でのばした乳液を最初に仕込み、多くの料理の土台にします。
  • ヨーグルト:パンディット式はヨーグルトで肉を煮込み、酸味とこくをつけます。インドの料理作家タラ・デーシュパーンデーは、ムスリム式はヨーグルトを使わないと書いています。一方で、カシミール出身の主婦レーハナ・クンサルの家庭のレシピは、エシャロットとしょうが・にんにくに加えてヨーグルトも使っており、家庭によって幅があります。
  • 赤い色:パンディット式は、カシュミーリー・チリと「ラタンジョト」(ムラサキ科の植物の赤紫色の根)で色をつけます。ムスリム式のワーザは「マワル」(ケイトウの花を乾かしたもの)を水で煮出した赤い汁を使います。
  • 香辛料と肉:パンディット式は、乾燥しょうがの粉とフェンネル(ウイキョウの種)の粉を多めに使います。デーシュパーンデーによれば、パンディット式は肩肉、ムスリム式はヤギのあばら肉を使うことが多いそうです。

この記事はパンディット式で作ります

S. S. カウル・キラムとシャーム・ラーニー・キラムの料理書『De Leij: Culinary Art of Kashmir』の、パンディットの羊肉料理の章にあるレシピを土台にしました。ヨーグルトをからめた肉をマスタードオイルで炒め、水で溶いた唐辛子を煮詰め、乾燥しょうがとフェンネルで煮込む作り方です。ホールスパイスには、マタマールが挙げるブラックカルダモンとシナモンを足しました。

パンディット式を選んだ理由は3つあります。まず、数値までそろったカシミールの人の一次情報がパンディット式だったこと。次に、ムスリム式の色と香りの柱になるマワルとプラーンが、日本では手に入りにくいこと。そして、玉ねぎとトマトを使わないので、お店でよく見るローガン・ジョーシュとの違いがはっきりわかることです。

ローガン・ジョーシュのレシピ:材料(4人分)

下ごしらえ 20分 加熱 3時間

スパイスの配合 4人分で計25.7g
  • カシュミーリー・チリ7.5g
  • ドライジンジャー4g
  • フェンネル4g
  • ブラックカルダモン2g
  • クミン2g
  • ガラム・マサーラー2g
  • ターメリック1.5g
  • ラタンジョト1g
  • シナモン1g
  • クローブ0.4g
  • ヒング0.3g

肉の下ごしらえ

  • 骨付き羊肉(肩)(ラムまたはマトン。5〜6cmのぶつ切り)(楽天)1kg
  • プレーンヨーグルト(無糖)200g

合わせ水

  • ヒング(アサフェティダ)(市販品の多くは小麦粉などを混ぜた粉)(Amazon|楽天)0.3g(小さじ1/8)
  • 水(ヒング用)15ml(大さじ1)
  • カシュミーリー・チリパウダー(Amazon|楽天)7.5g(大さじ1)
  • ターメリックパウダー(Amazon|楽天)1.5g(小さじ1/2)
  • 砂糖3g(小さじ1)
  • 水(唐辛子用)120ml

炒める

  • マスタードオイル(Amazon|楽天)110g(120ml)
  • ラタンジョト(乾燥した根)(楽天)1g(3〜4cm)
  • クローブ(ホール)(Amazon|楽天)5粒(0.4g)
  • ブラックカルダモン(ホール)(Amazon|楽天)2個(2g)
  • シナモン(ホール)(Amazon|楽天)3cm(1g)
  • クミン(ホール)(Amazon|楽天)2g(小さじ1)
  • 塩9g(小さじ1と1/2)

煮込む

  • 湯480ml
  • ドライジンジャーパウダー(乾燥しょうがの粉)(Amazon|楽天)4g(小さじ2)
  • フェンネルパウダー(Amazon|楽天)4g(小さじ2)

仕上げ

道具

  • 厚手の鍋(ふたつき・直径22〜24cm)

作り方

  1. 肉にヨーグルトをからめる

    肉は骨ごと5〜6cmのぶつ切りにし(精肉店で切ってもらうとよい)、キッチンペーパーで水気をふく。ヨーグルト200gをなめらかになるまで混ぜて肉にからめ、室温で15分おく。

  2. 合わせ水を作る

    小さな器でヒング0.3gを水15mlに溶く。別の器にカシュミーリー・チリパウダー7.5g、ターメリックパウダー1.5g、砂糖3gを入れ、水120mlで溶く。

  3. 油にラタンジョトの色を移す

    換気扇を回す。厚手の鍋にマスタードオイル110gを入れて強めの中火で熱し、うっすら煙が立ったら火を止めて1分おく。ラタンジョト1gを入れて1分おき、油が濃い赤になったら取り出す。

  4. ホールスパイスと肉を炒める

    ブラックカルダモンは軽くつぶす。鍋を中火にかけ、クローブ、ブラックカルダモン、シナモン、クミンを入れて30秒炒める。油がはねるので、肉は鍋の縁から静かにヨーグルトごと加え、塩9gとヒングの水を加える。混ぜながら中火で20〜25分、ヨーグルトの水分がとんで肉の表面が茶色く色づき、油が鍋肌に分かれてくるまで炒める。鍋底が焦げつきそうなら弱めの中火に落とす。

  5. 唐辛子の色を油に移す

    唐辛子の合わせ水(120ml)を加え、混ぜながら中火で5〜10分煮詰める。水分がほぼなくなり、油が赤く澄んで鍋肌に分かれてきたらよい。

  6. 弱火で煮込む

    湯480ml、ドライジンジャーパウダー4g、フェンネルパウダー4gを加えて混ぜる。煮立ったらごく弱火にし、ふたをして1時間30分〜2時間煮る。煮汁の表面がときどきふつふつする程度に保ち、20分ごとに鍋底から混ぜる。肉が骨から外れるくらい柔らかくなればよい。

  7. 煮詰めて仕上げる

    ふたを外して中火にし、5〜10分、煮汁が肉にからんで表面に赤い油が浮くまで煮詰める。ガラム・マサーラー2gとギー4gを加えて混ぜ、2〜3分煮て火を止める。

カシミールでは、炊いた白いご飯と一緒に食べます。

料理科学:骨付きの肩肉を弱火で2時間煮る理由

結合組織がゼラチンに変わるのを待つ

羊の肩やすねのようによく動かす部位には、筋肉の繊維を束ねる結合組織が多く含まれています。結合組織の主な成分はコラーゲンというたんぱく質で、そのままでは硬く、かみ切れません。

コラーゲンは、長い時間をかけて煮ると、少しずつゼラチンに変わります。ゼラチンに変わると、肉はほぐれるように柔らかくなります。骨付きの肩肉を2時間近く煮込むのはそのためです。

ぐらぐら煮立て続けると、肉が締まってぱさつきやすくなります。手順6で、ふたをして煮汁の表面がときどきふつふつする程度に保つのはそのためです。

骨がとろみを足す

骨のまわりには腱や軟骨が付いていて、これもコラーゲンを多く含みます。骨付きのまま長く煮ると、溶け出したゼラチンが煮汁に入り、口当たりにとろみが出ます。パンディット料理の店マタマールも、骨が煮汁にこくと厚みを与えるとして、骨付きの羊肉を欠かせないとしています。骨なしの肉で作ると、煮汁のとろみはやや軽くなります。

料理科学:赤い色を油に移す理由

唐辛子の赤を油に移す

ローガン・ジョーシュで表面に赤い油が浮くのは、カシュミーリー・チリの赤い色が油に移っているからです。

手順5では、唐辛子の粉をいきなり熱い油に入れず、水で溶いてから加えます。水が残っている間、鍋の中はおおむね100℃前後に保たれるので、粉が焦げずにすみます。水分が蒸発していくにつれて、色素が油に移り、油が赤く澄んできます。

ラタンジョトは油に、マワルは水に

ラタンジョトとマワルでは、赤い色素の性質が違います。

ラタンジョトの赤紫色は、アルカンニンやシコニンと呼ばれる色素です。日本で紫根染めに使うムラサキの根と同じ仲間の色素で、水にはほとんど溶けず、油によく溶けることが知られています。手順3でラタンジョトを熱い油に浸すのは、この性質に合わせたためです。なお、デーシュパーンデーが紹介するパンディット式のレシピでは、ラタンジョトをマワルと同じように水で煮出して使っています。

マワル(ケイトウの花)の赤は、ベタシアニンという別の種類の色素です。こちらは水に溶け、長く加熱すると色があせやすい性質があります。マワルを水で煮出して汁を使うのは、この性質に合った方法です。下で紹介するワーザの作り方では、肉をだしで30分煮てから取り出し、そのだしにペーストとマワルの汁を加えて煮ていきます。

ムスリム式で作るには

ムスリム式は、材料だけでなく作り方の流れから違います。デーシュパーンデーは、シュリーナガルの名の知れたワーザで、父も祖父もワーザだったグラーム・モハンマド・バンダーリーから教わった作り方を、あばら肉1kg分の分量で紹介しています。要点は次のとおりです。

  • だしをとる:あばら肉(チャンフ)を水2Lで5分ゆでて、湯を捨てます。新しい水2Lに、にんにく(カシミールの一片種なら3片、普通のにんにくなら6〜8片)、ブラックカルダモン2個、グリーンカルダモン3粒、クローブ3粒、シナモン3片、塩小さじ1を入れ、肉を30分煮ます。肉を取り出し、煮汁をこしてだしにします。ヨーグルトもヒングも使いません。
  • ペーストを作る:プラーン6個を、ギー大さじ2と油1/2カップで、きつね色に柔らかくなるまで炒め、だしを少し加えてなめらかにすりつぶします。乾燥したカシュミーリー・チリ8本は、へたと種を除いて水1カップで煮て、水分がほぼなくなったらペーストにします。
  • 色をとる:乾燥したマワル50gを水1Lで煮出し、1/2カップまで煮詰めてこします。
  • 煮る:だしにプラーンと唐辛子のペースト、ターメリック小さじ1/2、マワルの汁を加え、肉を戻して、ふたをせずに中火で煮ます。とろみがつきはじめたらサフラン8本を加え、肉が柔らかくなり煮汁が濃くなるまで煮て、塩で味を調えます。最後に、グリーンカルダモン1粒の種をすりつぶしてふります。

パンディット式は、ヨーグルトをからめた肉を油で炒めてから煮込みます。ムスリム式は肉を炒めず、だしで煮ていきます。デーシュパーンデーも、パンディット式は焼き付けてから蒸し煮にし、ムスリム式はゆでて煮ると書いています。

お店のローガン・ジョーシュとの違い

インドのレストランやダーバー(街道沿いの食堂)のローガン・ジョーシュは、玉ねぎとトマトをたっぷり使うものが多くあります。インドの料理史家プシュペーシュ・パントは、これはパンジャーブ式に作り変えたもので、カシミールの伝統とはほとんど関係がないと書いています。デーシュパーンデーも、カシミールで食べたり作るのを見たりしたローガン・ジョーシュに、トマトの入ったものは一つもなかったとしています。

酸味はトマトではなくヨーグルトから、赤い色はトマトではなく唐辛子とラタンジョトから来るのが、カシミールのローガン・ジョーシュです。

手に入りにくい材料の代用

  • 骨付き羊肉(肩):ラムの骨付きすね肉(シャンク)1kgでも作れます。結合組織がさらに多いので、手順6の煮込みは2時間を目安にします。骨なしのラム肩肉を使うなら800gにします。煮汁のとろみは軽くなります。
  • ラタンジョト:省いても作れます。色は唐辛子だけになり、やや明るい赤に仕上がります。
  • ヒング:省くと、パンディット式の香りの柱がひとつ欠けます。にんにくで代用するとムスリム式に近い味になります。
  • マスタードオイル:サラダ油で代用できます。マスタードオイル特有のツンとした香りはなくなります。
  • カシュミーリー・チリパウダー:色が濃く、辛さは穏やかな唐辛子の粉です。パプリカパウダーを同じ量使い、辛みを足したいときは一味唐辛子を小さじ1/4まで加えます。
  • ブラックカルダモン:グリーンカルダモン3粒で代用できます。ブラックカルダモンの燻したような香りはなくなります。
  • フェンネルパウダー:フェンネルシード4g(小さじ2)を、すり鉢やミルで粉にして使います。
  • ギー:食塩不使用バターを使います。

保存

  • 冷蔵:保存容器に入れて3日
  • 冷凍:1か月。温め直すときは、鍋に入れて水30mlを足し、混ぜながら中火で中心まで十分に温めます

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出典

本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。