サーンバール日本では「サンバル」ともSambar レシピ
சாம்பார்サーンバール

この記事はAmazonアソシエイト・楽天アフィリエイトのリンクを含みます。
サーンバールは、トゥール・ダール(皮をむいて割ったキマメ)を、タマリンドの酸味をきかせた汁で野菜と一緒に煮た、南インドの豆の汁料理です。タミル・ナードゥでは、ごはんに混ぜて食べるほか、イドゥリ(米と豆の蒸しパン)やドーサイ(米と豆の薄焼き)にも添えます。
味の芯になるのは、コリアンダーや赤唐辛子、ダール(挽き割りの豆)を炒って挽いたサーンバール・パウダーです。タミル語ではサーンバール・ポディと呼びます。この記事では、1回分のパウダーをそのつど炒って挽きます。豆は先に柔らかく煮ておき、野菜をタマリンドの汁とパウダーで煮てから合わせ、最後にテンパリングをかけます。テンパリングは、熱した油でスパイスを炒めて香りを移し、その油ごと料理にかけることです。
サーンバールとは
タミル語ではサーンバール(சாம்பார்)と書きます。日本ではサンバール、サンバルとも表記されます。英語版ウィキペディアによれば、カルナータカのカンナダ語圏では「サール」、海沿いのトゥル語圏では「コッデル」とも呼ばれます。
タンジャーヴールのマラーター王家の伝承
サーンバールの名前は、マラーター王国のサンバージーにちなむ、という伝承がよく知られています。舞台は、タミル・ナードゥのタンジャーヴール(タンジョール)です。
タミル語の雑誌ヴィカタンのウェブ版(2017年)によれば、1674年に、シヴァージーの異母兄弟ヴェンコージーがタンジャーヴールを手に入れ、マラーター人の王朝が始まりました。ヴェンコージーのあとを継いだシャーフージー(在位1684〜1712年)は、「アームティ」という酸味のある豆の煮込みを好んでいたとされています。マラーター人はアームティの酸味に、マハーラーシュトラなどで採れるコークムという果実を使っていました。
あるとき宮廷の厨房でコークムが切れ、料理人がタミルの土地で採れるタマリンドに、トゥール・ダールと野菜とスパイスを合わせて煮込みを作ったと伝えられています。これがシヴァージーの長男サンバージーを招いた宴にも出され、彼の名にちなんで「サーンバール」と呼ばれるようになった、というのがヴィカタンの紹介する話です。
同じ伝承でも、細部は語り手によって違います。タミル語の雑誌カルキのウェブ版に載った記事は、舞台をヴェンコージー(エーコージー)の宮殿とし、1680年代に叔父を訪ねたサンバージーのために、料理人がコークムの代わりにタマリンドを使ったとしています。インドのウェブメディア、ザ・ベター・インディア(2016年)は、アームティが好きだったサンバージー自身が、コークムが届かずにタマリンドで試したという形で紹介しています。
ヴィカタンは、マラーター王家の料理を記した写本がタンジャーヴールのサラスヴァティ・マハル図書館に残っていることも紹介しています。ザ・ベター・インディアは、食文化史家のプシュペーシュ・パントがこの説を支持しているとし、その理由として、タンジャーヴールのマラーター時代より前にサーンバールの記録がないことを挙げています。
伝承を疑う声と、もっと古い記録
一方で、インドのニュースサイト、ザ・ニュース・ミニット(2021年)は、この伝承には文書の裏付けがないと書いています。同じ記事は、食物史家K・T・アチャヤの著書を引いて、1648年のカンナダ語の伝記『カンティーラヴァ・ナラサラージャ・ヴィジャヤ』に「フリ」という料理が出てくると紹介しています。フリはトゥール・ダールとゆでた野菜で作る料理で、スパイスの配合が変わって、いまのタミル・ナードゥのサーンバールになったのかもしれない、としています。ザ・ベター・インディアは、このフリを、トゥール・ダールを野菜とジャガリー(粗糖)とココナッツで煮たものと紹介しています。
英語版ウィキペディアは、さらに別の見方も載せています。ソウリシュ・バッタチャーリヤ(2023年)は、シャーフージーとサンバージーの父どうしは異母兄弟で仲が悪かったと指摘し、伝承に疑問を示しています。また、1517年ごろのテルグ語の詩『アームクタマールヤダ』を英訳したシュリーニヴァース・シストラは、詩の中のことばをサーンバールの材料と訳し、16世紀にはサーンバールがタミルの料理に根づいていたと考えている、としています。ヴィカタンも、サーンバールはタミル・ナードゥより先にアーンドラで作られていたという声があることに触れています。
ザ・ニュース・ミニットは、サーンバールの本当の起源はいまも謎に包まれているのかもしれない、としています。
サーンバールのレシピ:材料(4人分)
下ごしらえ 45分(豆の浸水30分を含む) 加熱 1時間10分
- コリアンダー10g
- 赤唐辛子2.3g
- マスタードシード1.8g
- ターメリック1.5g
- クミン1g
- フェヌグリーク1g
- 黒こしょう0.7g
- ヒング0.5g
サーンバール・パウダー
野菜を煮る
- 太白ごま油(焙煎していない透明なごま油)13g(大さじ1)
- 小玉ねぎ(ペコロスかエシャロット。皮をむいて丸ごと)100g(10〜12個)
- ドラムスティック(モリンガのさや。冷凍でもよい)(楽天)100g(1本)
- トマト150g(1個)
- 青唐辛子1本
- 水200ml
味つけ
- 塩12g(小さじ2)
テンパリング
仕上げ
- パクチー(コリアンダーの葉)(粗く刻む)5g(大さじ2)
作り方
豆を浸水する
トゥール・ダール150gを、水を替えながら3〜4回洗う。水500mlに30分浸す。
タマリンドを浸す
タマリンド25gを小さくちぎってボウルに入れ、湯300mlを注いで20分おく。
パウダーの材料を炒る
小さなフライパンを弱めの中火で熱し、油をひかずに材料をひとつずつ炒って、そのつどバットに取り出す。コリアンダー10gは2〜3分、色が少し濃くなって香りが立つまで。赤唐辛子6本は1分、ふくらんで色が少し濃くなるまで(むせる煙が出るので換気扇を回す)。トゥール・ダール4gとチャナー・ダール4gは2〜3分、薄いきつね色になるまで。最後にクミン1g、黒こしょう0.7g、フェヌグリーク1gを一緒に1分、フェヌグリークが薄い茶色になるまで炒る。黒く焦げると苦くなるので、ずっと混ぜ続ける。
冷ましてから挽く
炒った材料をバットに広げて10分冷ます。完全に冷めたらスパイスミルに入れ、細かい粉になるまで挽く。これがサーンバール・パウダーになる。
豆を煮る
浸水した豆をざるに上げて水をきる。厚手の鍋に豆、水600ml、ターメリック1.5gを入れて中火にかける。煮立って白い泡が浮いてきたらすくい、弱火にする。ふたを1〜2cmずらしてのせ、ときどき鍋底から混ぜながら40〜50分、豆が指で簡単につぶれて形がなくなるまで煮る。お玉の背で全体をなめらかにつぶす。
タマリンドの汁をこす
豆を煮ているあいだに、タマリンドを浸した湯の中でよくもみほぐす。目の細かいざるでこして汁を取り、ざるに残った筋と種は捨てる。
野菜を下煮する
小玉ねぎは皮をむいて丸ごと使う。ドラムスティックは7cm長さに切り、太いものは縦半分にする。トマトはざく切りにし、青唐辛子は縦に切り目を入れる。鍋に太白ごま油13gを中火で熱し、小玉ねぎ100gを2分炒める。ドラムスティック100g、トマト150g、青唐辛子1本を加えて1分炒め、水200mlを加える(油がはねるので、水は鍋の縁から注ぐ)。ふたをして弱めの中火で8〜10分、ドラムスティックに竹串が少し抵抗を残して通るまで煮る。
タマリンドとパウダーで煮る
タマリンドの汁全量、サーンバール・パウダー全量、塩12gを加えてよく混ぜる。ふたをせずに中火で10分、タマリンドの生っぽい酸味と粉っぽさがなくなり、ドラムスティックが柔らかくなるまで煮る。
豆を合わせる
つぶした豆を加えて混ぜ、煮立ったら弱めの中火にして5分煮る。豆が鍋底につきやすいので、ときどき底から混ぜる。火を止める。
テンパリングをする
小さなフライパンに太白ごま油13gを中火で熱し、マスタードシード1.8gを入れる。パチパチと弾け始めたら(30秒〜1分)、種が飛ぶのでふたを半分かぶせる。弾ける音が落ち着いたら赤唐辛子1本とヒング0.5gを加えて5秒混ぜ、カレーリーフ10枚を加えて10秒炒める(葉の水分で油がはねるので注意)。
テンパリングをかけて休ませる
熱いうちに、テンパリングを油ごと鍋に回しかける(油がはねるので、顔を近づけない)。すぐにふたをして5分おく。パクチー5gを散らして軽く混ぜる。
ごはんにかけて混ぜ、ギーを少したらして食べます。イドゥリやドーサイに添えてもおいしく食べられます。
豆を先に煮て、タマリンドはあとから
豆は水だけで先に煮る
この記事で参考にしたタミル語のサーンバールのレシピ5件は、どれもトゥール・ダールを先に別に柔らかく煮ておき、あとからタマリンドの汁と合わせています。この記事もその順番にしています。先に水だけで豆を煮崩しておけば、あとはタマリンドの汁と合わせて、味をなじませるだけです。
野菜も、タマリンドを入れる前に下煮する
この記事では、ボールドスカイのコインバトール風のレシピにならい、野菜をまず水で下煮してから、タマリンドの汁を加えます。下煮で竹串が少し抵抗を残して通るところまで柔らかくしておき、タマリンドの汁とパウダーで煮るあいだに仕上げます。
塩をタマリンドの汁と一緒に入れるのは、別に煮た豆と野菜の汁を合わせる前に、味を一度に決めるためです。
パウダーの焙煎とテンパリング
材料をひとつずつ炒る理由
マーライマラルのサーンバール・パウダーのレシピも、カルキ・オンラインのチェッティナードゥ風のレシピも、材料をひとつずつ別々に炒るよう書いています。粒の大きさと硬さがそれぞれ違い、火の通り方も違うためと考えられます。大粒で軽いコリアンダーと、厚みのあるダールは火が通るのに時間がかかり、小さなクミンやフェヌグリークはすぐに焦げます。
炒ると、スパイスや豆の表面でメイラード反応が起き、焼いた香ばしい香りが生まれます。メイラード反応は、アミノ酸と糖が反応して色と香りをつくる反応です。ただし進みすぎると焦げて苦みが出ます。カンナダ語のボールドスカイの記事も、コリアンダーを黒くなるまで炒ると苦くなると注意しています。
フェヌグリークは甘い香りのあるスパイスで、粒が小さく焦げやすいので、最後に短い時間で炒ります。
冷ましてから挽き、使う直前に挽く
スパイスは、粉にすると香りが飛びやすくなります。マーライマラルやウェブドゥニヤ、カルキ・オンラインのチェッティナードゥ風のパウダーは、まとめて作ります。マーライマラルは5か月、カルキ・オンラインのチェッティナードゥ風は6か月ほど保存できるとしています。一方、ティンナイの2つ目の作り方は、1回分をそのつど炒って挽いています。この記事が1回分だけ作るのも、挽きたての香りを使うためです。
炒った材料を冷ましてから挽くのは、ウェブドゥニヤやカンナダ語のボールドスカイのレシピと同じ手順です。
テンパリングは最後に
豆と野菜を煮ている鍋の中は、水分があるかぎり100℃前後までしか上がりません。小さなフライパンの油はそれよりずっと高い温度まで上がり、煮るだけでは出ない香ばしさが生まれます。油で炒めると、スパイスの香りが油に移ります。
ヒングは、乾燥させた樹脂を粉にしたスパイスです。粉は数秒で焦げるので、マスタードシードが弾け終わってから加え、すぐにカレーリーフを入れて炒めます。
スパイスの香りは、長く煮るほど飛んでいきます。テンパリングを最後にかけ、すぐにふたをするのは、炒めたての香りを鍋の中にとどめるためです。カルキ・オンラインの家庭のレシピも、テンパリングをかけたらふたをして休ませています。
地域や家庭による違い
- パウダーの配合:タミル語のレシピでも配合はさまざまです。マーライマラルはクミンが多く、ウェブドゥニヤはコリアンダーが多めです。カルキ・オンラインのチェッティナードゥ風は、ウラド・ダール(皮をむいた黒いケツルアズキ)、生米、フェンネル、ターメリックも炒って挽きます。
- アラチュヴィッタ・サーンバール:パウダーを使わず、コリアンダーや赤唐辛子などをその場で油で炒って挽き、ペーストにして加える作り方です。ティンナイの2つ目の作り方はチャナー・ダールを、ボールドスカイのコインバトール風のレシピはココナッツを一緒に挽きます。
- カルナータカのサーンバール:カンナダ語のボールドスカイのパウダーは、チャナー・ダールとウラド・ダールが多く、カルナータカのビャーダギ唐辛子とカレーリーフも一緒に挽きます。英語版ウィキペディアによれば、海沿いのトゥル語圏では、すりおろしたココナッツをスパイスと一緒に挽いて加えます。
- テンパリングの順番:ティンナイのレシピは、テンパリングを先にタマリンドの汁に入れて煮立て、それから豆と合わせます。最後に水で溶いた米粉を加えて、とろみをつけます。
- ギーで仕上げる:カルキ・オンラインの家庭のレシピはテンパリングをギーで行い、ボールドスカイのコインバトール風のレシピは仕上げにギーをかけます。この記事のテンパリングの太白ごま油を、同じ重さのギーに替えてもかまいません。
- 圧力鍋で煮る:タミル語のレシピの多くは、トゥール・ダールを圧力鍋で煮ています。この記事では、圧力鍋がなくても作れるように普通の鍋で煮ています。
手に入りにくい材料の代用
- トゥール・ダール:レッドレンズ豆(皮なし)を同じ重さ使えます。浸水はせず、手順5で15〜20分煮ます。とろみは強くなり、豆の香りは軽くなります。
- チャナー・ダール:省いて、パウダー用のトゥール・ダールを8g(小さじ2)にします。
- ドラムスティック:なす100g(1本)を乱切りにして使えます。オクラ8本を使うときは、手順7の下煮を省き、手順8でタマリンドの汁と一緒に加えます。
- 小玉ねぎ:玉ねぎ100gをくし形に切って使えます。
- 赤唐辛子(ホール):日本の鷹の爪は辛みが強いので、パウダー用は3本にします。
- カレーリーフ:乾燥のものを同じ枚数使えます。香りは弱くなります。手に入らなければ省きます。
- ヒング:省けます。テンパリングの香りが少し軽くなります。
- タマリンド:濃縮のタマリンドペーストを使うときは、湯300mlに大さじ1を溶き、手順8で味をみて足します。製品によって濃さが違います。
- 太白ごま油:サラダ油を同じ量使えます。
- サーンバール・パウダー:手順3と4を省き、市販のサーンバール・パウダー(Amazon|楽天)20g(大さじ3)を使えます。カルキ・オンラインの家庭のレシピも、市販のパウダーでよいとしています。
保存
- 冷蔵:保存容器に入れて2日。冷えるととろみが強くなるので、水50mlを加えて弱火で温め直します
- 冷凍:手順9まで終えた状態で1か月。解凍して温め直してから、手順10と11を行います
- サーンバール・パウダーを多めに作ったとき:密閉できる瓶に入れて冷暗所に置き、1〜2か月で使い切ります。挽きたてほど香りが強いので、少量ずつ作るのがおすすめです
南インドのほかのレシピ
もっと知りたい人へ
出典
- Webdunia(タミル語版)「சுவையான முருங்கைக்காய் சாம்பார் செய்ய !!」(タミル語)
- Kalki Online「சாம்பார் சரியாக வரவில்லையா? இந்த முறையில் செய்தால் சாம்பார் ஒரு சுவையான அமிர்தம்!」(タミル語)
- Kalki Online「இட்லிக்கு ஏற்ற மணமணக்கும் செட்டிநாடு சாம்பார்! ரகசிய பொடி அரைப்பது எப்படி?」(タミル語)
- Boldsky(タミル語版)「கோயம்புத்தூர் ஸ்டைல் முருங்கைக்காய் சாம்பார்」(タミル語)
- Thinnai「பருப்பு குழம்பு (சாம்பார்)」(タミル語)
- Maalaimalar「வீட்டிலேயே எளிய முறையில் சாம்பார் பொடி செய்யலாம் வாங்க...」(タミル語)
- Webdunia(タミル語版)「வீட்டிலேயே சாம்பார் பொடி செய்வது எப்படி...!」(タミル語)
- Boldsky(カンナダ語版)「ಸಾಂಬಾರ್ ಪುಡಿ ಈ ಹದದಲ್ಲಿ ಮಾಡಿದರೆ ಘಂ ಎನ್ನುವ ಪರಿಮಳ ಮೈಲಿ ದೂರದವರೆಗೆ ಬರುತ್ತೆ」(カンナダ語)
- Vikatan「சாம்பார் தென்னிந்திய உணவு இல்லை? அதுக்கும் ஒரு வரலாறு இருக்கு!」(タミル語)
- Kalki Online「உணவுக்கு சுவை சேர்க்கும் சாம்பார் (Sambar) தோன்றிய வரலாறு தெரியுமா?」(タミル語)
- The News Minute「How Thanjavur Maratha cuisine found favour in the south」(英語)
- The Better India「TBI Food Secrets: India's Favourite South Indian Dish, Idli Sambar, Has Many Fascinating Legends」(英語)
- Wikipedia「Sambar (dish)」(英語)
本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。