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トム・ヤム・クンTom Yum Goong レシピ

ต้มยำกุ้งトム・ヤム・クン

地域
タイ(タイ中部)
分量
4人分
公開
青い絵付けの器に盛ったトム・ヤム・クン。澄んだ汁に頭つきのえびと半分に切ったふくろたけが入り、パクチーと赤唐辛子が散っている。奥にご飯と半分に切ったライム

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トム・ヤム・クンは、えびをレモングラスやガランガル、カフィアライムリーフと煮て、ナンプラーの塩けとライムの酸味、唐辛子の辛さで味をつけるタイのスープです。酸っぱくて辛く、香草の香りが鼻に抜けます。

ここでは、えびの殻と頭で取っただしを使い、牛乳もナムプリックパオ(唐辛子の甘辛い調味料)も入れない、澄んだ「ナム・サイ」に仕上げます。香草は短く煮て、ライムは火を止めてから加えます。エバミルクとナムプリックパオで作る、こくのある「ナム・コン」にする方法も、後半に添えました。

トム・ヤム・クンとは

タイ語では「ต้มยำกุ้ง」と書きます。トムは「煮る」、ヤムは酸味と辛みのある味で「和える」こと(タイのサラダ「ヤム」と同じ言葉)、クンは「えび」です。タイの新聞マティチョンは、名前をこの3つの言葉の組み合わせとして説明しています。

中部の川辺の村の料理

マティチョンによると、ユネスコは2024年12月3日、パラグアイのアスンシオンで開いた第19回の政府間委員会で、トム・ヤム・クンを「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に登録しました。タイ国内では、2011年に国の無形文化遺産になっています。

ユネスコの説明では、トム・ヤム・クンはタイ中部の平野の、川沿いに暮らす仏教徒の村で生まれたとされています。大きな動物を殺すのを避け、川でたくさんとれる淡水のえびを好んで食べてきた暮らしから生まれた料理だ、という説明です。とくに雨季に体に力をつける料理と考えられてきたとも書かれています。

古い記録のトム・ヤム

タイの歴史・文化の雑誌『シンラパ・ワッタナタム』で、クリット・ルアラマイは、1898年にクンラサトリー・ワンラン校という女学校の生徒たちがまとめた料理書のトム・ヤム・クンを紹介しています。えびをナンプラーを入れた湯で煮て、ゆでた豚肉や焼いた干し魚、にんにくの漬けもの、きゅうり、酸っぱい果実のマダンなどと合わせ、えびの煮汁をにんにくの漬け汁と砂糖、ナンプラーで味つけし、酸味が足りなければライムを足す、という作り方です。クリットは、いまのトム・ヤムとはほとんど似ていないと書いています。

ナム・サイとナム・コン

ナムは「汁」、サイは「澄んだ」、コンは「濃い」という意味です。ナム・サイはえびと香草とナンプラー、ライム、唐辛子で作る澄んだスープ、ナム・コンはそこに牛乳やエバミルク、ナムプリックパオを加えた、オレンジ色のこくのあるスープです。

タイのレストラン情報サイトWongnaiの記事は、ナム・サイがトム・ヤムの元の形で、ナム・コンはそこから発展したものだとしています。同じ記事は、ナム・コンの始まりをラーマ6世の時代(1910〜1925年)とし、王がサームヤーンのあたりの中国系の料理店で食事をした際、その店が牛乳を入れたトム・ヤム・クンを出したのが最初だと書いています。この話の出典は、記事には示されていません。タイ出身の料理家パイリン・チョンチットナンは、ナム・コンがタイで広く人気を得たのは比較的新しいことだとしています。

ナム・コンという言葉は、乳製品を入れたものだけを指すとは限りません。ミシュランガイドの記事は、一つ星を得たノンタブリーの店「アッキー」のシェフが、牛乳を使わず、えびの頭のみそをたっぷり炒めて加えて作るトム・ヤム・クンを「ナム・コン」として紹介しています。シェフは、えびみそを省けばナム・サイになるとしています。

トム・ヤム・クンのレシピ:材料(4人分)

下ごしらえ 15分 加熱 30分

えびとだし

  • 有頭えび(殻つき。タイでは川えび(オニテナガエビ)を使うこともある)400g(8〜12尾)
  • 水1,000ml
  • サラダ油(えびみそを炒める)13g(大さじ1)

香草

  • レモングラス(根元の太い部分)(Amazon|楽天)2本(40g)
  • ガランガル(Amazon|楽天)15g(薄切り8枚)
  • カフィアライムリーフ(こぶみかんの葉)(Amazon|楽天)6枚(2g)
  • エシャロット(タイのホームデーン(赤いエシャロット))(Amazon)30g(3個)
  • 生の赤唐辛子(タイの小さな唐辛子(プリック・キーヌー)。辛さを抑えるときは5本にする)(Amazon|楽天)10本(5g)

具と味つけ

  • ふくろたけ(水煮缶。水けをきった重さ)(Amazon|楽天)150g
  • ナンプラー(Amazon|楽天)45ml(大さじ3)
  • ライム汁60ml(ライム3〜4個分)
  • パクチー(コリアンダーの葉)10g

道具

  • 鍋(直径18〜20cm)
  • ざる
  • 小さなフライパン

作り方

  1. えびの下ごしらえ

    有頭えび400gは頭を外し、殻をむく。背に浅く切り込みを入れて背わたを取り、身は使うまで冷蔵庫に入れておく。頭の中のえびみそ(黄色〜オレンジ色の部分)をスプーンでかき出し、小さな器に取る。頭と殻はだしに使う。

  2. だしを取る

    鍋に水1,000mlと、えびの頭と殻を入れて強火にかける。煮立ったらアクを取り、弱めの中火で15分煮る。ざるでこし、頭と殻をお玉で押して汁を絞る。だしは850mlほどになる。

  3. 香草と具を切る

    レモングラス40gは、すりこぎか包丁の背で全体を叩いてつぶし、4cm長さの斜め切りにする。ガランガル15gは2mm厚さの薄切りにする。カフィアライムリーフ6枚は中央の太い筋を除き、手で2〜3つにちぎる。エシャロット30gは皮をむき、包丁の腹で押しつぶす。生の赤唐辛子10本は包丁の腹で軽くつぶす。ふくろたけ150gは縦半分に切る。

  4. えびみそを炒める

    小さなフライパンにサラダ油13gを入れて弱火で温め、えびみそを加えて、混ぜながら30秒〜1分炒める。油がオレンジ色に染まったら火を止める。えびみそは水分が多く油がはねやすいので、弱火のまま静かに入れる。

  5. 香草を煮る

    だしを鍋に戻して中火で煮立て、レモングラス、ガランガル、エシャロットを入れて2分煮る。

  6. 味をつけ、えびを煮る

    ナンプラー45ml、ふくろたけ、カフィアライムリーフ、生の赤唐辛子を加える。再び煮立ったらえびの身を入れ、1〜2分煮る。身の全体が白く不透明になり、いちばん大きい1尾を切って中まで白くなっていれば火が通っている。炒めたえびみそを油ごと加えて混ぜる。

  7. 火を止めてライムを加える

    火を止めて1分おき、煮立ちが静まってから、ライム汁60mlを加えて混ぜる。

  8. 盛りつける

    器に盛り、パクチー10gをざく切りにしてのせる。レモングラス、ガランガル、カフィアライムリーフは香りづけのためのもので、食べずに残す。

タイでは、ジャスミンライスと一緒に、ほかのおかずと分け合って食べます。

料理科学:レモングラスとカフィアライムリーフを短く煮る理由

香りの主役は、湯気と一緒に逃げる成分

タイのチュラーロンコーン大学の研究(2017年の修士論文)は、トム・ヤムの香りを分析しました。香りにとくに強く効いている成分として、ゲラニアール、ネラール(β-シトラール)、リナロール、ゲラニオールなどを挙げ、そのうち上位の4つはレモングラス、カフィアライムリーフ、ライム汁から来ているとしています。同じ論文が先行研究から紹介しているところでは、レモングラスの精油はゲラニアールとネラール(2つを合わせてシトラールと呼びます)が主な成分で、カフィアライムリーフはシトロネラールが主な成分です。

香りの成分は、空気中に飛び出しやすい(揮発しやすい)からこそ鼻に届きます。香草を長く煮ると、香りは湯気と一緒に少しずつ逃げていきます。この論文の実験で使われたタイのスワンドゥシット大学のレシピは、レモングラスを入れてから仕上がるまでが3分ほどです。パイリンのレシピは、香草をまとめて5分煮ます。この記事でも、レモングラスとガランガルはえびを煮る時間を含めて5分ほど、カフィアライムリーフは仕上げの2〜3分だけ火にかけます。

手順3でレモングラスを叩きつぶし、カフィアライムリーフをちぎるのは、短い時間でもスープに香りが移りやすくするためです。

長く煮るのは、えびの殻だけ

えびの殻と頭のうまみや色は、煮ることで水に移ります。一方で、香草の香りは煮るほど逃げていきます。そこで、殻と頭だけを先に15分煮てだしを取り、香草はあとから短く煮ます。

アッキーのシェフのレシピは、レモングラスなどをえびの殻と1時間煮てだしを取り、仕上げの鍋にカフィアライムリーフを加え、器に刻んだレモングラスを散らします。長く煮ただしを土台にして、最後に生の香草の香りを重ねる作り方です。

料理科学:ライムを火を止めてから入れる理由

香りを逃がさないため

ライム汁も、トム・ヤムの香りの柱の一つです。煮立ったスープに入れて煮続けると、香草と同じように香りの成分が湯気と一緒に逃げていきます。アッキーのシェフも、ライム汁を長く熱に当てないよう注意しています。

加え方はレシピによって違います。Kapookの記事のレシピは火を止めてからナンプラーとライム汁で味をつけ、パイリンは火を止めて1分ほどおいてからライム汁を加えます。アッキーのシェフは、器に先にライムを搾っておき、熱いスープを注ぎます。

熱で苦みが出るのを早めないため

柑橘の果汁には、苦み成分リモニンのもとになる、苦くない物質が含まれています。この物質は酸性の果汁の中で少しずつリモニンに変わるので、搾った果汁はしばらくおくと苦くなることがあります。2018年に発表されたオレンジ果汁の研究では、果汁を加熱したり、より酸性にしたりすると、リモニンができる速さが上がりました。ライムで調べた研究ではないので確かなことは言えませんが、ライム汁を煮立てないのは、苦みを早めないためにも理にかなっています。

ナム・コンでも、火を止めてから

エバミルクを入れるナム・コンでも、パイリンのレシピは、火を止めて1分ほどおき、煮立ちが静まってからライム汁を加えます。この記事のナム・コンも、手順7のとおり火を止めてからライム汁を加えます。

ナム・コンにする

手順6で、ナンプラーと一緒にナムプリックパオ45g(大さじ3)を加えて溶かし、続けて無糖練乳(エバミルク)100mlを加えて煮立ててから、ふくろたけ以下の材料とえびを入れます。ナンプラーとライム汁は同じ量です。ナムプリックパオに甘みと塩けがあるので、砂糖は足しません。Kapookのナム・コンのレシピは牛乳を使っていて、エバミルクの代わりに牛乳100mlでも作れます。

ナムプリックパオは、唐辛子を使ったタイの練り調味料です。『シンラパ・ワッタナタム』でクリットが紹介しているいまの作り方では、乾燥唐辛子やエシャロット、にんにく、カピ(えびの発酵ペースト)を弱火の油でかりっとするまで炒めてから石臼でつき、パームシュガーやナンプラー、タマリンドの汁と炒め合わせます。クリットは、市販のものはどの銘柄も甘みが前に出ると書いています。また、古い料理書『タムラップ・サーイ・ヤオワパー』の雷魚のトム・ヤムにも、仕上げに近い段階でナムプリックパオを入れるよう書かれていることを紹介しています。そのうえで、昔のナムプリックパオは、作家ククリット・プラーモートが書き残したような、油を使わずにからいりして作るものだったのではないか、と問いかけています。

地域による違い

  • ガパオの葉を入れるトム・ヤム:シンラパ・ワッタナタムの記事によると、サムットソンクラームやラーチャブリーの一部から、ペッチャブリー、プラチュワップキーリーカンの一部にかけての地域では、ガパオ(ホーリーバジル)の葉を入れるトム・ヤムが作られています。記事で話を聞かれた地元の人たちは、畑で育てた葉の大きなものではなく、葉の小さな野生のガパオがよいと話しています。
  • 仕上げの香草:パクチーの代わりに、葉の細長いノコギリコリアンダー(パクチー・ファラン)をのせるレシピもあります。Kapookのナム・サイとWongnaiのナム・コンはこちらを使い、パイリンのレシピはどちらを使ってもよいとしています。

手に入りにくい材料の代用

  • レモングラス・ガランガル:冷凍品を同じ量使えます。ガランガルが手に入らないときはしょうがで代用できますが、香りの質が違うので半量の8gにします。
  • カフィアライムリーフ:冷凍品や乾燥品を同じ枚数使えます。乾燥品は香りが弱めです。どちらもないときは、ライムの皮をピーラーで3枚(白いわたを入れずに)むき、手順6で加えます。
  • エシャロット(ホームデーン):赤玉ねぎ30gで代用できます。
  • 生の赤唐辛子:乾燥の赤唐辛子(鷹の爪)4本を半分に折って使えます。
  • 有頭えび:頭のないえび300gを使うときは、手順2のだしの代わりに、塩の入っていない鶏がらスープ850mlを使い、手順4とサラダ油は省きます。オレンジ色のえびみその油は浮きません。パイリンのレシピも、殻つきのえびを使わないときは鶏がらスープを使うとしています。
  • ふくろたけ:ひらたけやしめじ150gで代用できます。
  • ライム:レモン汁60mlで代用できます。酸味は似ていますが、香りは変わります。

保存

  • 作りたてがいちばん香ります
  • 冷蔵:香草を取り除いて、保存容器に入れて1日。温め直すとライムの香りが弱まるので、温めて火を止めてから、ライム汁5ml(小さじ1)を足します
  • 冷凍:えびがかたくなるので向きません

タイのほかのレシピ

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出典

本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。