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カレーの基本

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スパイスと基本
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鉄のカラーイーで炒りつけた赤いマサーラー。縁に油がにじみ、クミンとグリーンカルダモンが見えている。右手前の皿にクローブ、ブラックカルダモン、クミン、乾いた葉、奥にスパイス入れ

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インドのカレーは、材料の数が多く見えても、ここで読んだヒンディー語の解説やレシピでは、鍋に入れる順番がおおむね決まっています。油を熱して粒のスパイスを入れ、玉ねぎ、しょうが・にんにく、トマト、粉のスパイスと重ねていきます。それを油がにじみ出るまで炒めてから、水や具を加えて煮ます。最後に、ガラム・マサーラーを振ったり、香りの油をかけたりします。

マサーラー(मसाला)という言葉は、スパイスのミックスのことも指しますが、後で紹介するアージ・タクの解説の見出しにある मसाला भूनना(マサーラーを炒める)のマサーラーは、玉ねぎやトマトとスパイスを炒めた素のことです。ここでは、北インドの家庭のカレーの流れを8つの工程に分け、それぞれの工程でヒンディー語とウルドゥー語の料理の言葉と、このサイトのレシピでの具体的なやり方を並べます。

流れの全体

ここでは、次の8つの工程に分けます。

  1. ホールスパイスを油に入れる:熱した油やギーで、粒のスパイスの香りを出す
  2. 玉ねぎを炒める:きつね色まで炒める
  3. しょうが・にんにくを加える:生のにおいがなくなるまで炒める
  4. トマトを加える:崩れてペースト状になるまで炒める
  5. 粉のスパイスを加える:焦がさないように炒める
  6. ブナー:油がにじみ出るまで炒りつける
  7. 水か具を加えて煮る
  8. 仕上げ:ガラム・マサーラーを振る、または香りの油(タルカー)をかける

ヒンディー語の女性誌『メーリー・サヘーリー』が紹介する玉ねぎとトマトの基本のグレイビーは、1から6までがこの順番です。ただし、ターメリックだけは4のトマトと一緒に入れ、ガラム・マサーラーは5でほかの粉のスパイスと一緒に入れます。グレイビーを作るところまでの説明なので、7と8はありません。ヒンディー語のニュース専門テレビ局アージ・タクのサイトに載った、マサーラーの炒め方の解説は、1、2、5、6、7の順番です。3のしょうが・にんにくと8の仕上げはなく、4のトマトは、玉ねぎを使わないときの入れ方として説明しています。

ただし、この順番はいつも同じではありません。インドの料理家パンカジ・バダウリヤー(Pankaj Bhadouria)の作り置きのマサーラーを紹介した、パキスタンのニュース専門テレビ局アージ・ニュースのウルドゥー語のサイトの記事では、水で溶いた粉のスパイスを、玉ねぎより先に油で炒めています(5が2より先)。トマトを入れるのは、しょうがと唐辛子を炒めたあとの最後です。サウジアラビアの出版社が出しているウルドゥー語の日刊紙ウルドゥー・ニュースの、カレー・マサーレー(ホールスパイス)で作るサーランのレシピは、玉ねぎを炒めて肉を加え、ホールスパイスはトマト、しょうが、湯と一緒にあとから入れています(1・3・4・7を一度に入れる)。サーラン(سالن)は、ウルドゥー語で汁気のあるおかずのことで、この2つの記事も見出しにこの言葉を使っています。

以下では、工程ごとに見ていきます。

1. ホールスパイスを油に入れる

ことば:カレー・マサーレーとチャウンク

粒のままのスパイスを、ヒンディー語では「カレー・マサーレー」(खड़े मसाले)、ウルドゥー語では「کھڑے مصالحے」と呼びます。日本語のカレーとは関係なく、ウルドゥー語の辞書レフターは、カラー(खड़ा)の英語の訳語に standing(立っている)や upright(まっすぐな)を挙げています。ウルドゥー・ニュースの記事は、見出しではこの言葉を使い、材料欄では赤唐辛子やコリアンダーに、丸ごとのという意味の ثابت を付けています。『メーリー・サヘーリー』は「ブラウン・グレイビー」で、丸ごとのスパイスを साबूत मसाले(サーブト・マサーレー)と書いています。

熱した油にスパイスを入れて香りを移すことを、ヒンディー語でチャウンク(छौंक)、タルカー(तड़का)、バガール(बघार)と呼びます。ヒンディー語版ウィキペディアは、チャウンクの項で、西の地方ではタルカー、南の地方ではバガールとも呼ぶとしています。同じ記事によると、チャウンクは料理の始めにも最後にも加えます。始めのチャウンクには、ホールスパイスと一緒に粉のスパイスや塩も入れることが多く、最後のチャウンクはふつうホールスパイスだけです。

料理の始めの香りづけも、タルカーやチャウンクと呼ばれます。アージ・タクの解説は、熱した油にクミンを入れる最初の工程を जीरे का तड़का(ジーレー・カー・タルカー、クミンのタルカー)と呼んでいます。『メーリー・サヘーリー』の基本のグレイビーも、最初にクミン2.5ml(小さじ1/2)でチャウンクをします。

やり方

アージ・タクの解説は、空のカラーイー(両手の付いた丸い鍋)を1〜2分熱してから油を入れ、油が熱くなったらすぐクミンを入れるとしています。クミンは焦がさないように混ぜ、パチパチと音がして香りが立ったらよい、と書いています。ウッタラーカンド州立オープン大学のホテル経営学の教材も、スパイスの多くは油に溶け、熱い油はスパイスの香りを吸い込んで保つので、スパイスは油が熱くなってから入れるように、としています。

このサイトのレシピでは、次のようにしています。

  • パーラク・パニール:ギー(Amazon|楽天)26gを中火で熱し、クミン(ホール)2.5ml(小さじ1/2)、シナモン2.5cm、クローブ4粒を、クミンの色が濃くなって香りが立つまで30秒〜1分炒めます
  • チョーレー:植物油27gを中火で熱し、テージ・パッター(Amazon|楽天)(インドでベイリーフと呼ばれる木の葉)1枚とクミン(ホール)2.5ml(小さじ1/2)を20秒炒めます
  • バター・チキン:バター30gを溶かし、グリーンカルダモン4粒とメース小さな1片を30秒炒めます
  • ローガン・ジョーシュ:マスタードオイル(Amazon|楽天)110gをうっすら煙が立つまで熱して火を止め、1分おきます。ラタンジョト(赤紫色の根)で油を赤く染めたあと、中火でクローブ、ブラックカルダモン、シナモン、クミンを30秒炒めます

4つとも、粒のスパイスを炒めるのは1分以内です。香りが立ったら、焦がさないうちに次の材料を入れます。マスタードオイルを煙が出るまで熱するときは、換気扇を回します。

2. 玉ねぎを炒める

ことば:ピャーズとスンハリー

玉ねぎはヒンディー語でピャーズ(प्याज़)、ウルドゥー語では پیاز です。ここで読んだ4つの記事は、炒め具合を金色という言葉で表しています。『メーリー・サヘーリー』は सुनहरा(スンハラー、金色)、アージ・タクの解説は हल्की सुनहरी(ハルキー・スンハリー、薄い金色)、アージ・ニュースの記事は پیاز کے سنہری ہونے تک(玉ねぎが金色になるまで)と書いています。ウルドゥー・ニュースの記事は、英語を借りて「ゴールデン・ブラウン」と書いています。

やり方

アージ・タクの解説は、玉ねぎの水分がとんだら少し水を加えてまた炒めるのを2〜3回くり返し、薄い金色になればよい、としています。『メーリー・サヘーリー』の「ブラウン・グレイビー」は、玉ねぎを弱火で焦がさないように金色に炒め、冷ましてから水と油と一緒にすりつぶし、ペーストにしてから使います。

どこまで色づけるかは、料理によって違います。このサイトのレシピでは、次のようにしています。

  • チキン・ティッカー・マサーラー:玉ねぎ200gを塩6gと一緒に12〜15分、濃い茶色まで炒めます。鍋底にこびりつきができたら、水30mlを大さじ1ずつ2回に分けて加え、こそげ落とします。水を足しながら炒める点は、アージ・タクの解説と同じです。濃い茶色にする理由は、チキン・ティッカー・マサーラーの記事の「料理科学」の節で説明しています
  • チョーレー:玉ねぎ200gを10〜12分、こげ茶に近いきつね色まで炒めます
  • パーラク・パニール:玉ねぎ100gを8〜10分、きつね色まで炒めます
  • シット・コディ(ゴアの魚のカレー):玉ねぎを4〜5分、しんなりして透き通るまで炒めるだけで、色づけません

鉄のカラーイーで炒めはじめた薄切りの赤玉ねぎ。しんなりして透き通り、まだほとんど色づいていない。クミンとグリーンカルダモンが少し見える

同じカラーイーで、全体が均一なきつね色になるまで炒めた玉ねぎ。かさが減り、縁が少しカリッとしているが、黒く焦げたところはない

上は、しんなりして透き通ったところ(シット・コディはここで止めます)。下は、全体がきつね色になったところです。チョーレーやチキン・ティッカー・マサーラーは、ここからさらに濃い茶色まで炒めます。

玉ねぎを使わない料理もあります。バター・チキンはトマトとバターが主役で、玉ねぎを使いません。このサイトのローガン・ジョーシュは、カシミールのパンディット(ヒンドゥー教徒)の作り方で、玉ねぎもにんにくも使わず、ヒングで香りを補います。

熱い油に水分の多い玉ねぎを入れると、油がはねます。顔を離して入れます。

3. しょうが・にんにくを加える

ことば:アドラクとレヘスン

しょうがはアドラク(अदरक/ادرک)、にんにくはレヘスン(लहसुन/لہسن)です。『メーリー・サヘーリー』の記事は、2つを合わせたペーストを使っています。

やり方

『メーリー・サヘーリー』の基本のグレイビーは、玉ねぎが金色になってから、しょうがとにんにくのペーストを小さじ2加えて炒めます。同じ記事の「ブラウン・グレイビー」では順番が逆で、ホールスパイスのあとにしょうがとにんにくのペーストを金色になるまで炒め、それから玉ねぎのペーストを加えます。ウルドゥー・ニュースの記事では、しょうがは炒めずに、トマトや湯と一緒に肉を煮るときに入れています。アージ・ニュースの記事は、刻んだしょうがと唐辛子を玉ねぎのあとに加え、玉ねぎが金色になるまで炒めます。

このサイトのレシピでは、しょうがとにんにくを玉ねぎのあと(玉ねぎを使わないバター・チキンではホールスパイスのあと)に加え、短く炒めています。

4つとも、しょうがとにんにくを炒めるのは1分以内です。

4. トマトを加える

ことば:タマータル

トマトはヒンディー語でタマータル(टमाटर)、ウルドゥー語で ٹماٹر です。刻んだトマトも、ピューレも使います。『メーリー・サヘーリー』の基本のグレイビーは、刻んだトマト2個とトマトピューレ1カップの両方を入れています。

やり方

アージ・タクの解説は、玉ねぎを使わないときは、クミンのタルカーにじかにトマトと少しの塩を入れ、ペーストのように柔らかくなるまで炒めるとしています。塩を入れると早く煮えるから、というのがその記事の説明です。

このサイトのレシピでは、次のようにしています。パーラク・パニール、チョーレー、バター・チキンは、トマトと一緒に塩を入れます。

  • パーラク・パニール:トマト150g、ターメリックパウダー1.25ml(小さじ1/4)、塩7.5gを加え、煮くずれてペースト状になり、縁から油がにじみ出るまで6〜8分炒めます
  • チョーレー:トマト300gと塩6gを加え、崩れて縁に油がにじみ出るまで8〜10分炒め煮にします
  • チキン・ティッカー・マサーラー:トマト400gを、種とまわりのゼリー状の部分も捨てずに刻み、木べらでつぶしながら8〜10分炒めます
  • バター・チキン:トマト800gに塩6gと水100mlなどを加えてふたをして煮くずし、ハンドブレンダーにかけて裏ごしします。炒めるより、煮てなめらかにするやり方です

5. 粉のスパイスを加える

ことば:ピセー・マサーレー

挽いたスパイスを、ヒンディー語版ウィキペディアは「ピセー・マサーレー」(पिसे मसाले)と書いています。アージ・ニュースの記事は、英語を借りて「パーウダル・マサーレー」(پاؤڈر مصالحے)と書いています。アージ・タクの解説と『メーリー・サヘーリー』の基本のグレイビーでは、ターメリック、コリアンダー、赤唐辛子の粉を使っています。

やり方

粉のスパイスを入れる時期は、情報源によって違います。

  • トマトのあと:アージ・タクの解説は、粉のスパイスはいつも玉ねぎとトマトの上に入れ、空の鍋には入れないように、としています。焦げないように、少し水を加えながら混ぜる、という説明です
  • トマトと一緒とトマトのあと:『メーリー・サヘーリー』の基本のグレイビーは、ターメリックをトマトと一緒に入れ、コリアンダー、ガラム・マサーラー、赤唐辛子の粉はトマトのあとに入れます
  • 玉ねぎより先:アージ・ニュースの記事で紹介されたバダウリヤーのマサーラーは、粉のスパイスをカップ1/2の水でペーストにして、塩と一緒に最初に油で炒め、それから玉ねぎを炒めます

このサイトのレシピでも、トマトの前に入れるもの、あとに入れるもの、水に溶いて入れるものがあります。

  • チキン・ティッカー・マサーラー:トマトの前に弱火にして、粉のスパイスをそのまま加え、焦がさないように20〜30秒混ぜます
  • チョーレー:トマトの前に弱火にして、炒って挽いたチョーレー・マサーラーを30秒炒めます
  • ローガン・ジョーシュ:カシュミーリー・チリパウダー15ml(大さじ1)、ターメリックパウダー2.5ml(小さじ1/2)、砂糖3gを水120mlで溶き、肉を炒めた鍋に加えて5〜10分、油が赤く澄むまで煮詰めます。唐辛子の赤い色が油に移る理由は、ローガン・ジョーシュの記事の「料理科学」の節で説明しています
  • ククラ・コ・マース(ネパールの鶏のカレー):鶏肉を炒めて蒸し煮にしたあと、クミン、コリアンダー、カシュミーリー・チリの粉と、軽くつぶしたティムル(ネパールの山椒)を加え、そのあとにトマトを入れます

粉のスパイスだけを油で炒めるチキン・ティッカー・マサーラーとチョーレーでは、弱火にして、30秒以内で次の材料を入れています。ローガン・ジョーシュで唐辛子の粉を水で溶いてから入れるのも、焦がさないためです。水で溶いたものを熱い油に入れるとはねるので、ふたを手に持って加えます。

6. ブナー:油がにじむまで炒りつける

ことば:ブーンナーとブナー、テール・チョールナー

炒る、焼く、炒めることを、ヒンディー語でブーンナー(भूनना)、ウルドゥー語で بھوننا といいます。レフターの辞書は、英語の訳語に roast(焼く、炒る)、fry(油で炒める、揚げる)、parch(炒る)などを挙げています。炒められるという意味の自動詞ブンナー(भुनना)から、炒りつけたという意味のブナー(भुना/بھنا)という形ができます。

ブナーの終わりの目安は、油です。『メーリー・サヘーリー』は तेल छोड़ने तक(テール・チョールネー・タク、油を手放すまで)、ウルドゥー・ニュースの記事は تیل الگ ہونے لگے(油が分かれ始めたら)、アージ・ニュースの記事は تیل کے اوپر آنے تک(油が上に出てくるまで)と書いています。アージ・タクの解説は、水分がとんで、縁にうっすら油が見えてきたらマサーラーができた、としています。

やり方

プネーのAISSMSホテル経営・ケータリング技術大学の講義資料は、ブナオ(bhunao、炒りつけること)を、軽く煮ることと炒めることを組み合わせたものと説明しています。中火から強めの火で、水やヨーグルトを少しずつ加えながら絶えず混ぜ、油がマサーラーや鍋の縁から分かれて出てきたら終わりです。同じ資料は、ブナオはそれだけで料理を仕上げる方法ではなく、ふつうはあとでたっぷりの水分を加える、としています。

アージ・タクの解説は、マサーラーは弱火で、ときどき水を足しながら炒めるとしています。そうするとスパイスの香りがゆっくり出る、という説明です。

このサイトのレシピでは、工程4〜5の「縁から油がにじみ出るまで」が、ブナーの目安になっています。肉を一緒に炒りつける料理もあります。

  • ローガン・ジョーシュ:ヨーグルトをからめた肉を、混ぜながら中火で20〜25分、ヨーグルトの水分がとんで肉の表面が茶色く色づき、油が鍋肌に分かれてくるまで炒めます
  • ククラ・コ・マース:粉のスパイスを加えて3〜5分、鶏から出た汁気がほぼなくなって鍋肌に油がにじみ出るまで炒め、トマトを加えてもう一度、油が分かれてくるまで炒め煮にします

油がにじみ出るのが水分がとんだ合図であることは、チキン・ティッカー・マサーラーの「料理科学」の節で説明しています。その記事では、この工程を動詞の形でブーンナー(炒りつける)と呼んでいます。

鍋底が焦げつきそうなら、火を弱めて底から混ぜます。

7. 水か具を加えて煮る

ことば:パーニーとグレイビー

水はパーニー(पानी/پانی)です。カレーの汁には、英語を借りたグレイビー(ग्रेवी/گریوی)という言葉も使われます。『メーリー・サヘーリー』の記事は見出しにこの言葉を使い、アージ・ニュースの記事も、作り置きのマサーラーをグレイビーと呼んでいます。

やり方

ウルドゥー・ニュースのカレー・マサーレーのサーランは、湯2カップで肉を柔らかくなるまで煮て、ヨーグルトを加えて油が分かれ始めるまで炒め、最後にもう一度湯1カップを加えて、弱火で5分おきます。煮てから炒りつけ、また水を足す順番です。アージ・タクの解説は、できたマサーラーにじゃがいもやグリーンピースなど好みの野菜を入れて、マサーラーの中で火を通すとしています。

このサイトのレシピでは、次のようにしています。

煮る時間は、具によって大きく違います。ほうれん草のように色や香りを残したいものは短く、骨付きの羊肉のように柔らかくするのに時間がかかるものは長く煮ます。

8. 仕上げのガラム・マサーラーとタルカー

ガラム・マサーラー

ガラム・マサーラー(Amazon|楽天)は、カルダモンやシナモン、クローブなどを合わせた香りのミックスです。ウッタラーカンド州立オープン大学の教材は、ガラム・マサーラーのような香りのミックスは、香りが湯気と一緒に逃げないように最後に加えるとしています。ただし、『メーリー・サヘーリー』の基本のグレイビーは、ガラム・マサーラーをコリアンダーや赤唐辛子の粉と一緒に入れて、油が出るまで炒めています。

この記事で例に挙げた8本のレシピのうち、ガラム・マサーラーを使うのは5本です。そのうち次の4本は、仕上げに加えています。残りのチキン・ティッカー・マサーラーは、鶏肉の漬けだれと、トマトの前に炒める粉のスパイスに入れています。

  • パーラク・パニール:火を止めてから、ガラム・マサーラー2.5ml(小さじ1/2)と生クリーム30mlを加えて混ぜます
  • ローガン・ジョーシュ:煮詰めたあと、ガラム・マサーラー5ml(小さじ1)とギー4gを加え、2〜3分煮て火を止めます
  • ククラ・コ・マース:火を止めてガラム・マサーラー5ml(小さじ1)とパクチー(コリアンダーの葉)10gを加え、ふたをして5分おきます
  • バター・チキン:バターと生クリームを加えたあと、カスーリー・メーティー(乾燥したフェヌグリークの葉)15ml(大さじ1)を手のひらでもみながら加え、ガラム・マサーラー1.25ml(小さじ1/4)を振ります

最後のタルカー

料理の最後に、小さなフライパンで熱した油やギーにスパイスや香味野菜を入れ、油ごと料理にかけることもあります。AISSMSの講義資料は、このバガール(テンパリング)について、ギーや油を煙が出る温度まで熱してから火を弱め、できたものをジュッと音を立てたまま、煮上がった料理にかける、としています。パキスタンのニュース専門テレビ局24ニュースのウルドゥー語のサイトに載ったチャナー・ダール(ひよこ豆の割り豆)のレシピは、最後にギーでクミン、にんにく、乾燥赤唐辛子を熱し、にんにくが金色になったらすぐダールにかけます。

このサイトのチョーレーでは、ギー13gでしょうがのせん切り10gと青唐辛子1本を30〜40秒炒め、火を止めてカシュミーリー・チリパウダー2.5ml(小さじ1/2)を加えて、すぐにひよこ豆の上に回しかけます。

熱い油を料理にかけると、ジュッと音を立てて油がはねます。顔を近づけないようにします。

地域による流れの違い

南インドとスリランカ:テンパリングを最後に

ここまでの北インドの流れでは、香りの油を最初に作ります。これに対して、香りの油を最後にかける料理もあります。ヒンディー語版ウィキペディアは、ダールやサーンバール(南インドの豆と野菜の汁)では、チャウンクを最後に加えるとしています。このサイトでは、英語の呼び名にならって、この最後の香りの油を「テンパリング」と書いています。タミル語ではターリップ(தாளிப்பு)といいます。

タミル語の雑誌カルキのサイトに載ったサーンバールのレシピは、豆と野菜を煮たあと、最後に小さなフライパンでギーを熱し、マスタードシード(Amazon|楽天)、乾燥赤唐辛子、カレーリーフ(Amazon|楽天)、ヒングを入れて、サーンバールに加えます。火を止めてから10分ふたをしておきます。AISSMSの講義資料も、タミル・ナードゥではマスタードシードやクミン、にんにくなどをテンパリングに使うとし、ケーララの野菜料理アヴィヤルは、火から下ろしたらすぐに、ココナッツオイルをひとさじと、生のカレーリーフを混ぜ込んで仕上げると書いています。

このサイトのパリップ(スリランカの豆のカレー)も、豆をココナッツミルクで煮たあと、ココナッツオイル27gでマスタードシード5ml(小さじ1)を弾けさせ、クミン、赤唐辛子、赤玉ねぎ、カレーリーフを炒めて、油ごと回しかけます。テンパリングを最後にかける理由は、パリップの記事の「料理科学」の節で説明しています。

ベンガル:マスタードオイルとフォロン

AISSMSの講義資料は、西ベンガルの料理に最もよく見られる特徴として、マスタードオイルと辛いマスタードのペーストをたっぷり使うことを挙げ、東インドの料理に特有の風味を与えるものにパンチ・フォロンを挙げています。パンチ・フォロンは、フェヌグリーク、フェンネル、カロンジー(ニゲラ。ベンガル語でカロジラ)、クミン、マスタードシードの5種類の種を、ふつうは同じ量ずつ混ぜたものだと、ベンガル語版ウィキペディアは書いています。

熱した油にスパイスを入れて香りを出すことを、ベンガル語ではフォロン(ফোড়ন)と呼びます。バングラデシュの新聞デイリー・スターのベンガル語版に載ったエッセイで、筆者は、父が好きだった赤い魚の汁(ジョル)を、マスタードオイルと乾燥唐辛子の粉で作ったものとして紹介し、ルイ(コイの仲間)などの魚の汁の仕上げに、カロジラのフォロンをすることもあると書いています。アージ・タクのベンガル語のサイトの記事は、ムシュル・ダル(赤いレンズ豆の汁)のフォロンを4通り紹介していて、4通りとも、ゆでた豆にあとから加えます。油は、精製した植物油かギーです。

マスタードオイルは、ベンガルだけの油ではありません。このサイトでも、カシミールのローガン・ジョーシュとネパールのククラ・コ・マースで、マスタードオイルをうっすら煙が出るまで熱してから使っています。煙が出るまで熱する理由は、ククラ・コ・マースの記事の「料理科学」の節で説明しています。煙が出るまで熱するときは、換気扇を回し、鍋のそばを離れないようにします。

ココナッツを使う海沿いの料理

南インドやゴアの海沿いの料理には、ココナッツを汁の土台にするものがあります。AISSMSの講義資料は、ココナッツをケーララの料理に昔から欠かせないものとし、タミル・ナードゥでも海沿いなのでココナッツをよく使い、カルナータカのコダグ(クールグ)のカレーの多くはココナッツが土台だとしています。

ケーララ州政府観光局のヒンディー語のサイトに、テッカディのマイケルズ・インのレシピとして載っている「ナーダン・コーリ・カレー」(家庭風の鶏のカレー)は、ココナッツオイルで玉ねぎ、青唐辛子、しょうが、にんにく、カレーリーフを炒め、粉のスパイスと鶏肉を加えて半分ほど火を通します。そこに2番目にしぼった薄いココナッツミルクを加えて弱火で煮て、最初にしぼった濃いココナッツミルクは最後に加えます。トマトのブナーの代わりに、ココナッツミルクで汁を作る流れです。

このサイトのシット・コディ(ゴアの魚のカレー)は、すりおろしたココナッツ150gを、唐辛子、スパイス、にんにく、しょうが、タマリンドと一緒にすりつぶしてマサーラーにします。ココナッツオイル26gで玉ねぎを色づけずに炒め、このマサーラーを縁に油がにじむまで4〜5分炒めてから、水でのばして魚を煮ます。材料は北インドと違っても、マサーラーを油が出るまで炒めてから水分を加える、という順番は同じです。

ことばの一覧

工程 ヒンディー語 ウルドゥー語 読み 意味
ホールスパイス खड़े मसाले کھڑے مصالحے カレー・マサーレー 粒のままのスパイス
粉のスパイス पिसे मसाले پاؤڈر مصالحے ピセー・マサーレー(ウルドゥー語はパーウダル・マサーレー) 挽いたスパイス
香りの油 छौंक、तड़का、बघार تڑکا、بگھار チャウンク、タルカー、バガール 熱した油でスパイスの香りを出すこと
玉ねぎ प्याज़ پیاز ピャーズ 玉ねぎ
しょうが・にんにく अदरक、लहसुन ادرک، لہسن アドラク、レヘスン しょうが、にんにく
トマト टमाटर ٹماٹر タマータル トマト
炒りつける भूनना、भुना بھوننا、بھنا ブーンナー、ブナー 炒る、炒りつけた
油が出る तेल छोड़ना تیل الگ ہونا テール・チョールナー(ウルドゥー語はテール・アラグ・ホーナー) 油が分かれて出てくる
水 पानी پانی パーニー 水
汁 ग्रेवी گریوی グレイビー カレーの汁(英語の gravy から)

料理の名前によく出てくるほかの言葉は、このサイトのヒンディー語の料理用語集にまとめています。

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もっと知りたい人へ

  • K.T. Achaya『Indian Food: A Historical Companion』(英語)インドの食材と料理の歴史を、古い文献から幅広くまとめた本Amazonで見る

出典

本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。